ウクライナ情勢に揺れる株式市場の下落は買いか否か?

2022/02/25

祝日を挟んで4営業日となる今週の国内株市場ですが、先週に引き続き、ウクライナ情勢をめぐる不安感の中での推移が続いています。これまでのところ、週初の21日(月)に節目の27,000円台を割り込んだ日経平均は下げ幅を広げ、24日(木)取引開始時点でも、先月1月27日につけた安値(26,044円)をうかがうような株価水準に位置しているほか、金価格も高止まりしていることから、リスクオフが優勢となっています。

市場にとって足元のウクライナ情勢は、いわゆる「地政学的リスク」として意識され、今後もロシアの軍事的行動とそれに対する西側諸国の経済制裁圧力とのあいだでムードが左右されることになりますが、政治的判断が伴うことになるため、その後のシナリオを先取りするのが困難になり、ある程度の警戒感を織り込んで株価が下落した後は、ある意味「出たとこ勝負」の面が強まります。状況が改善しなくても、膠着感が強まれば一時的に株価が反発する場面も今後出てきそうです。

とはいえ、現時点ではまだ事態を収拾する「落としどころ」を探っている段階で、相場は基本的に下へと向かっている状況と言えます。実際に、「ウクライナへの軍事侵攻はしない」という立場をとっているロシアですが、東ウクライナの新ロシア派勢力地域を独立国家として承認し、その国家を支援するという名目で軍を派遣したり、ウクライナ北西で国境を接するベラルーシとの共同軍事演習を理由に軍を駐留させるなど、直接的ではなく、間接的にウクライナに軍事力を行使するカードを増やしています。

ウクライナのNATO加盟に対するロシアの反発にはじまった今回の事態ですが、焦点は西側諸国からどこまでの譲歩を引き出せるかの駆け引きへと移っていると思われます。少なくとも米国では3月1日のバイデン大統領による一般教書演説や、3月4日から始まる北京パラリンピックあたりまでは、ロシア側からの揺さぶりが増えそうです。同時に、西側諸国からの経済制裁の影響を織り込んでいく動きも出てきそうです。

株式市場の歴史を紐解くと、1970年代以降の軍事的行動を伴う地政学的リスクが高まった局面では、その多くが1カ月程度は株価が下落したものの、その後は反発に転じ、株安が長期化する事例は少ないという傾向があります。ただ、今回は米国の金融政策が急ピッチで正常化に向かい、対インフレによる景気後退が懸念されるタイミングと重なっているため、必ずしも「歴史が繰り返される」とは限らない可能性があります。また、オリンピックのために徹底したゼロコロナ政策を遂行して経済活動を抑制した1-3月期の中国の景気動向も気になるところです。

そのため、株価水準がもう一段階下落するシナリオも想定しておく必要があり、短期で勝負をしないのであれば、まだ慌てて買いを入れなくても良さそうです。

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