簡単・少手間・合理的!「ほったらかし投資術」2019年最新版 

2019/05/21

1無題

生き残った?「ほったらかし投資」
・投資方法には変化なし
・「ほったらかし投資術」の定義と手順

・併せて読みたい!「ほったらかし投資」に関する動画・書籍

10年目の「ほったらかし投資術」

生き残った?「ほったらかし投資」

近年、「ほったらかし投資(術)」について解説して欲しいという取材依頼が多い。「ほったらかし投資」とタイトルに冠したムック本なども作った。直接この単語をタイトルにしないまでも、雑誌などのお金の特集の運用部分について、「『ほったらかし投資術』で説明していたような投資法を分かりやすく教えて欲しい」といった依頼が来ることもある。

商標登録しているわけでもないし、自分達がオリジナルであることを主張したいわけでもないのだが、「ほったらかし投資術」という言葉の出所は、投資ブログ梅屋敷商店街のランダムウォーカーの管理人水瀨ケンイチ氏と筆者が共著で書いたほったらかし投資術(朝日新書)という新書本の書名に由来するように思う。近年、共著者の水瀨氏も単著でお金は寝かせて増やしなさい(フォレスト出版) といった投資の本を書かれているし、「ほったらかし投資」に関する取材を受けることがあるようだ。

久しぶりに「ほったらかし投資術」の本を手に取ってみたら、出版年月が2010年12月とあり、今年は2019年なので、まだ「10年目」と言い切るには気が早いが、この本を執筆していた時期から早くも10年目に近づいていることに気がついた。

ちなみに「ほったらかし投資術」という書名の名付け親は、この本の担当編集者だった友澤和子氏だが、当時、筆者はこの書名にあまり賛成ではなかったことを白状しておこう。記憶をたどると、もう少し堅い印象の書名がいいと思っていたようなのだが、振り返ってみて改めて自分のタイトル・センスの乏しさに気づかざるを得ない。

パラパラと読み返して見ると、内容は意外なくらい「堅い」し「詳しい」。インデックス投資に詳しい投資家の期待に応えようとして書いたことが思い出されるのだが、この内容で堅いタイトルを付けたら、この本はあまり売れなかったのではないか。

投資方法には変化なし

さて、2010年に出版された「ほったらかし投資術」は、5年後の2015年にほったらかし投資術全面改訂 インデックス運用実践ガイド(朝日新書)として改訂版が出ている。また、昨年の8月には、別の出版社から山崎元のほったらかし投資(TJMOOK 宝島社)というムック本が出版されている。

これらの書籍で「こうやるといい」と紹介している投資方法は、後になるほど単純化されているが、基本的に同じだ。

まず、生活に必要な資金を別に確保した後に運用できるお金について、リスクを取ってもいいと思う金額を内外のインデックス・ファンドに投資し、リスクなしで運用したいと思う金額については個人向け国債変動金利型10年満期を中心に運用する。いずれの書籍もそうなっている。著者としての欲目があるかもしれないが、最初の書籍を買って投資を始めた人も、内容を理解してくれていれば、その後の運用には何の支障もなかったはずだ。

なお、2010年の書籍を読んで投資を始めた方は、まずまずの運用結果を得たのではないかと思うが、これは書籍の内容や著者が優れているのではなく、主としてマーケットが良かったからだ。

もっとも、こうした良い市場環境の下で投資していても、金融機関の言いなりに売買を繰り返していたような方の場合、運用結果が良くなかった可能性が大いにあるので、「多少は、お役に立てたのではないでしょうか」というくらいのことを読者に(控えめに)言ってもいいかもしれない。

「全面改訂版」を出した大きな理由が2つある。1つには2014年からNISA(少額投資非課税制度)が始まったのでこれへの対応を追記したかったことと、もう1つにはインデックス・ファンドの商品性が改善し、特に手数料の引き下げが進んだ事で、商品ガイドに改定の必要性を感じたことだったと記憶している。もちろん、せっかく改訂版を出すので、新たにETF(上場型投資信託)について詳しく紹介しよう、といった新しい内容の追加もあったし、水瀬氏、筆者それぞれにその間に投資の説明方法として「こうした方が分かりやすいのではないか」と思う工夫を盛り込んだということもあった。

その後、現在までの外的環境の変化を見ると、iDeCo(個人型確定拠出年金)の対象者拡大やつみたてNISAの創設など、制度面での投資の後押しが一段と進み、特につみたてNISAの影響で、インデックス・ファンドの手数料率引き下げ競争がさらに進んだ。端的に言って、「ほったらかし投資」の利用者にとっての環境は一段と改善したと言えるだろう。

ただし、手前味噌ながら、最初の「ほったらかし投資術」には、投資の考え方とポートフォリオの作り方、投資商品の選び方、インデックス・ファンドに関する注意点など(例えば東証一部の定義変更が行われた場合、TOPIXの何に注意が必要か)、必要な要素は網羅されていたように思う。

