大統領選後の米国株:バイデン政権への移行は株高要因か

2020/11/30

大統領選後の混乱は限られ、株価は大幅上昇

米大統領選でバイデン氏が勝利した後、米国株などは大きく上昇しています(図表1)。バイデン氏が勝てば株式相場は暴落、とトランプ現大統領は述べていましたが、その予言は、現時点では大外れです。

選挙前に危惧されたのは、選挙結果を受けた米政治の混乱です。敗北した側による過激なデモが、社会を騒乱に陥れる事態も想定されました。しかし現在、トランプ氏の支持者によるデモは盛り上がりを欠き、金融市場を安心させています(加えて、コロナウイルスのワクチン開発進展なども株高に寄与)。

「不正選挙」の訴えは、徐々にトーンダウン

ただ、トランプ氏は、まだ敗北を正式に認めていません。しかし「不正選挙」の訴えは、トーンダウンしています。そして、政権移行手続きの開始を容認するなど、事実上、敗北を受け入れつつあります。

これは、第一に、結局は大差がついたため、結果を覆すのが絶望的となったためでしょう(獲得選挙人の数でバイデン氏306、トランプ氏232)。第二に、トランプ氏の身内と言うべき共和党議員らも、同氏から距離を置き始めたためでしょう(一部を除く)。第三に、不正選挙の証拠が不十分だからでしょう。

次期政権の樹立に向けて、閣僚人事が本格化

そのような証拠がない以上、選挙結果は覆りません。米国流の民主主義は生きており、選挙結果が尊重されるのは、全く当然のことです。よって来年1月20日、バイデン氏の率いる新政権が発足します。

それに先立ち、バイデン氏は先週、外交・安全保障関連の閣僚人事を発表しました(最重要ポストの一つ、国務長官には、アントニー・ブリンケン元国務副長官を起用)。その顔ぶれが表すのは、派手さよりも、経験と能力、および多様性(非白人や女性も起用)を重視した、バイデン氏の手堅い人選です。

経済政策の調整役として、イエレン氏は適任

バイデン氏のそうした方針は、財政政策を主導する閣僚の人選にも示されています。国務長官などと並ぶ最重要ポストである財務長官に、女性で初めてジャネット・イエレン氏が就く公算となったのです。

イエレン氏は以前、金融政策を担う米連邦準備制度理事会(FRB)の議長を務めました。当時の実績を見れば、経験や能力に文句のつけようがありません。同氏の誠実な人柄も、重要なポイントです。経済政策を今後まとめる上で、民主党急進派、共和党、FRBとの難しい調整が求められるからです。

予測可能性の改善で、米国株はさらに上昇か

イエレン氏が財務長官に、との報道は、足元の株高にも寄与しています。市場参加者にとり、同氏は馴染み深い人物です。そのため、米国の経済政策が予測しやすくなる、との期待が高まっているのです。

「予測のしやすさ」こそは、トランプ政権のもとで著しく損なわれたものです(輸入品に対する無秩序な関税発動などのため)。それが改善すれば、企業も投資計画を立てやすくなるでしょう。したがって、オバマ、トランプ両政権下で大きく上昇した株価(図表2)は、さらに上昇する可能性がありそうです。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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