デルタの猛攻:それでも東京五輪が始まった

2021/07/26

コロナに打ち勝てず

これほど異常なことは、ほかにありません。緊急事態宣言の発令下、ほぼ無観客で、東京五輪が静かに開かれているのです。利権で潤う人々も、競技の結果以上に、感染動向を緊張して見守っているはずです。

事実、「安全安心」には遠いのが、現在の状況です。東京や世界のコロナウイルス感染者数は、6月下旬以降、増加傾向なのです。また、ワクチン接種が進んでいるとはいえ、その進度は、国や地域により大きな差があります。そして金融市場でも今、最大のリスクの一つとされているのが、デルタ型ウイルスです。

恐るべし、デルタ型

デルタ型は、まずインドで広がりました(ただ、インドでの感染者数は、ロックダウンなどが奏功し、現在は減少傾向)。しかし今や、ほかの多くの国々でも、この変異型のシェアが高まっています(図表1)。

その特徴は、強い感染力です(従来型の2倍程度の模様)。たとえ致死率は高くなくとも、「死ななければいい」とは言えません。感染すれば、周囲の人への影響や、後遺症などが懸念されるからです。ワクチンについても、万能薬ではありません。特にデルタ型に対する効果は、従来型の場合よりも薄いようです。 

ワクチン先進国でも

例えばイスラエルでは、必要とされるワクチン接種(通常2回)を受けた人が、人口の約61%に達しています(日本は約23%)。それでもデルタ型が急拡大しており、最近、入国管理などを再強化しました。

また、感染者が春に激減した英国でも、6月以降、デルタ型の感染が広がっています。にもかかわらず、イングランドは7月19日、ワクチンの普及などを理由に、行動規制をほぼ解除しました。しかし、その後も感染が拡大し、行動の制御は個人の判断に委ねる、という政府の方針に対し、批判が高まっています。

バイデン氏にも焦り

米国でも、デルタ型の拡大にもかかわらず、多くの州の行動規制は、まだ緩やかです。ただしバイデン大統領は、変異ウイルスの脅威を直視し、最近も、ウイルスとの戦いは終わっていない、と述べました。

同大統領には、焦りもあるようです。米国では現在、ワクチン接種が停滞気味だからです。これは州によって異なるほか、支持政党別でも差が鮮明です(図表2)。多数の共和党支持者が、接種を拒んでいるのです。そのため、ウイルスに打ち勝った、とバイデン氏が宣言できるのは、まだまだ先のことでしょう。 

北京五輪はどうなる?

それらの国々に限らず、デルタ型ウイルスは、人類への脅威です。さらに強力な型へ変異をとげる可能性も、決して低くありません。抑止策が不十分なために感染流行が長引くほど、その可能性は高まります。

主な先進国では現在、重症者数は抑えられており、行動規制は昨年よりも総じて緩やかです。そのため、当面は世界経済の回復が続く、という見通しに、変わりはありません。しかし、秋以降の感染状況は、予測困難です。よって来年2月の北京五輪は、東京五輪以上に、祝祭ムードが希薄になるかもしれません。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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