とはいえ、主なるユーザーと想定される投資初心者には、後の本になるほど読みやすいはずだ。

「ほったらかし投資術」の定義と手順

現在の「ほったらかし投資術」についてまとめておこう。

まず、「ほったらかし投資」の定義だが、

(1)誰でもできるくらい簡単で、 (2)かけるべき手間がごく少なく、同時に (3)合理的でもある投資方法

のことを指す言葉だと考えたい。もっと短くまとめると、「簡単・少手間・合理的」な投資だ。

具体的な手順は、以下の通りだ。

【手順1】生活に必要な資金を別途確保する

借金をするような事態には至らないですむような金額を確保する。置き場所は銀行の普通預金でいい。

この金額は、筆者の説では生活費数カ月分(例えば3カ月分)で、水瀬氏の説だと2年分くらいであり、この点は、当初から今日に至るまで二人の意見に少々差がある。筆者は投信なら数日で換金できるので、必要があれば部分的な解約を躊躇しない事を前提に、例えば三カ月分くらいお金を普通預金に置いておくといいのではないかと考えているが、水瀬氏は安心できる「生活防衛資金」を別途確保することの精神安定効果を重視されているようだ。

【手順2】上記以外の運用資金の中で、リスクを取ってもいいと思う金額を内外のインデックス・ファンドに投資する

それ以外のリスクを取りたくない資産は個人向け国債変動金利型10年満期を中心に運用する。

「一年後に、最悪3分の1損する一方、最悪と同じくらいの確率で4割くらい利益が出る事があり、平均的には5%くらいの利回りを得る事ができる資産」(=リスク資産)に幾ら投資するかを決定し、これを内外の株式のインデックス・ファンドに投資する。

運用資産に於ける「比率(%)」ではなく、リスクを取る「金額」を決める点が急所だが、これを自分で決めてしまえば、後は簡単だ。一方、この決定は他人には難しい。

例えば毎月の積立投資を行う場合は、前月の最適リスク投資額と今月の最適リスク投資額が毎月の積立金額だけ異なるのだと理解するといい。

インデックス・ファンドの内訳は、「外国株式(先進国中心)」を6割、「国内株式(TOPIX連動型)」を4割の配分を筆者は勧める事が多いが(注:年金運用などの機関投資家が平均的に使うリスク・リターンの前提に基づく)、近年日本株と外国株・外国為替の連動性が強まっているので、「全世界株式」1本でもいいのではないかとも思いつつある。

変動金利型で10年満期の個人向け国債は、2010年当時から信用リスクが小さく長期金利上昇(=長期国債暴落)に強い、無難でありつつ相対的に優れた商品だったが、その後長短の金利がほぼゼロに貼りついて、ますます優秀な選択肢であり続けている。推奨する運用方法を変えずに済むのは利難い事だが、デフレからの脱却が遅れているのは経済の状況として困った事だ。

【手順3】リスク資産について、企業型確定拠出年金、iDeCo、一般NISA、つみたてNISAなど税制上有利に運用できる制度を極力大きく利用し、こうした口座に、自分の投資全体の中からリスク資産部分を集中する。

有利な制度をできるだけ大きく使う事と、複数の口座全体を最適な状態に保ちつつ個々の口座に適切な運用商品を割り振ることがポイントだ。個々の口座は「全体の運用の中の一部」だ。

【手順4】リスク資産内の配分は追加投資・部分解約の際に緩く調節する。 

「外国株:国内株=6:4」といった比率を、厳密に管理する必要はない。バランスが大きく狂ったら、追加投資や部分解約のついでに、バランスを修正する方向に金額を調整するといい。「ほったらかし」の看板とは矛盾する「調節の手間」であるが、必要なケースはあまりない。

投資法としての手順は上記の通りだが、以下に「ほったらかし投資術」の「注意点」と「奥義」を補足しておこう。

【補足1】自分の買値・現在の値段に拘らずに追加投資・部分解約を行う。

お金の運用は、将来お金を使うために行っているものだ。お金が必要な時に必要なだけ、自分の買値よりも儲かっているか損をしているかに一切拘らずに淡々と資産を部分解約して必要にあてることが重要だ。

【補足2】金融マンや商品を売るお金の専門家のように人に、「自分をほったらかして貰えるようにする」ことこそが「ほったらかし投資術」の「奥義!」だ。

現実のお金の運用には、株価・為替レートなどの変動による「市場のリスク」と、人間(主に金融マンや悪質なお金の専門家)から意思決定が悪影響を受ける「人間のリスク」との2つのリスクがある。「ほったらかし投資術」を完成させる事の最大のメリットは、人間のリスクを避ける事ができる点にある。

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