強固な企業経営の10カ条

2012/04/02

カルビー(コード2229)の松本晃会長兼CEOの話は面白い。ポテトチップのカルビーは、セイボリースナック(塩けのスナック)で国内No.1、シェア50%を有する。創業家2代目 の松尾雅彦氏から経営を託され、経営改革を行い、2011年3月に東証1部に上場した。

少し前のカルビーは売上高営業利益率が1.5%程度の利益のさほど出ない会社であった。それが、2012年3月期は売上高1600億円、営業利益110億円、売上高営業利益率6.9%、ROE 7.7%を達成しようとしている。

これに対して、将来は営業利益率で15%を目指すという。製造原価を売上比で50%、販管費を同30%、開発費を同5%にもっていけば可能になる。相当高い目標である。松本会長は目標を揚げて挑戦すれば、コストは下がっていくと強調する。では、どうするのか。

カルビーは世界を目指していく。日本の人口は世界全体の2%を切ってきた。いずれ1%になっていく。現時点で当社は97%のビジネスを国内でやっている。どうしても世界に出ていく必要がある。そのためのKSF(キーサクセスファクター、成功の鍵)は4つあると松本会長は言う。

1つは、コスト。コスト+利益で価格は決めない。まず、価格を想定する。いくらなら顧客は払ってくれるか。それを考えて、価格-利益でコストを決める。これでコストが合わなければ、そのビジネスはやらない。
2つ目は、パートナー。海外展開はリスクがあるので、力のあるパートナーと組んで行く。ペプシコとは既に提携しているが、それ以外にも手を打っていく。
3つ目は、ローカライゼーション。現地の材料、現地の機械、現地の人で商品を作って、現地で売っていく。好みも現地に合わせていく。
4つ目は、スピード。中国のスナックマーケットを攻めるにしても、果たして追いついていけるかどうか。とにかくスピードが求められる。中国の国内企業はもちろん、韓国、台湾、フィリピンの企業とも戦っていく。

松本会長が示してくれた経営の10カ条は、どの会社にも通じる普遍性があり、会社を知る上で大いに参考になる。

1)コミットメントとアカウンタビリティ。何をやり切るかを約束(コミットメント)して、その結果責任(アカウンタビリティ)をとるようにする。
2)フェアネスの確保。人の評価をフェア(公平)に行う。そのためにはシンプルにデジタル化して、スタートする前にきちんと契約することである。
3)厳にして暖。とかくマネジメントは甘くなりがちであり、一方で人に冷たくなりがちであるが、これでは通用しない。マネジメントは厳しく、人には暖かく、を実践する。
4)現状維持是即脱落。現状にとどまるということは、そのまま脱落することを意味するので、目標に向けて邁進する。
5)正しいことは正しく。ずっとこういう風にやってきたという姿勢では社内官僚がはびこる。常に正しい方向に進んでいく。
6)ノーミーティング、ノーメモ。会議はやらない、資料は作らない、という方針である。会議をやると資料を作る。資料を作ると、現場を知らないから嘘が混じってくる。そんな時間があったら、現場に行ったほうがよい。現場に行かないと何もわからない。
7)ワンダラーアウト。会社のお金を1ドルでも私用に使ったらクビにする。公私混同を絶対にしない。何よりもしつけが大事である。
8)報告の3原則。(1)トラブルはすぐ報告させる。その時に叱るな。まず報告してきたことをほめるのがポイントである。そうでないと誰も報告に来なくなる。(2)報告は悪いものからもってくる。(3)報告にあたって、嘘をつかないようにさせる。
9)無駄の排除。使っている時間とお金が、ビジネスをドライブしているかを問う。ビジネスに貢献しているかどうかをよく考えて、無駄な時間とお金を使わない。10)最後は、簡素化、透明化、分権化。透明化にあたって、情報は上から下に流すのがポイントである。いかにスムーズにながれるようにするかで経営が変わってくる。また、権限は義務と一緒に移譲するが、拒否権は有しているので、任せきりではない。

松本会長は、伊藤忠商事、J&J(ジョンソン&ジョンソン)で培った経営力を、今カルビーで発揮している。創業家には口出しをしないで任せてくれといって、有言実行、実際に成果をあげている。今後のグローバル戦略の行方に注目したい。

株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所   株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所は「リスクマネジメントのできる投資家と企業家の創発」を目指して活動しています。足で稼いだ情報を一工夫して、皆様にお届けします。
本情報は投資家の参考情報の提供を目的として、株式会社日本ベル投資研究所が独自の視点から書いており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではありません。また、情報の正確性を保証するものでもありません。株式会社日本ベル投資研究所は、利用者が本情報を用いて行う投資判断の一切について責任を負うものではありません。

このページのトップへ