日経平均3万円は遠いのか?

2021/11/12

今週の国内株市場ですが、10日(水)の取引終了時点での日経平均は4日続落し、節目の29,000円台の維持が意識される株価水準となっており、先週の高値(29,880円)が3万円台を射程圏内に捉えていたことを踏まえると、軟調な推移が目立っています。もっとも、下値のサポートとされる移動平均線(200日・25日・75日)までには少し距離があり、まだ相場が崩れたという状況ではなさそうです。

とはいえ、最近の米国株市場に目を向けると、主要3指数(NYダウ・S&P500NASDAQ)が揃って連日で最高値を更新するなど、強い動きが目立っていて、日米の株式市場で温度差があります。

こうした米国株市場の好調な背景には、(1)米長期金利や資源価格の一服していること、(2)コロナ治療薬と経済再稼働への期待、(3)決算を好感した物色、(4)FOMC後の米金融政策のハト派姿勢、(5)バイデン政権の1兆ドル規模の経済政策が議会を通過したことなどが挙げられますが、日本株は「世界の景気敏感株」という性格があるため、景気の先行きを好感する動きを織り込むのであれば、米国株市場の流れに乗って、もう少し上昇してもおかしくはないものの、いまのところそのような動きにはなっていません。

となると、足元の日米の株式市場のギャップの裏には、「日本株が出遅れている」面と、「米国株が楽観的に動いている」面の両方がありそうです。今後、日本株の出遅れが修正されるのであれば、日経平均3万円到達もそう遠くはなさそうですが、現時点で注意しておきたいのは、米国株の調整の方かもしれません。

もちろん、米株市場もインフレ警戒や供給網の混乱、債務上限問題の期限、中国恒大集団をはじめとする、中国不動産業の債務問題の影響などの不安が払拭されたわけではなく、相場が軟調に転じるリスクは燻っています。実際に、今週発表されたCPI(消費者物価指数)の結果を受けた米国株は下落しています。さりとて、「ゴルディロックス相場(適温相場)」のムードがあることや、さらに、足元では新値を更新している状況で、ある程度の上昇トライの達成感が出るまでは、しばらく強気の見通しが続く可能性があります。

ただし、先ほど挙げた米国株上昇要因のうち、中長期的なリスクとして、(2)のコロナ治療薬には注意が必要かもしれません。

早ければ12月に販売が見込まれる、米メルクと米ファイザーが開発した飲み薬(「モルヌピラビル」と「パクスロビッド」)は、早期に服用すれば高い確率で、重症化や死亡のリスクを抑えられる効果があるとされ、すでに行っているワクチン接種とともに、コロナ抑制が期待されます。

しかし、課題もいくつか想定されます。まず、治療薬の登場による安心感でワクチン接種が進まなくなること、そして、早期に治療薬を投与することの難しさです。そもそも、治療薬はコロナウイルスに感染した際に投与されるものであり、感染拡大防止にはワクチン接種が必要であるということに変わりがないほか、コロナウイルスに感染し、症状が出始めた段階ではすでに早期とはいえず、治療薬の効果が出にくくなってしまうため、感染の早期発見と投与の仕組みを整える必要があります。

治療薬に対する過度な期待が先行してしまい、その結果として、感染が再拡大してしまう事態には注意が必要かもしれません。

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