株価反発と「FRBには逆らうな」への意識

2022/04/15

今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ、週初の11日(月)が164円安、12日(火)は486円安と、合わせて650円ほど下げた後、13日(水)に508円高で反発するなど、値動きのやや荒っぽい展開が目立っています。

直近の株価下落の背景にあるのは、次回(5月)の米FOMCで、利上げ幅の拡大や、QTの開始などが検討されていることが判明し、米金融政策の正常化ペース加速に対する警戒感が改めて意識されたことがきっかけです。ただ、米金融政策に対する警戒自体は今年の1月~3月にかけて織り込んでいた経緯があり、この期間につけた安値は、1月27日の26,044円、2月24日の25,775円、3月9日の24,681円なのですが、直近の安値(4月12日の26,304円)を見ると、当時の安値まで下げておらず、まだ冷静さを失っていない印象です。

また、13日(水)の株価反発については、足元の下落後の反動をはじめ、株式市場にとってここ数カ月のあいだ「鬼門」となっていた米CPI(消費者物価指数)において、コア指数が減速していたことで、物価上昇のピークは近いのではという期待が芽生えて米長期金利が低下したこと、中国上海で実施されているロックダウンが一部緩和されたこと、そして、本格化する企業決算への期待などが要因として挙げられます。実際に、14日(木)の取引も続伸して取引開始直後に27,000円台に乗せる展開となっています。

とはいえ、このまま株価が戻り基調を描けるかについては、米金利の動向や企業決算の動向次第の面があるため微妙なところです。現時点で米FRBが想定しているのは、次回の会合での利上げ幅拡大(0.25%から0.5%)とQT(量的引き締め)の開始です。とりわけ、QTの規模については、徐々に増やしていき、最大で月間950億ドルまでの引き締めをアナウンスしています。前回実施されたQT(2017年から2019年)では、月間100億ドルから始まり、500億ドルまで増やしていたことを考えると、今回は前回を大きく上回るペースのため、多少の引き締めペースの鈍化観測だけで今後もグイグイ株価を上昇させていくのは難しいかもしれません。しばらくは株価の戻り基調が描かれるかもしれませんが、それに伴って「FRBには逆らうな」という相場格言への意識も高まってくるかもしれません。

また、前回の当コラムでも指摘した通り、中国の「ゼロコロナ政策」の徹底によるロックダウン(都市封鎖)の影響によって、中国の港湾都市の沖合では、多くのコンテナ船が積み降ろしできずに待機せざるを得ないという事態が発生しており、供給網(サプライチェーン)の停滞による国内外景気への影響も心配されます。

さらに、ウクライナ情勢をめぐっては、ロシアが、5月9日の対独戦勝記念日に向けて軍事行動を活発化させているなど、地政学的な状況も不透明となっています。

このように、相場の波乱になりかねない材料も多く燻っているため、不安定な相場地合いが続いていることを念頭に置いて取引に臨む必要がありそうです。

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