コロナ収束観測をめぐる「時間差」

2020/04/10

今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ順調に株価を戻し、4月8日(水)の取引では高値が19,545円、終値が19,353円となっています。もっとも、直近高値(3月25日の19,564円)までの株価の戻りは想定内と言えますので、この直近高値を越えられるかが目先の焦点です。

 

新型コロナウイルスをめぐる動向を整理すると、今週に入って国内では緊急事態宣言が出されたほか、欧米の感染者増加に頭打ち感が出てきたこと、さらに感染拡大の震源地となった中国の武漢市では2カ月半ぶりに封鎖措置が一部で解除されるなど、状況の悪化がひとまず一服した印象です。

 

これにより株式市場は「底打ち感」や「二番底の回避」といったムードが高まり、例えば、遠隔診療関連銘柄が売りに押される一方で、売り上げ減や業績悪化懸念で売られてきた小売関連株の一部が買われるなど、すでに「コロナ収束後」を見据える見方も出てきています。

 

このまま世界的規模で新型コロナウイルスが収束に向かえば、「ヒト・モノ・カネ」の流れが復活し、株価と景気のV字回復も期待できるわけですが、実際のところは中国と日本の状況を比較しても分かる通り、各地でかなりの時間差があります。

 

国内では緊急事態宣言が出されたばかりですが、「遅すぎ」という批判があるほか、海外の都市封鎖の厳しさほどの内容ではなく、その効果について不安視する声も聞かれます。確かに、海外が収束に向かう一方で、国内でダラダラと感染者数が出続ける状況となれば「日本回避」の動きとなり、国内株の本格的な戻りも出遅れてしまう可能性があります。その中でも外需関連株と内需関連株で値動きに差が出てくることなども考えられます。

 

また、一足早く峠を越えたとされる中国では、先ほども触れた通り武漢市が開放されましたが、閉鎖されてからの期間は約2カ月半かかっていますし、現在も経済活動の制限は続いています。中国が本当にコロナに打ち勝ったと言えるには、現在延期となっている全人代(全国人民代表大会)の再開まで待たなければならないかもしれません。

 

そのため、株式市場が本格的に「コロナ収束後」を織り込みに行くにはまだ早いのかもしれません。

 

 

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