平成日本経済小史:「失われた30年」と呼ばれて

2019/05/09

第1の局面:バブルが崩壊し、産業大再編へ

平成時代は、日本の「失われた30年」だったのでしょうか。たしかに、この時代の経済成長率は、傾向として右肩下がりでした(図表1)。アジアにおける主役の座も、中国に取って代わられました。

流れを整理するため、10年ごとに平成を回顧してみましょう。最初の10年間(1989年~1998年)は、(株式や不動産などの)バブル崩壊に始まり、(不良債権処理に苦しんだ銀行などの)産業大再編へとつながった期間です。このときはまだ、日本の挫折は一時的なものだと(筆者は)思っていました。

第2の局面:米国の悲劇、中国の台頭

次の10年間(1999年~2008年)は、海外で大きな事件が続きました。まず、2001年9月の米同時多発テロです。これが米国の内向き姿勢を強め、その後のトランプ大統領誕生の下地となったのです。

同年12月には、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟しました。それに象徴される新興国の世界市場への本格参入は、日本にも多大な影響を及ぼすことになりました。例えば、デフレ(物価下落)懸念が広がったのはその頃からです。その一因として、新興国からの安価な製品流入を挙げねばなりません。

第3の局面:リーマンショックからアベノミクスへ

さらに2008年には、米国の住宅バブル崩壊を発端に、世界金融危機(リーマンショック)が発生しました。これはほとんどの主要国を不況に陥れるとともに、米国流資本主義への不信感を喚起しました。

平成最後の約10年間(2009年~2019年4月)における日本経済も、リーマンショックによって方向づけられることになりました。すなわち、世界金融危機に伴う不況、円高・株安、および(それ以前からの)デフレで冷静さを失った日本は、アベノミクスという安直な経済政策に望みを託したのです。

幻想に逃避し、根本問題を放置

実際、少なくとも当初のアベノミクスは、円安・株高・インフレへの誘導策でした。手段は、2年で目標を達成する、と宣言して2013年に開始された、異次元緩和です(日銀による国債大量買入れなど)。

しかし6年に及ぶ経験ではっきりしたのは、為替や株価、物価を操作したりしても根本問題の解決には程遠い、ということです。それは本来、常識で考えればわかることです。ところが平成最後の日本は、アベノミクスという共同幻想に逃避し、少子高齢化(図表2)・人口減などの問題を放置したのです。

「令和」が指し示す日本の行方

それでも平成は、戦争がなかっただけでも良い時代だったと断言できます。身近な点でも、例えば職場環境などは徐々に改善しています(かつては多くの有名企業も、実態は人権無視の過酷な世界でした)。

つまり広い視野に立てば、「失われた30年」という形容は誤りです。日本の低成長は続くにせよ、絶えざる成長という強迫観念に駆られた社会が最善とは限りません。それが平成の教訓です。よって、「変革」「成長」でなく「美」「調和」を表す「令和」という新元号が選ばれたのは、全く自然かつ適切です。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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