中国ペシミズムへの違和感、米中妥協後に来る投資チャンス

2019/02/15

【ストラテジーブレティン(220号)】

日本株の頭を抑える中国ペシミズム
世界株価は2018年クリスマスで大底を打ったようである。世界株式市場のメガトレンドはやはりアメリカ、そのアメリカで半値戻し達成。半値戻しは全値戻し、との格言に従えば大きな上昇の波に入っているといえる。最大の要因は、FRBが市場フレンドリーの政策に大きくシフトしたことであろう。にもかかわらず、日本市場では依然市場悲観が根強い。その原因はひとえに、中国ペシミズムにあるといえる。筆者は2011年の「失われた20年の終わり~地政学でみる日本経済~」(東洋経済)上梓以来、いち早く米中対決と中国経済が困難に陥る将来展望を主張してきた。よって現在の中国ペシミズムは想定通りの展開であるが、現在の中国ペシミズムの行き過ぎに対して大いに違和感を抱いている。

誇張されている中国ペシミズム
氾濫する中国ペシミズムには4つの根源があるが、いずれも現時点では誇張されすぎているのではないか。第一は米中覇権争い、米国は中国のハイテク覇権を許さない。ファーウェイはその象徴だが直ちに正面衝突にはならないだろう。米中は大きな相互依存分業関係にあり、その関係を断ち大不況を招くという選択肢は、米国トランプ側にも、習近平政権側にもあり得ない。

第二は米中貿易戦争、これは経済的利害に従うはずなので、知的所有権など中国の譲歩と改革でいったん終結しよう。グローバル企業の中国から他国への生産シフトは不可避だが、いずれ棚上げされていた投資が再開しよう。半導体投資は米中摩擦と情勢の不透明感から一時的にストップしているが、それは近い将来の半導体需給をひっ迫させ、次の投資ブームを引き起こす。それは工作機械も同じこと。すでに落ち込んでいる資本財受注は、今後むしろ改善の牽引車になりえる。

景気浮揚、バブル支持に注力する中国経済政策
第三は中国内需の減速である。M1の急減速など引き締めによるゾンビ企業の整理、インフラ投資抑制など改革がブレーキとなった。これに支援策一巡による自動車販売の減少、スマホ市場の成熟化などのマイナスが加わった。しかし、すでに改革からテコ入れへと政策軸はシフト、内需は緩慢なる回復に向かうだろう。

第四の最も深刻なペシミズムは中国バブルの崩壊、金融危機深化であるが、外貨管理等当局の対応は万全であり、顕在化は当分先であろう。中国は日本で経験したようなバブル崩壊は絶対に容認できない。日本の場合、バブル原資は100%国内の過剰貯蓄であり、その崩壊をもっても経済システムは損なわれなかった。しかし中国は大きく外資依存しており、バブルの崩壊は資本流出と通貨暴落を引き起こし、容易に体制危機に結び付く。それを回避するための奥の手、より厳格なクロスボーダーの資本コントロール、株価や不動産など資産価格の政策的サポートなどが繰り出されるだろう。

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