安倍政権の功罪:今こそ正当な総括を

2020/09/07

無念の辞任

安倍首相の辞任表明は、さぞかし無念なことでしょう。期待に包まれて登場し、8年近くも続いた現政権ですが、後手に回ったコロナウイルス対応などで、支持率が落ちているときだからです(図表1)。

また、憲法改正など、悲願とした目標は成しとげられませんでした。経済では、以前から停滞していた中でウイルスに襲われ、政権誕生前の規模に沈んでいます(図表2)。とはいえ、この政権が行ったことに関しては、功罪の両面があります。一区切りがついた今、それらを正当に総括せねばなりません。

【功績】グローバリゼーションを推進

功績として挙げられるのは、日本のグローバリゼーション(世界化)を推し進めることに、少なからず貢献したことです。つまり、安倍氏を単なるナショナリストと位置づけるのは、正しくありません。

実際、米国が離脱した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を主導したのは、日本の政権です。欧州連合(EU)とも経済連携協定を締結しました。また、外国人労働者(事実上の移民)の受入れも進めました。これらは、貿易や人材面で日本はもっと世界化すべき、との正しい判断に基づいています。

【罪】忖度の文化が広がり、根本問題がおろそかに

一方、安倍政権のもとで広がった日本の悪い部分も、少なくありません。特に、与党内、主要メディア、いわゆる識者などが、政権に対する率直な批判を慎むという、非民主主義的な「忖度の文化」です。

それをよく表すのは、この政権の経済政策、アベノミクスです。これは、人々の「気分」を高揚させることを狙ったものでした。そのため、楽観ムードに水を差すような批判は忌避されたのです。そのようなムードが浸透したため、高齢化・人口減や競争力低下など、根本的な問題がおろそかになりました。

【功罪は一概に言えない】アベノミクス、消費税増税

ただし、アベノミクスの実績は功績か罪か、一概に言えません。円安・株高については、その恩恵を受ける人からみれば功績です。しかし、円安に伴う食品高(内容量減を含む)などは歓迎できません。

また、安倍政権の期間中、消費税増税が2回も行われました。日本の財政状態は厳しいので、社会保障を安定させるため、また、景気対策を機動的に行うためにも、その立て直しは必要です。ただ、所得水準を問わず国民に広く負担させる消費税増税という形がよいのか、に関し、もっと議論すべきでした。

リーダー交代で閉塞感を打破

新首相は9月中旬に決まりそうです。安定感のある菅氏、根強い人気の石破氏、穏健な岸田氏らが候補ですが、新首相が誰であれ、金融市場の関心事である金融・財政政策の大枠は、当面不変でしょう。

なぜなら、ウイルス対応と景気支援が先決であり、金融政策の正常化(例えば利上げ)などは、求められていないからです。今、日本に必要なのは、まさに国難の中において、閉塞感を打破することです。よって、このタイミングのリーダー交代には、いわば天命のようなものが働いているのかもしれません。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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