閉塞感極まる株式市場

2016/09/30

いよいよ2016年度の上期も終了し、10月からは下期入り。日銀による官製相場の様相がますます強まる中、なかなか投資成果が上がらない状況にやきもきしている投資家が増えていると思う。さて、遅くなったが8月のポートフォリオの状況ならびに近況について記したい。

8月のマーケットは米国の小幅安に対して日本は続伸の展開に。

米国市場は7か月ぶりに下落。7月の雇用統計が+25.5万人と予想の+18万人を上回り、NYダウ、S&P、ナスダックともに過去最高値を更新。FOMC議事録を受けて利上げペースが緩やかになるとの観測が広がる。一方、4-6月のGDPが年率+1.2%となり予想の+2.6%を大幅に下回り、1-3月GDPも下方修正。原油先物価格が3か月ぶりに一時40ドルを割り込む。8月のNYダウは18400ドルと前月より31ドル下落し月間騰落率は-0.2%。ナスダックは5213となり51ポイント上昇の+1.0%となった。

東京市場は続伸。米国GDPの不振や欧州銀行不安で為替は一時99円台後半まで円高に。日経平均は一時16000円割れまで下落。だが、従来の2倍に増額された日銀のETF買いが下支え感を演出し下値不安が後退。米雇用統計が2か月連続で好調であったことが追い風に。市場参加者がきわめて少なく売買代金は2兆円を下回る日が続出。為替は月末比較では40銭の円高となる103.20円で着地。8月の日経平均は16887円で取引を終え、7月末の16569円から318円上昇し月間騰落率は+1.9%、Topixは+0.5%となった。一方、小型株市場はジャスダック平均が-0.1%、マザーズ指数は-1.8%となった。

太田忠投資評価研究所のインターネットによる個人投資家向け「投資実践コース」 における8月のパフォーマンスは-1.0%となり、年初来-7.4%、累計では+134.4%(7月末+138.5%)と後退。8月末時点のポートフォリオの株式比率は47%で13銘柄を保有(7月末は47%で13銘柄を保有)。株式部分の含み益は+6.8%(7月末は+10.8%)。ただし、47%のうちダブルインバースETFの投資比率20%の実質ロング比率は-40%、純金ETFの10%は株式ではないため、純粋の株式のロングウェートは47%ではなく-33%である。7月末からのショートポジションは変化なし。

8月のマーケットは非常に複雑な動きが見られた。米国市場は上昇力が乏しくなっている点で暗雲が立ち込め、日本市場は為替動向と日銀ETF買いの思惑に翻弄される形となり相場の方向感が曖昧に。為替は99円台にまで上昇したものの、株式市場は日銀のETF買い期待で一気には下げない株価形成が見られた。ただし、購入金額を倍増したETF買いのアナウンスメント効果が徐々に薄れて、需給だけに期待するのは危険な兆候も出てきた。さらに、これまで一貫して「内需買い・外需売り」の構図だった株式市場が「内需売り・外需買い」へと転換し、継続して売られていた金融株も急速に上昇するという変化を見せた。8月末に103円の水準まで円安に戻した為替だが本格的な円安トレンドが始まったと判断するのは時期尚早である。

9月は日米の金融政策がほぼ同時に発表され、非常にボラティリティの大きいマーケットとなった。まず、日銀の「長短金利操作付き金融緩和」であるが、実質的な追加的金融緩和ではなく、これまでのマイナス金利政策で長期・超長期金利が大きく落ち込んでいた点を是正するイールドカーブ・コントロールである。年間80兆円という国債購入額は変更せず、長期・超長期国債の国債買い入れを控えて、長期国債の利回り0%をターゲットとする政策である。ひとまず株式市場はポジティブに反応したものの、そもそも中央銀行が長期金利をコントロールした例は大昔の米国を除いてなく、今後の動向が注目される。物価上昇率2%を達成する期限は取り払われたため、量的緩和は2年後にも枯渇する可能性がある。その点で今回の新たな政策は長期的には副作用が強い。

米国の9月の金利据え置きは想定通りであり、次の利上げは年内か年明けに持ち越されたため、ドル売り・円買いのメカニズムはまだ当面続くだろう。

「9月はダウンサイドリスクが高い」と述べていたが、ややリスクは緩和されつつある。だが、マーケット水準はほとんど動かないという膠着感が強まっている。しかし、日経平均の下値が16300円程度という前提で相場に臨むのは危険だろう。米国株安、欧州金融リスク、中国経済リスクなど我々を取り巻く環境は依然として厳しく下値切り下がりは考慮しておく必要がある。一方で、日本市場は上値を追いかける展開は難しいだろう。ポートフォリオは引き続きショートポジションによる保守的な運用を継続する。

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