初心者投資家が「やってはいけない投資!」を理解するための7原則

2021/05/11

##初心者で幸い

今回は、トウシルの「超・少額投資のススメ」特集に向けて、正しい投資行動の判断原則について書く。
さて、読者が真に「初心者」であるなら、それは幸いなことだ。なぜなら、誤った先入観をまだ持っていないからだ。やるべきことは、素直な心で基本原則を理解して、自分で判断し、行動することだけでいい。
投資の世界ではお金の損得が絡むし、結果には不確実性が伴う。お金は、もともと感情をざわつかせる媒体だし、人間は不確実性が伴う意思決定で間違えやすい生き物だ。(A)自分の選択への過信(「オーバーコンフィデンス」)、(B)意思決定の他人への依存(「後悔回避」から来る)、(C)勝ち負け(損得)への過剰なこだわり(「プロスペクト理論」の前提の一部だ)など、間違えやすい傾向と理由は行動経済学でも研究されている。
加えて、投資の世界には、一見正しそうに思える誤解が数多く存在する。専門家を名乗る人の本を読む際にも、油断はできない(本稿の内容にも油断しないで下さい!)。誤りの原因は、著者の単純な理解不足(案外少なくない)であることもあるし、投資に絡むビジネスの都合が反映している場合もある。
本稿では、最初から「やってはいけない投資!」のあれこれを列挙するのではなくて、投資にあって何が「正しいか」、「やってはいけないか」を理解するための「原則」をご説明する。以下の原則に照らして物事を判断して頂くと、何が「やってはいけない!」ことで、その理由がなぜなのかが分かるようになると思う。受験勉強に喩えると、問題集ではなくて基本書的な参考書の役割を目指す。
一般に、「魚を与えるよりも、魚の釣り方を教えることこそが真の親切だ」と言われる。筆者もその通りだと思う。以下の原則は、これで釣果が保証されるようなノウハウではないが、安全且つ効率的に魚釣りを楽しむための心構えだと思って欲しい。

【投資判断で重要な7原則】

  1. 損得計算に基づいて「自分で」決める。相手がプロでも「任せる」のは絶対にダメだ。
  2. 同類の投資対象にあっては実質的な手数料がより高いものを避ける。実質的な手数料が「分からない場合」のものも無条件に避ける。
  3. 自分に商品を売ることで利益を得る可能性がある相手のアドバイスを聞かない。
  4. 銘柄選択・投資のタイミングに関して、平均的他人に勝る判断力は自分にもプロにも無いことを前提として物事を考える。
  5. 「投資」と「投機」とを区別する。資産形成に有利なのは投資の方だ。
  6. 税制上有利な「お金の置き場所」を有効に利用する。
  7. 投資の3原則(長期投資・分散投資・低コスト)から判断する。

以下、それぞれの項目を説明する。

  1. 損得計算に基づいて「自分で」決める。相手がプロでも「任せる」のは絶対にダメだ。

投資に限らず、経済的な意思決定は「自分で納得して」行うのが大原則だ。投資にあっては動かす金額と損得への影響が大きいし、運用ビジネス側(運用会社、販売金融機関、アドバイザーなど)は顧客からより多くの利益を獲得するチャンスを狙っている。投資家と運用ビジネスとは利害が一致していない。「プロを信じる」アプローチは有効に機能しない。
その代わり、自分で損得勘定が納得できない運用商品・案件は「全て」見送って構わない。「いいかもしれない商品やチャンス」を知らなくても、自分の損になる可能性は極めて小さいからだ。「うまそうな話」が本当の儲け話である現実的可能性は限りなくゼロに近いので、安心して欲しい。
「マーケット」にあっては、例えば株式市場なら、「いい会社には高い株価が付き、ダメな会社は安い株価になる」ような、力学が強く働いている。どの銘柄に投資することがより儲かるのかを判断することは至難の業だ。従って、確実に儲かる「見送ると、もったいない」チャンスなど殆ど存在しないのが現実なのだ。
加えて、万が一特別なチャンスが存在しても、ビジネスを行う側が、それを自分で利用せずにあなたに教えることなどあるはずがないではないか。
投資は、自分で考えて納得できること「だけ」で判断するといい。投資の世界では、自分に分からないことで儲けようとするのは、チャンスよりも、危険の方が大きい。
因みに、筆者は「世の中で最低の運用商品・サービスは何ですか?」と訊かれた場合に、間髪入れずに「ラップです」と答える。
対面営業の証券会社のラップは、サービス自体の手数料が高いし、運用の内容にも投信を組み入れる「ファンド・ラップ」なので運用管理費用の高いファンドが組み入れられる傾向があるなど、顧客にとって極めて「儲かりにくい」サービスだ。
また、運用の内容を他人に委ねること自体が心構えとしてとして極めて不適切だ。

