日本株は上昇トレンド復帰への号砲が鳴ったのか?

2018/09/21

 先週末に終値ベースで23,000円を回復した日経平均ですが、今週に入っても株価水準を一段切り上げています。とりわけ、連休明けとなる918日(火)の大幅上昇や、翌19日(水)の高値が23,800円台に乗せるなど、急上昇となっていて、5月以降に何度もトライしては跳ね返されてきた「23,000円台の壁」を5度目にしてようやく突破しきれそうな印象になっています。

 

 

今回の株価上昇によって、数カ月にわたって続いた保ち合いを脱し、このまま年末に向けた上昇相場への号砲となるのか、そのためには週末21日(金)の終値を見極めることが必要になりますが、正直なところ、足元の急ピッチな株価上昇に対して、意外感を持たれた方も少なくないと思います。

 

というのも、日本が祝日で休場だった17日(月)に、米国が中国に対する制裁関税第3弾の発動を決定し、それを受けた中国・上海総合指数が、終値ベースでいわゆる「チャイナショック」後の安値を更新するなど、18日(火)の取引はどちらかというと警戒モードで迎えていたからです。ところが、いざ蓋を開けてみれば、株価は冒頭でも触れた通りの大幅上昇を見せました。

 

株価が上昇した理由としては、今週にも第3弾の制裁関税が決定されるであろうことは予め予想されていたため、市場はすでに織り込み済みで、短期的な材料出尽くし感に至ったという見方が多いようです。さらに、詳細な内容を見ても、税率が年内は25%ではなく10%だったことや、影響の大きそうな品目(アップル・ウォッチ、衣料品など)が除外されていたことなど、「思っていたほど悪くなかった」、「税率を二段階で引き上げることで中国との交渉の余地を残した」とする見方もあります。中国側の視点で捉えても、制裁関税の悪影響を緩和するため、何らかの経済政策を打つのではという思惑もあるようです。

 

つまり、不安材料に対しての安心感というよりは、「災い転じて福となす」的な楽観的観測の発想での買いと考えることができますが、それがここまでの株価上昇の勢いとなったのは需給的な要因が強かったためと思われます。先物取引で「23,000円超えはないだろう」という売りポジションが積み上がっていて、それが買い戻されたことや、2018年の外国人投資家の累計売越額が4兆円を超えていますので、いざ買いに転じた時に上昇ピッチが早くなりやすい状況でもありました。こうした需給面のサポートにより、一段高となる可能性もありそうです。

 

ただ、これまでの日経平均の推移を辿ると、米中の通商摩擦を中心に、不安が高まっては株価が下落し、不安が一服すると23,000円のところまで買い戻されるというパターンが繰り返されてきました。それが今回、その23,000円を大きく超えてきたわけですが、そもそも、日本株は国内企業の業績が堅調であることや、株価水準の割安感、買いよりも売りが優勢の中で値を保っている需給の軽さなど、株価の上昇材料はある程度揃ってはいるものの、なかなか上昇トレンドに復帰できていませんでした。不安が一服するだけでなく、不安の払拭に向かう雰囲気へと進展できなかったためと考えられます。

 

したがって、にわかに始まった足元の株価急上昇が、年末相場に繋がるのかはまだ自信を持てる状況ではなく、ムードが変わった時の急落には注意が必要と言えそうです。米中の通商摩擦は着実に状況が悪くなっていますし、決して不安材料が後退しているわけではありません。実際に、18日(火)の日経平均はスタート時からしばらくは前日比マイナス圏での推移となっていました。さらに、週末の21日(金)からは日米の貿易協議(FFR)が開催される予定となっており、米国は日本に対して自由貿易協定(FTA)の締結や自動車への関税をチラつかせてくる恐れもあります。

 

 

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