米大統領選と金融市場:トランプ氏は過大評価されていないか?

2020/02/17

問題は経済

トランプ米大統領は自己顕示欲が強く、負けず嫌いな性格です。そのため、11月の大統領選で再選を果たすべく、最も得策と思われる戦略をとるに違いありません。これは、米国にとって良いことです。

なぜなら、トランプ氏が勝利を収めるためには、経済実績を前面に出すのが得策だからです。事実、2月4日の一般教書演説(施政方針演説)で同氏が強調したのも、「米国経済の力強さ」です。一方、移民排斥や保護貿易など、経済に不利益を及ぼす面については、同氏としては控え目な言及にとどめました。

雇用と株価は堅調

経済が一番の争点になるのは、好ましいことです。人々には、日々の暮らしが重要だからです。また、移民や他国に対するトランプ氏の罵詈雑言を聞かされることも、4年前の選挙戦時よりは減りそうです。

たしかに米景気は、個人消費に主導され表面上は堅調、と言えます。わかりやすいのは、雇用と株価です。失業率(図表1)は3.5%と、約50年ぶりの低水準まで下がりました。実質賃金は、安定的に増加しています。主な株価指数は、トランプ大統領が就任してからの3年間で、約50%も上昇しました。

トランプ氏の功績か?

ただし、トランプ政権のおかげで経済が根本的に力強さを増した、とは言えません。失業率の低下は、その前からの傾向です。3年間の実質GDP成長率(図表2)は平均2.5%と、米国としては標準的です。

しかも、最も高かった2018年の成長率は、2017年末に成立した所得税・法人税減税で押し上げられたものです。これで経済の実力(生産性など)が高まれば良いのですが、実際には、そうした効果は大きくありませんでした。生産性を高めるのは特に設備投資ですが、それが早くも昨年に失速したのです。

貿易摩擦が経済を圧迫

逆にトランプ氏が大統領でなければ、成長率はもっと高かったかもしれません。輸入関税を用いた保護貿易を信奉する同氏のもとで、多数の国との貿易摩擦が、米国の輸出や設備投資を圧迫したためです。

中国との摩擦については、曲折を経て第1段階の通商合意に至りました(2月14日に相互の関税の一部を引下げ)。ただ、第2段階の合意に向けた交渉は、中国の根幹(国家主導の経済体制)にかかわるだけに、難航必至です。このため、トランプ氏が大統領である限り、残る関税は当分そのままでしょう。

公平な経済論争を

また、失業率が相対的に高い人種、株式を保有していない人、同氏の誇大宣伝を信じない人は、米国の現況を冷めた目でみています。よって、同氏が再選を果たせば景況感はさらに向上、とは限りません。

それでも金融市場では、トランプ氏が過大に評価されています。そして、超富裕層や巨大企業を叩く民主党左派(サンダース氏やウォーレン氏)が悪役視されています。しかし、左派の政策(社会保障の大幅拡充など)がトランプ氏の政策より本当に劣るのか。そうした点を含め、公平な議論が望まれます。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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