日米政治リスクと株式市場

2017/08/03

政治リスクとは 

経済を論じるにあたっては、政治の問題を避けて通れません。法治国家での経済活動はルール(法律、規則など)に基づいて行われますが、それを制定・撤廃するのは、主に政治の役目であるからです。

ただし先進国の場合、政権が代われば経済が蘇るという期待は、幻想に終わるのが普通です。一方、経済を邪魔したり(不必要な規制や過剰な保護貿易政策など)、歪めたり(知人や特定企業の優遇など)といった権限の誤用・乱用のリスクについては、先進国も無縁ではいられません。実際、日米でも今、政治不信が問題となっています。ここで重要なのは、政治の暴走を防ぐ仕組みが働くかどうか、です。

トランポノミクスは不発 

米国では、トランプ政権が発足して半年がたちました。その経済政策であるトランポノミクスについては、懐疑派の正しさが証明されたようです。事実、足元の経済成長率は同政権が目指す「3%以上」には程遠く、来年も、従来のペースとほぼ変わらない成長率(2%程度、図表1)にとどまる見通しです。

トランプ政権は、目覚ましい法案を何一つ成立させていません。医療保険制度の抜本改革(オバマケアの改廃)は、ほぼ暗礁に乗り上げました。夏までにまとめるはずだった税制改革(法人税や所得税の減税)は、年内の決着すら難しそうです。インフラ投資に至っては、話題にもならなくなってきました。

大統領を議会がけん制

株式市場などは当初、トランポノミクス期待で大いに盛り上がりました。一応の根拠は、大統領に加え上院・下院とも共和党が制したため、景気刺激策は比較的円滑に決まるだろう、というものでした。

しかし医療保険の迷走が表わしているとおり、共和党は一枚岩でありません。また、トランプ氏に批判的な共和党議員も増えつつあります。たとえば最近、対ロシアの経済制裁を強化する法案が、共和党の賛同を得て可決されました。これによると、大統領が勝手に制裁を解除することができなくなります。

トランプ氏は親ロシア(私的な事情か?)なので、その独断を防ぐのが法案の狙いでしょう。同氏も結局、署名を余儀なくされました。示されているのは、大統領と議会とのけん制関係です。これが本来の米政治であり、根底には、権力の集中は暴走や腐敗を招くという、歴史から得られた教訓があります。

なぜ株価は堅調なのか?

政治腐敗とは、私的な利益や虚栄のために、権力を行使することです。それを抑えるには、権力への監視や批判、権力相互のけん制が欠かせません。この点で米国は、今も優れた国だと言えます。「自分とトランプ家が第一」に見える大統領への批判が、世論や議会において日増しに高まっているからです。

米国に影響されたのか、日本でも現政権への批判が突然増え、支持率が低下しました。ムードに流されやすいという欠点は、相変わらずです。しかし、少なくとも言論の自由が残っていた点は、朗報です。

もう一つの明るい事実は、日米の政治が混乱する中でも、株価は高値を更新または維持していることです(図表2)。民主主義が機能している点を、評価しているのでしょうか。それとも、アベノミクスやトランポノミクスは期待外れだということを、織り込み済みだからでしょうか。おそらく、後者でしょう。ただ、それは良い傾向です。ようやく市場も、政策への幻想から目覚めたということだからです。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
しんきん投信「トピックス」   しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