覇権への道:中国は本当にコロナショックの勝者なのか?

2020/04/21

先駆けて最悪期から脱出

新型コロナウイルスが最初に流行した中国は、その最悪期をひとまず脱しました(図表1)。適切な措置を断行すれば、このウイルスは抑止できるのです。それを証明した中国は、やはり驚嘆すべき国です。

しかし、中国も決して安心はできません。ほかの国でウイルスの流行が続く限り、その「逆輸入」で国内の感染が再燃する可能性はなくなりません。また、ロックダウン(都市間移動や外出の禁止など)はおおむね解除されたとはいえ、経済活動が平常時の水準に戻るには、まだかなりの時間が必要です。

コロナショックは全てを変える

事実、中国の人々も外出には依然慎重で、可能な限り在宅勤務を続けています。多くの大型店舗も、まだ閑散としています。少なくとも有効なワクチンが普及するまで、ウイルスへの恐怖は残るのです。

このことは、正常化を目指す他国にも貴重な示唆を与えます。第一に、ロックダウンを緩和したからと言って、直ちに経済が劇的な回復をとげるわけではありません。第二に、コロナショックは一過性のものではなく、各人の考え方・学び方・働き方、人との接し方に対し、持続的な影響を及ぼすでしょう。

中国方式の勝利なのか

コロナショックは、世界の覇権争いに関しても重大な意味を含んでいます。逆説的なのは、ウイルス発生地とされる中国が、この危機を経て、むしろ自国の政治・経済体制への自信を深めていることです。

実際、危機対応では、欧米の民主制よりも、中国の強引な政治体制の方が効率的なのかもしれません。また、国・企業・銀行の一体性が強い中国では、中央銀行や国有銀行による企業の金融支援が比較的容易です。よって中国は、欧米や日本ほどには財政赤字を膨張させずとも、経済危機を回避できそうです。

民主制の敗北とは言い切れない

とはいえ、中国の覇権への道は平たんではありません。1-3月期の経済成長率は、前代未聞の落ち込みを示しました(図表2)。4-6月期は欧米向け輸出の不調に圧迫され、緩慢な回復にとどまりそうです。

コロナウイルスへの対処についても、中国の勝利、欧米式民主制の敗北、とはまだ言い切れません。欧米に希望を与えているのが、民主国である韓国と台湾です。特に韓国は、広範囲の検査、迅速な隔離、ハイテクを駆使した感染経路の追跡、高度な医療などにより、ウイルス抑止に関し今や世界の模範です。

真の試練はこれから

何より中国は、新型コロナウイルス発生国としての責任を免れません。今は世界が連帯すべきときなので、中国への直接的批判はさほど多くありません。しかし感染終息後、厳しい批判を浴びるはずです。

このウイルスはなぜ発生したのか。将来それを防ぐ策は十分なのか。ウイルスの危険性への認識が遅れ、初動が遅延したのは、言論統制など、体制の構造的な特質のためではないか。これらの批判や疑問に答えない限り、世界から信頼を得られず、したがって、中国の覇権奪取は確実、とは断定できません

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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