「ワクチン相場」に揺れる株式市場

2020/11/20

今週の国内株市場ですが、日経平均は17日(火)の取引で26,000円台に乗せてきました。先週が25,000円台、先々週が24,000円台の節目を次々と超えており、大統領選挙通過による買い戻しから、ワクチン相場への様相を呈している印象です。
抗コロナワクチンについては、米ファイザー社と独ビオンテック社で共同開発しているワクチンの検査結果が90%を超える有効性を示したと報じられたのに続いて、少し前にワクチン開発で相場を賑わせたモデルナ社のワクチンについても、検査での有効性が90%を超えたと発表され、さらに追い風になった格好です。
確かに、ワクチン開発は想定以上のスピードと有効性を示しながら進展しているため、「コロナ克服」への期待は高く、日経平均はコロナ克服後の経済回復をかなり先取りして急ピッチで上昇している勢いです。つまり、足元の上昇が落ち着いた後は、先取りした期待と実体経済の動向とのあいだのギャップを埋めに行く展開が想定されます。「相場が強いか弱いか」で動く局面から、いずれ「株価水準が適正かどうか」へ市場の視点がシフトしていくことになります。
とはいえ、TOPIXについては18日(水)の取引終了時点でコロナ前の高値(2月6日の1744p)に届いておらず、過熱感が際立っているのは日経平均ということになりますので、しばらくはNT倍率(日経平均÷TOPIX)の縮小をにらんだ取引(日経平均売り・TOPX買い)が活発になるかもしれません。
このように、今後のワクチン相場には様々な思惑が絡んできそうです。普及スピードや効果、中長期的な副作用といった安全性の問題など、「ワクチンそのものに対する思惑」があるほか、ファイザー社のCEOが今回のワクチン検査データの公表に併せて保有株式を売却していたことが判明しました。法的にはインサイダー取引ではないとされているようですが、タイミングや道義的に適切なのかといった見方もあり、「企業の状況を把握している経営陣による株式売却への疑念への思惑」があります。
そして、期待以上にワクチンが効果を発揮し、世界経済が急回復した際には、「金融緩和の出口への思惑」が浮上するかもしれません。株式市場は、「米FRBは2022年までゼロ金利を維持する」という金融緩和継続を前提に動いているほか、金融緩和で相場が支えられているのも事実です。
ワクチンに対する思惑で株価がこれだけ大きく動いたことを踏まえると、金融緩和の出口への思惑はより大きな波乱要因となる可能性があり、ワクチンによって実体経済が想定以上に回復するのは我々の社会にとっては喜ばしいことですし、そうなって欲しいですが、相場的には良くないことになるのかもしれません。

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