「アップル世界開発者会議から見えるもの」

2020/07/09

GAFAの一角を担うアップルが主宰する世界開発者会議(World Wide Developers Conference:WWDC)が
先月下旬に開催された。そこで検討された7つの議題は以下の通りである。

1. MacのINTELからARMベースへの移行
2. カスタマイズ性が高まる「iOS 14」
3. iPhoneがクルマの鍵になる。BMWが新型「5 シリーズ」でいち早く採用へ
4. PC化が加速した「iPadOS 14」手書き入力が劇的な進化。
アップルにおけるモバイルコンピュータの主力製品というポジション
5. macOSと「Safari」の改良
6.iOS14をはじめとする次世代 OS ではAirPods と接続する複数デバイス間の切り
替え操作が不要。AirPods でのシームレスな切り替え
AirPodsを装着したままiPhoneで音楽を聴き、iPad で動画を視聴し、Mac でビ
デオ会議に出るという一連の動作に対応して、AirPods が自動で接続先を切り替え
7. Apple Watchが睡眠追跡と“手洗い”に対応

とりわけ注目したいのは3番である。アップルが2021年型BMW 5シリーズにおいて
iPhoneをデジタルキーとするこの仕組みは、
iOS 14で導入予定の新しい機能(先にiOS 13でもサポートされる予定)で、
iPhoneに搭載されているNFC(近距離無線通信規格、セキュアエレメントを利用して
近距離で安全に通信できる仕組み、決済などに利用されている)を自動車の鍵にすることができるものだ。
アップルは現時点で販売されている自動車の 80パーセントに「CarPlay」の機能が
搭載されていると分析している。その「CarPlay Dashboard」においては音楽の操作以外にも経路の案内、
Siriの提案を表示する、一日のスケジュールを確認管理できるカレンダーアプリケーション、
更には周辺のスポットをチェックできる地図、
デジタルウォレットへの課金や出前の注文といった機能までもが追加されることになる。
そもそもこのデジタルキーはiPhoneユーザーに対してオーナーから貸し与えたりする仕組みも備えている。
要するに、アプリからほかのユーザーに鍵の貸し出しを行なったり、
その貸し出した鍵を無効にしたりできるのである。これにより物理的に鍵が必要なくなり、
セキュリティー面でも安全に自動車を利用できる。
自動運転技術の開発が世界中で繰り広げられる中、コネクテッド・カーとしての側面を
強調するアップルの巧妙な仕掛けであり、次の一手にも要注目だ。

(株)原田武夫国際戦略情報研究所 羽富宏文
中央大学文学部哲学科卒業。2019年まで日本放送協会(NHK)・東京メトロポリタンテレビジョン株式会社(TOKYOMX)・株式会社テレビ神奈川(tvk)に在籍。
各局に在職中は主に報道部門でディレクター・記者としてニュース取材・番組制作に携わる。2014年からはノンフィクション書籍を定期的に出版。2019年11月より現職(グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー)。

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