物価上昇への警戒感がもたらすもの

2021/05/07

大型連休明けとなる今週の国内株市場ですが、6日(木)の日経平均は大きく上昇して始まりました。連休中の米国株市場でNYダウが最高値を更新するなど堅調だったことを受け、波乱のない市場再開と言えます。

とはいえ、連休中の米株市場は軟調な場面があったことには注意が必要かもしれません。S&P500が高値を更新するほどの勢いが出ていないことや、NASDAQも75日移動平均線の株価水準まで下落しています。好調のNYダウでさえ、一時300ドルを超える下げ幅を見せています。

その背景には、米国の物価上昇への警戒が燻っていることが挙げられます。5月4日(火)の取引では、イエレン米財務長官がインタビューで、「米経済が過熱しないように金利を少し上昇せざるを得ないかもしれない」と述べたことで、FRBが利上げ時期を早めるのではという見方が意識されました。もっとも、FRBの金融政策について財務長官がコメントするのはあまりないことですし、イエレン氏も発言を修正したことで相場が持ち直しています。

ただし、物価の上昇やそれに伴う金利上昇懸念は、今後も株式市場の材料となる場面が増えそうですし、その場合、物価上昇が金融緩和と共存可能な範囲にとどまるのか、一時的なものになるのかが焦点になります。

確かに、物価の上昇は米国経済の強さの証左ではありますが、経済の急回復によって、あらゆるものが供給不足になります。実際に、足元では原材料価格が上昇していますが、米国では需要が増による「ディマンドプル」型の物価上昇のため、最終商品の値上げなど価格転嫁である程度の対応が可能と思われます。その一方で、出遅れている日本などでは、需要が増えない中で原材料価格上昇の影響を受ける「コストプッシュ」型の物価上昇となり、経済への悪影響が懸念されます。

また、最近の株式市場では、金利上昇の観測が高まると、IT・ハイテクなどのグロース株や中小型株に資金が向かいづらくなる傾向があります。これまでは、「グロース株からバリュー株」へという資金の流れがありましたが、企業決算が一巡しつつあるタイミングでもあり、資金がコモディティ(商品)や仮想通貨などに流れる可能性があります。

出遅れている日本株も資金が向かう対象として考えられるため、ある程度の株高を演じるかもしれませんが、国内の新型コロナウイルスの感染状況や、7月に都議会選挙が控えていることもあり、高値を更新するほどの勢いが出てくるには新たな買い材料が必要になってくると思われます。

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