逆イールドでも景気後退にならない理由

2019/08/16

世間では米国債の逆イールドの話題で持ち切りだが、これについては再三、述べてきているので過去のレポートをご参照ください(例えば3/29付け<「逆イールドで景気後退」は思考停止の典型>など)。

結論を簡単に言えば、逆イールドになったから景気後退になるわけではない。逆イールドは、債券市場が先の景気悪化を懸念する水準までFEDがじゅうぶん利上げをしてきたという結果を示すものだ。その状態にもかかわらずFEDが利上げをやめないでバブルを崩壊させるために景気後退につながったというのが過去の経緯である。然るに、いまは崩壊するべきバブルもなければFEDは利上げをとっくに停止し、金融緩和に転じている。少なくとも足元の逆イールドが将来の景気後退の示唆となる関係性はほとんどないだろう。

それにしても、どうしてネガティブなところだけ拾って報道するのだろう。今日の新聞に、<「米経済は景気後退を避けられる強さがあると思うが、景気後退の可能性は高まってきた」。イエレン米連邦準備理事会(FRB)前議長は14日、米テレビで警戒を示した>と書かれているのをみて驚いた。

昨日のテレビ東京ニュースモーニングサテライトでは、同じイエレンのインタビューを報じていた。そこで彼女は景気後退入りする可能性は「ほとんどない」という認識を示している。イエレン氏は「歴史的に長短金利の逆転は景気後退へのシグナルだったが、今回は当てはまらないかもしれない」と述べたうえで、「アメリカ経済は景気後退を回避できる力強さがある」と指摘した。

さすがイエレンだ。「今回は当てはまらないかもしれない」というのは、僕が上述した通り、今回はこれまでとは違う。FRBが利上げをやめていることが最大の違いである。

ネガティブな報道といえば、今日の業績集計もそうだ。上場企業の2019年4~6月期決算を集計したところ、純利益は前年同期比で15%減と3年ぶりの減益となったというものだ。確かに3四半期連続の減益だが最悪期は抜け出した印象だ。

そもそも15%減益というのは東証2部の東芝の巨額赤字計上が含まれている数字で、東証1部、TOPIXベースにすれば2%減益にとどまる。ほぼ前期比でチャラの水準である。これが2四半期続いている。その前の四半期(2018年10~12月期)に記録した▲25%という大きな落ち込みからは回復しているのだ。

思い返せば、2018年10~12月期は日本の上場企業にとって業績の大きな曲がり角だった。日本電産が今年1月に開いた、業績下方修正に関する緊急記者会見を覚えておられるだろうか。2018年4~9月期までは純利益が同期間として過去最高を更新するなど好調に推移していたが、11月に風向きが一変した。会見の席で永守重信会長は「尋常でない変化が起きた。11、12月と、ガタンガタンと落ち込んだ」と述べた。米中貿易摩擦に端を発した経済の不確実性が、中国経済を中心とした世界の実体経済に急速に影響を及ぼし始めたのがその時期だったのだ。

加えて、上場企業の最高益は2017年の10~12月期だった。急速に落ち込んだ業績を最も高い水準の利益と比べては、減益率が大きくなるのも無理はない。今後は業績が低迷している時期との比較になるので前年同期のハードルが低く、金額ベースの大きな伸びがなくても、前年同期の変化率は改善していくはずだ。

今日の相場などを見ても東京エレクトロンなど半導体関連が強く、年後半の景気・業績の底入れ機運が出ているように思われる。

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