入念な「憂い」への備えがもたらす、「収束」後の過大な期待

2020/04/17

今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ19,000円台でのもみ合いとなっています。14日(火)の取引では直近高値(3月25日の19,564円)を上抜けるなど、上方向への意識が出てきている場面もありましたが、一気に20,000円台の回復をうかがうほどの勢いはまだ感じられません。

各国の政府や中央銀行が大規模かつ矢継ぎ早に対策を打ち出し、新型コロナウイルスの感染拡大による経済への悪影響に備える動きが株価を下げ渋らせる中、欧米の感染拡大にピークアウト感が出てきたことや、経済活動が早期に再開するとの期待が株価を支えている背景です。

IMFの発表によれば、各国の財政出動の金額は全体で約8兆ドル(860兆円)程度ですが、これは世界経済全体の1割近くに相当するとされています。かつての「リーマン・ショック」レベル以上の危機に備える規模感です。

また、先週は中国の武漢で約2カ月半ぶりに都市封鎖が部分的に解除されたほか、今週はトランプ米大統領が会見において月内に経済活動の一部再開を示唆し、欧州でもスペインなどで様々な制限が緩和されるなど、新型コロナウイルス収束後を期待させるような具体的な動きがみられ始めています。

そのため、足元の株式市場の動きは、大規模な財政出動や金融緩和などによる入念な「憂い」への備えがあったからこそ、新型コロナウイルス収束の兆しに前向きに反応したと言えます。

今後の焦点は「スピード」です。折角の大規模な経済政策も、実行されるまでに時間が掛かってしまえば、資金難に陥る企業や失業者が増加してしまい、いざ経済活動が再開した時に肝心の基盤が損なわれてしまう可能性があります。現時点では年後半からの「V字」回復を予想する見方が多くなっていますが、回復に時間のかかる「U字型」や「L字型」となってしまうシナリオも想定されます。

また、そもそもコロナウイルス収束に伴う経済活動は状況に応じて段階的に解除されることになるため、思ったよりも時間が掛かる可能性があるほか、反対に解除を急ぎ過ぎてしまうと、感染が再拡大して却って経済の低迷がより長期化し、財政支出も一段と膨らむことも考えられます。

したがって、株式市場が「コロナ収束後」を織り込む動きは必ずしも株価の本格回復ではなく、もみ合いが続く展開も想定しておく必要がありそうです。

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