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  1. 同類の投資対象にあっては実質的な手数料がより高いものを避ける。実質的な手数料が「分からない場合」のものも無条件に避ける。

株式市場をはじめとする資本市場、いわゆる「マーケット」はよくできた仕組みだ。誰かが、コンスタントに他人よりも儲け続けることは極めて難しい。
投資信託をはじめとする運用商品は、「マーケット」から株式、債券、外国為替、といった素材を調達してパッケージングし、手数料を取って投資家に提供している。
たとえば「日本株の投資信託」といった中身が似た商品にあっては、「無条件のマイナスリターン」である手数料がより大きな商品が、手数料の小さな商品に勝る確率は小さいと判断することが妥当だ。
金融機関や運用会社は説明したがらないが、手数料の差が投資家の得る期待リターンに及ぼす影響は極めて大きい。商品間の「優劣」は手数料差で決定できるものが殆どだ。
例えば、運用管理費用(信託報酬)が年率1%の投信と0.2%の投信が共に日本株に投資する投信であった場合に、前者に投資する方が意思決定として正しい可能性はほぼ無いと考えていい。「手数料は高いけれども、運用が上手い投信」を見つけることができる人はプロにもいない。ギャンブルにあっての「テラ銭」(胴元=主催者の取り分)と全く同じくらい、投資にあって手数料は重要なのだ。
投信は幸い手数料が開示されているが、生命保険や仕組み債のように投資家に対して実質的な手数料をオープンにしていない運用商品に対してはどうしたらいいのか。
「実質的な手数料が分からない」ということの意味は、「リスクとリターン」のリターンに関して正確な情報を持っていないということだ。本来、期待リターンが分からないものを買えるはずがない。実質的な手数料が自分で正確に分からない運用商品は「全て」購入を見送って構わない。

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  1. 自分に商品を売ることで利益を得る可能性がある相手のアドバイスを聞かない。

銀行・証券会社・生命保険会社など業態を問わず、対面の窓口に資産運用について「相談」に行くのは止めた方がいい。仮に「無料相談」と謳っていても、先方は相談に応じた時間と手間のコストを、商品販売の利益が上回るのでないとビジネスが成立しない立場だ。近づかない方がいい。
それでも、誰かに相談したい場合は、例えばFP(ファイナンシャル・プランナー)のような相手があり得るが、FPでも生命保険を紹介した場合に保険会社から報酬(保険料の数カ月分であることが多く、かなり大きい)を受け取るような仕組みを持っている場合が少なくなくて、実質的に保険のセールスマンと変わらない利害を持っている場合がある。
「あなたに商品を売ることで利益を得る可能性がある人に、運用を相談しない方がいい」というのが大原則だ。
FPに相談する場合は、生命保険などの商品販売に一切関わっていない人を選び、相談料をきちんと払う方がいい。正しいアドバイスの価値は相談料の何倍にもなることが珍しくない。他方、生命保険の実質的な手数料は逆に相談料の何倍もの損になることがある。

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  1. 銘柄選択・投資のタイミングに関して、平均的他人に勝る判断力は自分にもプロにも無いことを前提として物事を考える。

