10個のお金の問題、二択で考えるのはアリかナシか?

2021/12/14

(サマリ)
●対面営業の証券会社がいいか、ネット証券がいいか?
割安株投資がいいか、成長株投資がいいか?
SP500に投資するのがいいか、全世界株に投資するのがいいか?
はじめに投資する場合、iDeCoがいいか、つみたてNISAがいいか?
バランスファンドがいいか、ラップ運用がいいか?
資金を分割して投資するのがいいか、一括投資がいいか?
インデックスファンドがいいか、アクティブファンドがいいか?
住居は賃貸がいいか、持ち家がいいか?
順張りがいいか、逆張りがいいか?
株式に投資するのがいいか、債券に投資するのがいいか?

2021年の年末は「二択」が特集テーマだ。投資、もう少し広くお金の問題について、二択の形式で考えてみようという趣旨だ。
さて、「○○○か、×××か?」という形の二択問題は様々に設問可能だが、前提条件によって答えが変化するし、検討するうちにそもそも問い自体が適切ではないということに気づく場合もある。今回は、お金にかかわる二択問題を検討してみたい。
はじめに、以下の10個の二択問題について、「○:二択の問いが適切であり、答えが出る」、「×:二択で問うこと自体が不適切だ」、「△:前提条件によるので、○とも×とも決めがたい」の3通りの評価を読者ご自身でやってみて欲しい。「○」の場合は、どちらの選択肢に軍配が上がるのかについても答えを出して欲しい。
以下の設問は、採点を目的とするものではないので、問題のいくつかは条件を敢えて曖昧にしてある。言葉を補いながら、「私なら、こう思う」という具合に考えてみて欲しい。

##1.対面営業の証券会社がいいか、ネット証券がいいか?

答え 「○」。ネット証券がいい!

1問目は、挨拶代わりのサービス問題だ。
手数料が安いこと、便利なこと、もあるが、何と言っても、セールスマンと向き合わずに済む点が、ネット証券は圧倒的にいい。
「トウシル」がネット証券のメディアだから、筆者がネット証券に勤めているから、という理由もほんの少しあるのだが、「人間のリスク」を避けられるメリットは大きい。答えははっきりしている、と言い切ることにする。
もっとも、問題の前提となる可能性は多様だ。例えば、就職活動中の学生さんから「対面証券の方が、給料が高い場合があり得るのではないか?」という反論があり得る。この反論に対しては、「お金は大事だ」と認めつつも、「お客さんのためになる仕事の方が、働いていて楽しいよ」と再反論することにしよう。
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2.割安株投資がいいか、成長株投資がいいか?

      答え「×」。両方に分散投資する方がよりいい。

割安株、成長株をどう定義するかによって議論は変化するかも知れないが、金融の意思決定としては、異なる属性の対象に分散投資することで、投資の効率(リスク当たりの期待リターン)を改善できるので、分散投資する方がいい。
この設問は、二択で考えること自体が不適切な事例だ。
同様に、例えば、高成長が予想されていて株価が高い国と、低成長が予想されていて株価が安い国とがあれば、両国の株式に分散投資するのが正解になる。
投資では、どちらか一方を選ぶのではなく、両方に分散投資することが正解になる場合が多いので、二択のフレームワークの外に出る発想が大切であることを覚えておいて欲しい。
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3.S&P500に投資するのがいいか、全世界株に投資するのがいいか?

     答え「○」。全世界株に投資する方がいい。

厳密には、「インデックスファンドに投資するとして」、「1銘柄だけで投資するとして」といった言葉を補わないと答えが決まらないが、一国だけの株式市場に投資するよりも、全世界の株式に分散投資する方が優れているので、答えを1つに決めていいだろう。
もちろん、前提条件として、米国以外の株式に既に投資していて、米国株式への比率を高めたいといった事情を持つ投資家にとって、S&P500のインデックスファンドを買うことが正解になり得るので、読者がS&P500のインデックスファンドを買うことが「常にダメ」という訳ではない。
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4.はじめに投資する場合、iDeCoがいいか、つみたてNISAがいいか?

答え「△」。投資家の状況による。例えば課税される所得があるならiDeCoがいい。

これは、二択で問うこと自体は適切だが、前提条件によって答えが変わる性質の問題だ。答えは「○」でも「×」でもない。
サラリーマンやフリーランスなど、働いていて課税される所得がある場合は、所得控除のメリットが大きいiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)を先ず使う方が適切な場合が多いだろう。
一方、専業主婦など課税される所得がない人の場合、「60歳まで引き出せない」という制約があるiDeCoよりも、自由に解約できる流動性があるつみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の方が便利だという状況があり得る。
現実的には、iDeCoだけでは将来必要な金額の資産が準備できない場合が多いだろうから、iDeCoと、つみたてNISA或いは一般NISAを併用し、更に足りない場合は一般の課税口座(ネット証券の特定口座など)を使って運用するといい。
若いサラリーマンの場合、なるべく早くネット証券に口座を開いて、iDeCoとつみたてNISAの口座を作り、毎月5千円ずつでもいいので、利用を開始しておくと、その後に「億劫で投資を始められなかった」と後悔する状況を避けやすいと思う。後から利用額を増やすといい。
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5.バランスファンドがいいか、ラップ運用がいいか? 

