今年の回顧、来年の展望-先進国の場合

2015/12/18

ようやく米国の利上げが始まりました。これをめぐり来年は金融市場が不安定になるかもしれません。こんなときこそ、米国、欧州、日本など先進国による今年の歩みを、大局的に振り返っておくべきです。

実力が伸びたのか?

米国の場合、利上げの背景にあるのは景気回復への期待です。ユーロ圏は、地味ながらも安定したプラス成長を続けています。日本は、昨年のマイナス成長を何とか脱したようで、企業収益もまずまずです。

とはいえ、米国の利上げは大方の予想よりも遅れました。また、米国や欧州の消費回復は原油安という幸運のおかげです。日本の回復は昨年との比較にすぎず、消費などの水準は低いままです。日本企業の技術力や独創性が増したとも言えず、増益は円安や原油安、賃金抑制に支えられたというのが実状です。

つまり各国とも実力が急に伸びたわけではなく、よって来年も緩やかな回復にとどまるでしょう。

「金融緩和依存症」の終わり

こうした中、12月16日に決まった米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げは、世界経済の転機を画する出来事と言えるでしょう。金融危機後の約7年間、金融市場は米国の超金融緩和に頼ってきたからです。その米国が利上げ局面に転じた以上、世界は、そうした依存を脱することが求められています。

他方、欧州中央銀行(ECB)は3月、量的金融緩和(国債買入れなど)を始めました。12月にはこれを拡充したものの、内容は期待外れとみなされ、世界中の株価が一旦急落しました。このことは、金融市場の期待を意識しすぎた金融政策は、むしろ市場の波乱要因になる、という教訓を示しています。

日銀の場合、異次元緩和にもかかわらず、「2年で2%」のインフレ目標を達成できませんでした。消費や設備投資も輸出も、おしなべて停滞気味です。「リフレ派」の思い込みに反し、日銀による金融緩和の効果は限定的であると実証されたのです。来年以降、異次元緩和の「出口」を模索すべきでしょう。

政治の混迷

政治も大きく動いています。来年に大統領選挙が行われる米国では、反移民など過激な主張への支持が高まる一方です。これをみると、誰が新大統領になっても米国は「内向き」になっていくと思われます。

ユーロ圏では、ギリシャの財政危機はひとまず落ち着きました。しかし欧州統合の理念は今、難民問題とテロによって試練にさらされています。これにより、偏狭なナショナリズムが広がるかもしれません。

日本では今年の夏から秋、安保法制に関して政治不信が高まりました。それを挽回しようと突如宣言されたのがアベノミクス「第2ステージ」ですが、これは分配(ばらまき?)重視へ傾斜しつつあります。

それでも日本株は有望だが・・・

要するに米欧・日本では景気回復の実感が広がらず、不満や怒りが外国人や自国の政治に向けられています。各政府はそれをどう扱うかに腐心するでしょう。

特に日本では、来年夏の参議院選挙(または衆参同日選)を控え、政策は理論や道徳よりも政治判断に左右されます。

これはすでに消費税の再増税にて顕著です。「消費税の悪影響は軽微」と書いて増税を推進した「新聞」まで税率を軽減するというのです。新聞などはこれに呼応し、「アベノミクスで景気回復」のムード作りに協力するでしょう。

現実よりもムードに流されやすいのが株式市場です。よって来年の日本は、株価に限ればたしかに有望でしょう。ただし、多様な言論が犠牲にならないか、は別の問題です。

 

印刷用PDFはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
しんきん投信「トピックス」   しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