どの商品(たとえば株式の銘柄や投資信託)に投資したらいいのか、或いは、今は投資に適したタイミングなのか。何れも、投資家が強い関心を持つテーマだが、プロも含めて、これらについて確実に「平均的他人」以上に正しい答えを返すことができる人はいないのが現実だ。
相場の動向や銘柄選択について意見を持つことは誰でもできる。意見を上手に言うことはプロならできる。そして、確信があるかのごとくに意見を言うことは練達のプロならできる。しかし、何れの意見にも投資リターンの改善のためには意味は無い。聞くだけ無駄なのだ。
「市場平均よりも儲かる株式の銘柄」とか「同類の他のファンドよりも良いアクティブ・ファンド」を選ぶことができるかのように振る舞う人は、プロ・アマを問わず「怪しい」と思うべきだ。
一方、少し考えてみると分かるように、例えば手数料の高いアクティブ・ファンドを買って欲しいと願う金融機関のセールスマンは、相対的に良いアクティブ・ファンドが自分たちに判別可能であるかのように語る「職業的嘘つき」になる必要がある。自分で効果的な嘘を思いつかない場合は、投信評価会社のファンド・レーティングのような既製品の「嘘の材料」を使うこともある。こうした人たちには、目くじらを立てて怒るよりは、彼らのビジネス上の立場を理解して、「お勧め」を無視したらいいし、彼らから遠ざかるともっといい。
タイミングについても同様だ。たとえば、プロの世界では、はっきり言って、チャート分析には将来の予測力が全く認められていない。つまり、売買のタイミングの判断には全く無駄なのだから、チャート分析には凝らない方がいい。
また、詳しくは別の機会に譲るが、エコノミストの経済予測を元に投資戦略を考えることも絶望的なくらい上手く行かない。例えば、運用会社が、経済見通しから投資戦略を語るのは、「そうすると様になるから」というビジネス上の理由に過ぎない。

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  1. 「投資」と「投機」とを区別する。資産形成に有利なのは投資の方だ。

一般に「ハイリスク・ハイリターンの原則」と呼ばれるのは、リスクが大きな資産は平均的なリターンが大きくなるよう市場で価格が形成されるということなのだが、この対象になるのは、株式や債券、不動産への投資のように、生産活動にお金(≒資本)を提供する際の価格だ。
他方、FX(外国為替証拠金取引)や商品相場、暗号資産の価格などのように、市場で売り手と買い手が「ゼロサム・ゲーム的」に将来の価格を当てる競争をする構造のマーケットでは、「ハイリスク・ハイリターンの原則」は働かない。商品先物の説明などで、「商品先物はハイリスク・ハイリターンです」といった表現を見ることがあるが、適切ではない。レバレッジが掛かると損益の振れ幅が大きくて確かにハイリスクではあるが、「相場が当たった場合のリターンが大きいこと」だけでは、「ハイリスク・ハイリターンの原則」に該当しない。「ハイリスク・ハイリターンの原則」が当てはまるためには「平均的なリターンが大きくなる」ことが期待できなければならない。
筆者は、生産活動に資金を投じて「ハイリスク・ハイリターンの原則」が働くように資産価格が形成されると期待できる行為を「投資」、ゼロサム・ゲーム的な構造になっていて、資金を生産活動に投じるわけではなく、リスクがあっても平均的なリターンが高まるわけではない行為を「投機」として区別することにしている。
投機も正当な経済活動であり、リスクヘッジなどの役に立ってもいるので、経済倫理的に「悪い」とは微塵も思わないが、投機のリスクを取ることは、長期的な資産形成には有利ではない。有利なのは、リスク・プレミアム(リスクテイクを補償する追加的なリターンのこと)が期待できる投資のリスクの方だ。
この区分では、投資に分類されるのは、株式、債券、不動産などで、投機にはFX、外債投資や外貨建て保険の為替リスク、商品相場、暗号資産などが該当する。

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  1. 税制上有利な「お金の置き場所」を有効に利用する。

2.で述べたように、コストはリターンの足を引っ張るものなので、できるだけ低く抑えたい。例えば、売買コストの節約のために、運用対象商品の入れ替えはできるだけ少なく抑えたい。
運用における税金は、収益が発生したときに取られるが、これもコストの一種であり、なるべく低く抑えたい事情は同様だ。
税金を抑える手段としては、例えば、確定拠出年金(企業型の確定拠出年金が利用できる場合もあるし、iDeCo[イデコ:個人型確定拠出年金]もある)やNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)、つみたてNISAのような、運用益に対して非課税になる「お金(=金融資産)の置き場所」はできるだけ有効に利用したい。
企業型確定拠出年金やiDeCoは運用期間中の運用益非課税に加えて、掛金が所得控除される大きなメリットがあるので、課税される所得がある人はなるべく大きく使いたい。一方、原則として60歳迄引き出せない点がデメリットだ。
NISA、つみたてNISAも適宜利用したい制度だ。こちらは、途中換金が可能だが、換金すると再投資を非課税の枠内で行うことができないので、注意が必要だ。スイッチングが可能な確定拠出年金よりも「将来入れ替えたくなる可能性が小さい資産」を選ぶことが重要になる。一般NISAでは個別株投資が可能だが、近い将来売りたくなる可能性がインデックス・ファンドよりも大きいので、多くの場合投資対象として不適切だ。
確定拠出年金や各種NISAでは、運用益が非課税であることを有効に利用し、且つ余計な手数料を支払わない運用対象選択が重要だ。
端的に言って、外国株式(先進国株式又は全世界株式の日本除き)と国内株式のインデックス・ファンドで手数料が低廉なもの以外に合理的な選択肢がない場合が殆どだ。
アクティブ・ファンド、バランスファンド(ターゲットイヤー型を含む)、預金や生命保険などの元本確保型商品、などは何れの器にあっても不適切だ。