      答え「×」。どちらもダメだ。

アセットアロケーションを他人に丸投げして、利用の手数料が高く、しかも選択される投資対象でも手数料の高い商品が選ばれる場合がある対面営業の証券会社のラップ運用は、考えられる中でも「最低・最悪の部類」の運用なので、バランスファンドの方が「まだマシだ」という優劣関係は決まるので、二択問題自体は成立している。
しかし、バランスファンドも投資家にとって良い選択肢ではない。
先ず、アセットアロケーションは自分で決めた方がいい。バランスファンド任せにすると、自分が保有しているリスクの大きさや性質が把握しにくくなる。バランスファンドを選んでも、投資家本人のアセットアロケーションの問題は残る。バランスファンドを含む、自分のアセットアロケーションを把握して、決定しなければならない。
バランスファンドを初心者向けだと言い張る怪しいマネーアドバイザーもいるが、バランスファンドは決して初心者向けではない。
また、バランスファンドで投資するよりも、同様のアセットアロケーションのファンドに単品を組み合わせて投資する方が手数料は安く済む場合が多い。
また、現在の債券利回りの状況で、債券にも投資するバランスファンドを選ぶことは非効率的だ。
お金の問題で二択の問題設定が適切でないケースには、「分散投資の方がいい」というケースの他に、本問のように二択の選択肢が両方ダメという場合もある。
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6.資金を分割して投資するのがいいか、一括投資がいいか?

   答え「○」。一括投資がいい。

投資タイミングを時間分散する方がいいと本気で思っているお金のアドバイザーがいるかも知れないし、投資家の性格によると言いたい人がいるかも知れないが、(1)いいタイミングを判断することは出来ないが、(2)リスク資産に投資するのが有利だと思っているのだから時間を無駄にしない方がいい(経済学用語では「機会費用」がもったいない)、という2つの前提条件が成立しているので、自分に取って適切な額をサクッと一括投資してしまうのがいいと結論を出すことが出来る。
お金の問題は、損得で判断していい場合は、前提条件が決まると結論が1つに決まるものなので、グズグズせずに割り切った結論を出すことを躊躇しない方がいい。
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7.インデックスファンドがいいか、アクティブファンドがいいか?

答え「○」。インデックスファンドの方がいい。

厳密に言うなら、アクティブファンドの反対語はパッシブファンドであり、ベンチマークとファンドがターゲットとするインデックスが異なる場合には、「インデックスファンドだが同時にアクティブファンドでもある」という場合があり得るので、この二択問題は正確な出題ではない。入学試験には使えないレベルの問題である。
もっとも、通常の投資の世界では、出題が指示する内容に大きな疑問はないだろう。そして、答えは1つに決められる。
前提となる条件として、(1)インデックスファンドの平均的な運用成績はアクティブファンドの平均的な成績に勝っており、(2)運用成績が相対的に良いアクティブファンドを事前に選ぶことは出来ない、という2つの事実がある。
これら2つの否定しがたい事実を論理的に組み合わせると、アクティブファンドを選択することが経済合理的な選択にはなり得ないことが分かる。
大まかに言うと、アクティブファンドの平均像とインデックスファンドのポートフォリオが一致していて、インデックスファンドの方が運用に関わる手数料やファンド内の売買コストが低いから、(1)の成立は確実であり、アクティブファンドの上手い選び方が本当にあるならダメなアクティブファンドに資金が集まることはないはずなのに、現実にダメなアクティブファンドがある事実を踏まえると(2)も否定しがたい。
「アクティブファンドの目利きが大事だ」とか「過去のパフォーマンスをしっかり調べた方がいい」という意見は、良いアクティブファンドを選ぶことができるという雰囲気を醸し出したい人による「論点ずらし」に過ぎない。
現状では、アクティブファンドを勧めるアドバイザーは、無知であるか、意図的な嘘つきであるか、金融機関のセールスマンに過ぎないかの何れかである。
例外はない。
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8.住居は賃貸がいいか、持ち家がいいか?

