米国株急落について

2018/10/12

今回の米国株安は、早い段階から予見していた。例えば3月7日のレポートでは、マーケットが一度大きく崩れると、完全に底が入るのには時間がかかると述べている。10年前のリーマンショック、3年前のチャイナショックを例に引き、最初の暴落の半年後に2番底を探る動きとなったことを指摘。それに倣えば、今年の秋に2番底模索の展開となるシナリオを提示した。

直近では、先月下旬にS&P500の益回りと米国10年債利回りの差をとったイールドスプレッドが3%割れと、2月の急落と同じ水準となっていることで米国株の金利対比の割高感に注意と警鐘を鳴らしていた。

「的中した」とか、そんなことを言いたいのではない。こんなことは誰もが気付くことであり、実際、そのような警戒感も一部に台頭していた。VIX指数の上昇に警鐘を鳴らす声もあった。それなのに、マーケットは案の定、急落した。分かっていた通りになったことが、気持ち悪いのである。2月の急落はイールドスプレッドが3%を割り込んでから18日後に起きたが、今回は17日後に急落した。歩み方も同じである。

なぜ、こんなに単純なのか。本来、マーケットの振る舞いは予見不能であり、人智を超えた複雑なものである。ところが今回の急落は、起こるべくして起こったもので、市場が自ら突っ込んでいったような印象である。背景のひとつにはアルゴリズム取引などの隆盛が挙げられる。イールドスプレッドにせよ、VIXの水準にせよ、テクニカル指標にせよ、何かのトリガーが閾値を超えると、自動的に大量の売りが出る。文字通り「機械的な」売りである。プログラムは、凡人には理解できない高度なものなのだろうが、投資行動としては非常に稚拙なものを感じる。市場が幼稚化していることに危惧を覚える。

今回の下げは ‐ 非常によくあることなので、特に違和感はないが ‐ 経済的なトリガーがない急落である。下落率という意味では遥かに及ばないが、ブラックマンデー型だ。(上述した通り、テクニカル的なトリガーはあったのだろう、だから「経済的なトリガーがない」と言おう)。相場は、特に理由がなくても暴落する。ムニューシン米財務長官が人民元の下落について、為替操作との見方を示したこと、トランプ大統領がFRBの利上げを「クレージー」と発言したことなどは、これほどの急落の材料にはなり得ない。

今回の急落が2月と同じく「米国株の金利対比の割高感の修正」であるなら、株価下落・金利低下で修正はいったん完了である。イールドスプレッドは3.2%に戻っている。ダウ平均、S&P500ともに200日移動平均を割り込み、S&P500のRSIは2015年のチャイナショック以来の売られ過ぎレベルに達している。むしろ株の割安感さえ出ている水準だ。株価はここで下げ止まるだろう。
 
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