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  1. 投資の3原則(長期投資・分散投資・低コスト)から判断する。

自分の投資の意思決定について迷った場合、「長期投資」、「分散投資」、「低コスト」の3原則から可否を判断するといい。
投資は資金を経済活動に参加させてリターンの獲得を目指す行為だが、長い時間「参加」させなければ、大きなリターンが望みにくい。加えて、現在の税制では、売却益を出すと課税されるので、「売り買いせずにじっと持つ」という意味の長期投資も長期的なリターン獲得の上で重要だ。
また、分散投資は、投資家自身の努力(あるいは選択)でできるリスク削減行動なので、こちらも重要だ。詳しい説明は別の機会に譲るが、株式投資で言うと、少数の個別銘柄への投資と、銘柄数の多いインデックス・ファンドへの投資は、金融論的に見て価値が「大差」で後者が勝る。
尚、分散投資にあっては、投資対象の中身が実質的に分散されていることが大事であり、例えば、似たような投資対象の投資信託の「商品」の数を分散することには殆ど価値がない。
低コストの重要性は、2.で強調した通りだ。
長期で資産を持ちきるためにはリスクを抑えた分散投資が必要だし、長期で持ちきると売買のコストを抑えることができる、といった理由で、これらの3原則は相互に補完的に関係している。

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##「やってはいけない投資!」の練習問題
参考書には、重要事項の説明に続いて、理解を確認し、知識を定着させるための、練習問題が付いていることが多い。参考書を目指す記事の筆者としては、練習問題を載せておくのが適切だろう。以下の問題にトライしてみて欲しい。

【「やってはいけない投資!」練習問題】

以下の各項目が、投資にあって「やってはいけない!」行動である理由を説明せよ。
(1)退職金が振り込まれた銀行に資産運用の相談に行ってみた。
(2)投信評価会社から表彰されたアクティブ・ファンドに投資した。
(3)会社の確定拠出年金の運用で内外の株式と債券とを組み合わせている。
(4)外貨建ての生命保険で資産形成を目指している。
(5)証券会社のセールスマンに勧められて魅力的と思える利回りの社債を買った。
(6)つみたてNISAでアクティブ・ファンドに投資している。
(7)コンピューターの自動売買プログラムに従って日経平均先物を取引している。
(8)ライフプランの相談で会ったFPが勧めてくれた年金保険を契約した。
(9)会社の確定拠出年金の資産は全て定期預金に置いている。
(10)米国のS&P500に連動するインデックス・ファンドだけで資産を運用している。
(11)老後に備えて資産の一部をビットコインに投資している。
(12)米国で流行しているゴールベース・アプローチでコンサルティングしてくれる証券マンを通じてファンド・ラップを契約した。
(13)運用資産の約3割をロボアドバイザーで運用している。
(14)ESGをテーマとする投資信託を購入した。
(15)親友が信頼している証券マンに資産運用の相談に乗って貰おうと思っている。
(16)一方を売り、一方を買う形で、3カ月に一度、内外の株式インデックスに連動するETF(上場投資信託)のリバランスを行っている。
(17)4資産(内外の株式・債券)に均等に投資するインデックス・ファンドを購入した。
(18)ファンドのレーティングを参考に投資信託を選んでいる。
(19)TOPIX(東証株価指数)連動のETFを売って、日経平均連動のETFを買った。
(20)リスク分散のために複数のアクティブ・ファンドを持っている。
(21)株式も投信も「3割上がったら利食い売り、1割下がったら損切り」と決めている。
(22)売買チャンスの見極めにボリンジャー・バンドを参考にしている。
(23)運用の初心者にはバランスファンドへの投資を勧めている。
(24)老後の資金作りのためにFXにチャレンジしている。
(25)友人が契約しているファンド・ラップの組み入れと同じ投信に投資している。

 

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