エヌビディアの「5,000億ドルAI金融構想」の裏に潜むリスク
今週の株式市場ですが、米半導体企業のエヌビディアが10日(月)に発表した、「5,000億ドル(約80兆円)規模のAI金融構想」が話題になっています。
金融大手6社と組んで、AIインフラ(データセンター)を構築したい企業に対してエヌビディアが資金調達を支援するという仕組みなのですが、注目された理由はその特徴にあります。
まず、ひとつめの特徴は、「この仕組みを通じて資金を調達した企業は、建設するデータセンターのシステム規格をすべてエヌビディア製で統一しなければならない」というルールです。これにより、その企業が破綻しても、システムが標準化されていれば、金融機関はデータセンターおよび設備を丸ごと別の会社へ「居抜き物件」のように引き渡して再利用しやすくなり、債権の回収がスムーズになります。
そして、ふたつめの特徴は、「貸し倒れが起きた場合でも、エヌビディアが債務の25%を肩代わりする」というものです。エヌビディアによる保証があるため、企業は通常よりも低い金利で資金を調達することが可能になります。
これらを通じて、エヌビディアは顧客の開拓と囲い込みを狙っていると思われますが、半導体チップの分野は、これまでの性能や価格を中心とした競争から、金融の仕組みを取り入れることによって、新たな競争に突入する可能性があります。実際に、今回のエヌビディアの発表を受けて、「不利な立場になるのでは?」との観測から、AMDやブロードコムなどの半導体銘柄の株価が下落で反応しています。
ただし、当のエヌビディアの株価も5,000億ドルという規模のインパクトの割には、株価はあまり上昇していません。
エヌビディアは新たな成長戦略を示した一方で、最大で1,250億ドル(5,000億ドルの25%)もの保証債務を抱え込むことは財務面でリスク要因となり、企業の破綻リスクを売買する金融派生商品の一種である、エヌビディアのCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の価格が上昇傾向にあります。
また、エヌビディア自らが資金調達の枠組みを作り、保証を提供し、その資金で顧客企業に自社製品を買わせるという構造が「自作自演の売上計上(実体なき需要の創出)」ではないかという批判があります。
さらに、AI相場をめぐっては、収益化の遅れや、競争の激化、課題の対応力などの懸念がくすぶっており、お金を借りた企業が連鎖倒産した場合、損失はエヌビディアだけでなく、融資した金融機関にも直接及び、これが引き金となって、金融システム全体が混乱する「システミックリスク」の可能性も懸念されます。
そのため、今回のエヌビディアの戦略は賛否両論を呼びながら、その行方を見極めて行くことになりそうです。
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