相場の売り材料として潜む中国リスク

2022/04/08

今週の国内株市場ですが、週初からの日経平均は節目の28,000円台へ向けてジワリと戻りをうかがう展開となっていましたが、6日(水)の取引では下げに転じて75日移動平均線の攻防、翌7日(木)も続落でスタートするなど、これまでのところやや不安定な値動きとなっています。

株価下落のきっかけとなったのは、米金融政策の動きに対する反応です。3月のFOMC(連邦公開市場委員会)を、市場予想通りの結果(0.25%の利上げ)で無難に通過した株式市場でしたが、足元では次回のFOMCで0.5%への利上げ幅の拡大観測が強まりつつありました。そんな中、ハト派(金融引き締めに慎重)で知られるブレイナードFRB理事が、5日(火)の講演でQT(量的引き締め)の開始を次回(5月)の会合で検討する可能性を示唆し、その後に公表されたFOMC議事要旨でも具体的なQT開始が議論されていたことが判明し、米国株市場がハイテク株を中心に下落、その流れが国内株市場にも波及しました。

あらためて米金融政策の正常化ピッチの速さに対する警戒の根強さが意識される格好となったわけですが、金融政策の判断は、ウクライナ情勢とインフレ抑制、米国景気のバランスで左右されることになりますし、「正常化ペースが加速しても米国景気が耐えられる」と見做されれば、株価は上昇していくことになります。まずはその試金石として、今月の半ば以降に本格化する日米の決算シーズンにおける企業業績の動向が注目されます。

ただ、相場の売り材料としてより注目したいのは中国リスクの方かもしれません。とりわけ、足元でポイントになりそうなものとして2つ挙げられます。

ひとつめは新型コロナウイルスに対する中国の「ゼロコロナ政策」です。今週も上海でのロックダウン(都市封鎖)延長が発表されましたが、金融・物流の中心地である上海の都市機能停止は、かなりの経済的ダメージが考えられます。例えば、ロックダウンが行われている中国の港湾都市の沖合では、多くのコンテナ船が積み降ろしできずに待機せざるを得ないという事態が発生しており、中国にモノが運べない、中国からモノが届かないという物流の滞りが懸念され、ゼロコロナ政策の影響は中国以外にも及ぼしそうです。

もうひとつは、ウクライナ情勢における中国の外交的スタンスです。当初から中国は中立という姿勢を一応保っていますが、ロシアか西側諸国のどちらにつくのか、「勝ち馬」がハッキリするまでは態度を明確にせず、利益の最大化をねらう方針なのだろうと思われます。また、中国も食料やエネルギーの面でロシアに依存している面があるほか、対アメリカを想定したロシアとの協力関係なども影響している面があります。

ただ、ウクライナ情勢の焦点は、安全保障における勢力圏争いから、ロシアの軍事行動による人道的な被害や戦争犯罪へと移っているほか、5日(火)に開催された国連安全保障理事会ではロシアによるウクライナ民間人の虐殺疑惑が議題となりましたが、理事会に参加した中国代表からは未だにロシアに配慮した発言にとどまっています。今後の戦況の動向によっては、このような中国の曖昧な立ち振る舞いが「ロシア寄り」と受け止められ、中国が西側諸国からの制裁対象となることも想定されます。

国内株市場は米国の金融政策への懸念をある程度先取りして織り込んだと考えることができる一方、中国リスクについてはまだ織り込み切れていない可能性があり、注意が必要かもしれません。

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