年末年始でじっくり考えたい、山崎元からの5つの宿題

2019/12/17

 

●山崎元からの、5つの宿題
●宿題1のヒントとよもやま話
●宿題2のヒントとよもやま話
●宿題3のヒントとよもやま話
●宿題4のヒントとよもやま話
●宿題5のヒントとよもやま話

「トウシル」編集部の担当者から、「山崎さん、年末年始に向けて、読者に宿題を出してみる企画はいかがでしょうか」と提案があった。読者に「宿題」とは、何とも恐れ多い感じがするし、何よりもイメージが湧かない。数年前まである大学で特任教授という肩書きで先生をしていたが、「楽勝科目のセンセイ」だったので、学生に宿題を出したことがない。

 あれこれ、考えた結果、自分が投資家に伝えたいテーマに関連する宿題を5つほど出題して、回答を募集することにした。

編集部の回答募集要領に従って、好きな宿題を選んで(複数回答可)、答えを送ってみて欲しい。採点して点数を付けようとするものではないが、秀逸な回答は、来年の解答編の記事でご紹介したい。回答にはハンドルネーム(本名も可)を記していただけるとありがたい。

では、さっそく、出題だ。

山崎元からの、5つの宿題

1.「サンクコスト」という言葉を使って気のきいた文を作ってください。

2.実際にどうなのかは分かりませんが「現在、日本株の方が米国株よりも良い投資対象である」という仮説を正当化できる理屈を立ててください。

3.出題者は仕組み債券と外貨建ての貯蓄性生命保険は、同じ理由でどちらも買わない方がいいと思っています。なぜでしょうか? 理由を推測して述べてみてください。

4.毎月分配型の投資信託は良い商品ではないのに、よく売れました。理由を行動経済学的に説明してください。

5.運用資金を2,000万円持っている退職者が一般NISA(投資上限枠年間120万円、非課税期間5年)の口座を開きました。この人は、1,000万円程度までリスク資産を持ってもいいと考えています。さて、新しく開いたNISA口座で、どのように投資するのがベストか理由付きで答えてください。

※次ページ以下の、【宿題のヒントとよもやま話】を読んで、アンケートページからご回答ください※

 

宿題1のヒントとよもやま話

宿題1.「サンクコスト」という言葉を使って気のきいた文を作ってください。

サンクコスト
日常語としてはあまりポピュラーではない言葉かも知れない。筆者の手元にある普通サイズの国語辞典には載っておらず、「広辞苑」に、次のような解説が載っていた。

サンクコスト【sunk cost】

(1)[経]事業に投下した資金のうち、事業の撤退または縮小によって回収できない費用。(2)ある問題について複数の解決策が提案されたとして、どの解決策を採用しても金額が変化しない原価。無関連原価。埋没原価。埋没費用。(「広辞苑」第七版1212ページより)

率直に言って不必要に難解な説明だが、要は、これから取り戻すことのできない費用や損のことだ。経済的な意思決定にあっては、「決定によってこれから生じるであろう損得のみ」を考えてどうするかを選択することが正しいとされる。

例えば、1,000円で買った株が800円に値下がりしたとしよう。この株式をどうするかについて考える際に、「1,000円で買った」という事実は無関係だと思うべきなのだが、これは心理的にはなかなか難しい。

「そうだ。200円の損はサンクコストなのだ。自分の買い値は忘れて、現在800円のこの株をどうするのがいいか…」と意識的に考えるようになるといいのだが、なかなか難しい。新聞などで、たまに見かける株式投資などの相談にも、「○○工業の株式を取得価格×××円で△千株持っています。今後の処置は?」といった問い合わせが載っていることがある。

投資家として大事なことは「サンクコストの意識的な無視」なのだが、さて、それが難しいというあたりも含めて、気の利いた文を作ってみて欲しい。100字以内としたが、例えば川柳(17文字)でもいい。

