ソフトバンクグループ決算から透けて見えるAI・半導体相場の課題
今週の国内株市場ですが、これまでのところ、日経平均が63,000円台を意識する高値圏での攻防が続いています。
米国で発表された4月分の消費者物価指数や生産者物価指数が、予想以上に物価上昇が進んでいる結果となったことや、中東情勢が進展せずに原油価格なども高止まりしており、これを受けた債券市場では、金利(米10年債利回りなど)が上昇する反応を見せたものの、国内外の株式市場は引き続き強気姿勢を保っている印象です。
そんな中、国内では13日(木)に注目のソフトバンクグループ(SBG)が決算を発表しました。純利益が日本企業として史上最高となる約5兆円を記録し、そのインパクトの強さから多くのニュースの見出しを飾ることになりましたが、翌14日(木)のSBG株の動きを見ると、上昇で始まったものの、すぐさま下落に転じる反応を見せています。
今回のSBG決算の最大の特徴として挙げられるのが、純利益のほとんどが投資先である米オープンAI社の企業価値上昇に伴う評価益が占めており、利益の中身が「ビジネスで直接的に現金を稼いでいるわけではなく、投資先の評価」に依存している点です。
実際に、SBGの「営業キャッシュフロー」は4,200億円を超える赤字でした。さらに、オープンAI社への追加投資などのために有利子負債が25兆円規模まで膨らんでおり、借金で投資を回す構造が一段と鮮明になっており、株式市場の反応が冷ややかだったのも、こうした事情が背景にあると思われます。
今後のSBGの課題としては、この巨大な「含み益」をいかに現金化し、迫り来る負債の返済に応じるかという点です。具体的には、SBGはオープンAI社関連の資金調達として約6.4兆円のブリッジローンを抱えていますが、その返済期限が2027年3月に迫っています。現時点で見込まれているオープンAI社のIPO(新規上場)が滞りなく行われ、その利益で返済できれば問題ないですが、先月(4月)27日に、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が、「オープンAI社の2025年の売上高や利用者数が目標未達だった」と報じたばかりでもあり、もし、IPOが遅延する事態となれば、財務不安の高まりによってSBG株が売りに押されてしまう可能性があります。
また、今後のAI・半導体相場の見方についても、重要な変化が読み取れます。傘下の英アーム・ホールディングスが自社でAIチップを直接販売する戦略へ転換したことは、これまで同社の設計図を利用してきたエヌビディアやアップル、アルファベットといった巨大顧客との「利益相反」を招くリスクを孕んでいます。これは、AIの開発環境が全体的な「共存」から、「垂直統合による生存競争」へ移行したことを象徴しています。
今回のSBG決算は、旺盛なAI投資意欲が帳簿上に現れた結果となりましたが、その一方で、「持続可能な成長」への不安定さを示した面があると言えます。これまでのAI・半導体相場は、時折、「巨額の投資費用を賄えるだけの収益化」や「財務の耐久力」への不安が台頭し、大きく売られる場面を見せてきましたが、今後もその不安がちらつく場面が出てくることになりそうです。
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