2018年は米国金利の注目度が高まる?

2017/12/29

いよいよ2017年も最後の週となりました。

 

巷では「2018年の株式相場の見通しはどうなる?」といった話題でもちきりですが、「どこまで上昇するか?」という先高感が優勢の印象です。その背景にあるのは、拡大が続く国内外の景気と企業業績に対する期待感です。実際に、2018年度の企業業績は純利益で9%程度伸びると想定する金融機関が多くなっています。

 

一般的な株価の予想は、EPS(1株当たり利益)の成長に対して、妥当とされるPER(株価収益率)を掛けて算出されますが、この考え方に基づけば、12月19日時点での日経平均株価ベースの予想EPSが1,510円ほどだったので、ここから9%利益を伸ばせば約1,646円になります。これに平均的なPERの値である15倍を掛ければ、日経平均は2万4,700円ぐらいまでの上昇はあり得るということになります。

 

ただし、その道程はそう平坦ではないかもしれません。良くも悪くも、日本株市場は米株市場の影響を多大に受けますが、12月に入ってもNYダウが連日で最高値の更新を演じるなど相場の強さを保っています。いずれは調整局面を迎えることになりますが、これまでリスク材料に対して鈍感になっていた面もあったため、思っていたよりも株価の調整幅が大きくなったり、調整の期間が長くなったりする可能性があります。

 

とはいえ、その米株市場も2018年の見通しについては総じて楽観的な見通しが多いようです。米国ではクリスマス前に税制改革法案が成立しましたが、税制改革と並んでトランプ米大統領の選挙公約となっているインフラ投資についても計画を練り始め、年明けの1月にもその詳細が提示される予定となっています。こうした減税と財政出動による経済政策が景気や企業業績へ大きく寄与すると期待されている構図です。

 

ただし、こうした政策は景気が良くないときに行うのがセオリーです。足元の米国経済は好調のため、減税や財政出動によって景気がさらに刺激されて過熱気味になれば、これを引き締めるためにFRB(米連邦準備制度理事会)が利上げペースを早めざるを得なくなるシナリオも予想されます。実際に、直近まで2.3%水準で推移していた米国の10国債利回りが、税制改革法案の成立が現実味を帯びたタイミングで上昇しはじめ、2.5%水準に迫る場面も見られました。

 

もちろん、米国景気がさらに拡大すると見込まれるがゆえに利回りが上昇しても何の不思議もありませんし、足元の市場もそのように受け止めていると思われます。ただ、減税や財政出動は景気刺激策である一方で財政赤字拡大政策でもあるため、いわゆる「悪い金利上昇」として受け止められてしまう可能性がある点には注意が必要です。特に、経済政策の効果が微妙だった場合には財政赤字の方がクローズアップされやすくなります。

 

つまり、米国の経済政策が効き過ぎても、効かなくても悪材料となる恐れがあるわけです。2017年は適温相場という言葉が踊りましたが、2018年は米金利の動向と、市場がどう解釈するのかの「適温」を探る動きが注目ポイントのひとつになるかもしれません。

 

 

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