こうして考えてみると、有名なサラリーマン川柳のように、「投資川柳」を募集するのが面白かったような気がしてきた。来年の年末は、これで行こうか。

宿題2のヒントとよもやま話

宿題2.実際にどうなのかは分かりませんが「現在、日本株の方が米国株よりも良い投資対象である」という仮説を正当化できる理屈を立ててください。

日本株の魅力

経済の低成長、人口減少、ROE(自己資本利益率)の低さ、コーポレートガバナンスの問題など、日本企業の株式に投資することに対してはネガティブな要素が少なくない。

しかし、投資対象として、日本株にもポジティブな面もあるのではないかと探してみよう、というのが出題意図だ。

「どう考えても、ポジティブな面がない」ということなら、日本株への投資を見送ってもいいではないか。この際良く考えてみて欲しい。

しかし、本当に「どう考えても、ポジティブな面がない」ということなら、それはむしろ大チャンスではないかという気がするのだが、いかがなものだろうか?

 

宿題3のヒントとよもやま話

宿題3.出題者は仕組み債券と外貨建ての貯蓄性生命保険は、同じ理由でどちらも買わない方がいいと思っています。なぜでしょうか? 理由を推測して述べてみてください。

外貨建て生命保険

金融機関の店頭で熱心に売られている商品として、貯蓄性の外貨建て保険がある。筆者は、買わない方がいいと心底から思うが、売る方も必死なので、購入者が少なくない。しかし、買うにせよ、買わないにせよ、商品はなかなか複雑だ。

複雑な商品と言えば、デリバティブを組み込んだ仕組み債券を思い出す。こちらも、買わない方がいい商品だと自信を持って申し上げる。

本問では、どちらも避けることができる共通の理由を考えてみて欲しい。

それにしても、外貨建ての保険を買って後悔している人が少なくない。読者自身だけでなく、例えば読者の親御さんのような方のお金についても気をつけてあげて欲しい。

本問には、参考図書を挙げておこう。朝日新聞で生命保険業界を取材している柴田秀並氏が書いた「生命保険の不都合な真実」(光文社新書。2019年11月20日刊)は、冬休みにぜひ読んでおくといい。お勧めする。

 

宿題4のヒントとよもやま話

宿題4.毎月分配型の投資信託は良い商品ではないのに、よく売れました。理由を行動経済学的に説明してください。

毎月分配型の行動経済学

「毎月分配型投資信託が、なぜダメで、しかしどうして売れるのか、説明せよ」という趣旨の問題は、筆者が大学で「金融資産運用論」を教えていた時の試験問題の定番だった。

「なぜダメか」を一般人が広く理解するようになるためには、中学あるいは高校の数学の問題として、お金の損得計算が出題されるようになるといいと筆者は考えている。入試問題で計算問題を解いた経験があれば、「分配金に釣られる」ことの愚かさを実感できる人が増えるのではないか。

一方、ダメな商品なのに現実に売れているのはなぜかを説明するのは、経済学にとっても考える価値のあるテーマだ。現実問題としては、「セールスマンが一所懸命に売るから」という理由が最大だろうが、それだけではない。

なお、行動経済学の基礎については、大竹文雄「行動経済学の使い方」(岩波新書)の第一章に40ページ強にまとまったコンパクトな説明がある。

 

宿題5のヒントとよもやま話

宿題5.運用資金を2,000万円持っている退職者が一般NISA(投資上限枠年間120万円、非課税期間5年)の口座を開きました。この人は、1,000万円程度までリスク資産を持ってもいいと考えています。さて、新しく開いたNISA口座で、どのように投資するのがベストか理由付きで答えてください。

NISAの行方

「つみたてNISAは延長されるらしいが、一般NISA(少額投資非課税制度)はどうなるのか?」は、投資家も証券業界も関心を寄せて気を揉んでいたテーマだ。

どうやら、新しい制度に変更されて継続するらしい方向性が見えてきた。まだ与党の税制改正の要望にリストアップされた段階ではあるが、近いうちに、新制度案の評価や制度が変わった場合の使い方などについて書いてみたい。

出題は、現在の一般NISAのベストな使い方だが、幾つかの条件から答えは論理的に決まる。新しいNISAにも応用が利く考え方のはずだ。

 

どの宿題でも結構なので、ぜひ、回答を寄せてください。年明けの原稿でこれらの宿題の解説を公開します。お待ちしています。

最後になりましたが、今年一年の本欄のご愛読に感謝します。来年も引き続きよろしくお願い致します。

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