   答え「△」。家の価格が安ければ持ち家、高ければ賃貸が原則だ。

「賃貸・持ち家論争」は雑誌やテレビが好むテーマであり、繰り返し取り上げられる。但し、消費者に家を買わせることで儲かる建設・不動産業界の利害が背後にあることが多く、「賃貸派」は話題を作るためにその場に駆り出される事が多い。
因みに、筆者はこれまで賃貸暮らしが長く、賃貸を擁護する議論にやや詳しいので、「賃貸派」の役割で声を掛けられることが時々ある。地上派の全国放送のテレビ番組で賃貸派の論者として参加したこともあるのだが、この時には、スタジオで話をしながら、「持ち家派の人は、自分とこの番組に出演するギャラが同じでも、今後不動産業者からたくさん講演依頼があるのだろうから、立場的にはあちら側が圧倒的に儲かるのだな」と思った記憶がある。我ながら情けなくなるような、せこい気づきだった。
不動産は流動性に乏しい等の欠点があるが、投資対象となる実物の「資本」であることは間違いない。その価格には、リスク負担に対する補償となる「リスク・プレミアム」が含まれていると考えることが妥当だ。
問題は、買うか買わないかを検討している不動産の価格が、十分なリスク・プレミアムを期待できるほど安いか、リスク・プレミアムが不十分あるいはマイナスになるほど低くなるくらい価格が高いのか、一重に価格の高低にある。
「安ければ買うのがいいし、高ければ買わない方がいい」という大原則以外に頼ることができる答えはない。
よくあるように住宅ローンを組んで行う不動産購入の可否は、(A)キャッシュからの投資として考えた場合の損得判断と(B)住宅ローンに伴う損得判断、を総合して判断されるべきものだ。住宅ローンは、一般論としては、金融機関の儲け分だけ借り手が損をすると考えるべきコスト要因なのだが、住宅ローンに関する減税措置などが加わると「住宅ローンを借りる方が得になる」という場合もある(2021年現在、得な状況が生じている場合がある)。都度都度の状況で判断しなければならない。
住宅購入の可否には、その住宅の将来価値の予測(基本的に上手くできると思わない方がいい)の他に、将来の家族の状況変化の予想や、その他の財産の状況など、様々な要素が関わる。
詳しくは別の機会に論じたいと思うが、「家賃を払っても家は自分のものにならないけれども、家を買うとローンが終わると家は自分のものになる」という不動産屋がよく言う台詞だけでは、家を買った方がいい十分な理由にならないことを申し上げておく。
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9.順張りがいいか、逆張りがいいか?

   答え「×」。決められないものを無理に決めることは正しくない。

投資やトレーディングにおいて(注:両者には共通点があるが、基本的には異なるものだと考えた方がいい)「順張り」的であるのがいいのか、「逆張り」的であるのがいいのか、について、つい好みで答えたくなってしまうが、正確には、時系列リターンが順相関の関係にあるか(上がった株価はその後により上がりやすい、といった具合に)、あるいは逆相関の関係にあるか(下がった株の方が次には上がりやすい)、が重要だ。
順相関が多いか、逆相関が多いかの関係は、困ったことに一定しない。順相関が観測されて「モメンタム効果」が有効だと強調されることもあるし、逆に「リターンリバーサル」(相対的リターンの逆相関の傾向性)や「ミーン・リバージョン」(リターンの平均回帰)が有効だとされる場合もあって、金融論の専門的な論文にも両者それぞれのものが多数ある。
二択の選択肢はお互いに排他的に成立していても、どちらがいいかは決められないので、二択で問うことが不適切だという問題もあると理解しておきたい。
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10.株式に投資するのがいいか、債券に投資するのがいいか?

答え「○、△、×何れもあり」。経済・市場に対する判断による。

大まかには、将来が、企業の利益が増えて金利が上昇するような好景気になるなら株式投資がいいし、企業の利益が増えずに金利が下落するような不景気なら債券投資がいいし、そのどちらであるかが分からないのなら、両方に分散投資するのがいいという考え方もある。
株式と債券の両方に分散投資する伝統的なアセットアロケーションは、3番目の考え方に基づくものだ。
「相場の判断による」から「△」が正解なのか、その上で「相場の判断が難しいから」分散投資が望ましいので「×」が正解になるのかの判断は難しい。
問題(2)の考え方から判断すると(×)が正しいような気持ちにもなる。しかし、金利がゼロからは大きく下がらないだろうという「ゼロ金利制約」を前提とする場合には、債券は(特に長期の固定利付債は)リターンが低いのに、金利上昇による値下がりのリスクばかりがあるので今は投資しない方がいいと答えがハッキリ定まるので答えは「○」であり、株式に投資するのがいいという場合もあり得る。
「市場に対する判断による」という問題の場合、「市場について判断できない場合はどうするべきか」が次の問題設定になって答えが決まる場合があるのだが、例外的に、市場について、確実ではないとしても、いくらかは判断できると思える状況があり得る。
答えを1つに決めるなら「△」が正解なのだろうが、「△」が条件の変化によって「○」になったり「×」になったりする場合があるのが、投資の難しさで、同時に面白さでもある。

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