アベノミクス成長戦略~第3弾

2015/07/21

・『「日本再考戦略」改訂2015~未来への投資・生産性革命』が6月末に公表された。株式投資の観点から注目すべき論点をいくつか取り上げてみる。

・日本のGDPの7割がサービス産業で稼ぐ。このサービス産業の生産性は製造業よりも低く、米国に比べても6割水準にとどまる。きめ細かな日本的サービスの提供によるものという見方もあるが、働き方が稼ぎに見合っていない。サービス価格が安いという面もある。付加価値のあるサービスを効率よく提供し、価値に見合った価格で納得してもらう仕組みが必要である。具体的には、小売り、飲食、宿泊、運送の5分野で、「カイゼン」に取り組む。ここでICTの活用は有力な武器である。

・また、「経済財政運営と改革の基本方針2015」も6月末に公表された。“経済再生なくして財政健全化なし”というテーマである。当然であろう。2020年度のPB(プライマリーバランス)黒字化は目標として変更していない。PB赤字の対GDP比率を減らしていく。

・医療・介護分野や公共施設への民間投資を活用して、公共サービス分野を成長のエンジンとする。社会保障は高齢者も相応の負担をせざるをえない。医療・介護は効率が求められる。個々人は生活習慣を見直して、元気な高齢者をできるだけ長く続ける必要がある。ポイントは公的サービスの産業化で、その鍵は生産性の向上である。

・人口減少・高齢化社会で、働き手が足りない。人手不足が目立っている。女性や高齢者にもっと働いてもらう必要がある。その時でも生産性が向上しなければ、成長の限界にぶつかってしまう。そこで、生産性革命が成長戦略のテーマとなった。

・目玉はロボットである。狭い意味でのロボットに留まらず、IoT、ビックデータ、人工知能(AI)といったICTの活用を促進する。そのためには、マイナンバーの活用とともに、セキュリティの確保が絶対的に必要である。セキュリティ認証制度とサイバーセキュリティの確保が求められる。ロボットでは、ヒト型ロボットによる接客サービスや介護ロボット、防災ロボット、無人耕作ロボットなどさまざまな応用が進むことになろう。

・さらに、農業、医療・介護、観光の基幹産業化が進もう。農林水産業の6次産業化はすでにスタートを切っている。JAの改革も緒についた。遊休農地の有効活用を推進する。農地の集約に向けて、耕作放棄地への課税強化は必要である。また、農産品の輸出産業化は一段と進展しよう。

・ヘルスケアでは、電子カルテの普及、地域医療情報連携ネットワークの促進、医療ビックデータの活用などによる次世代ヘルスケア産業の創出が始まることになろう。ジェネリック(後発医薬品)の使用比率を80%にもっていくことで、医療費の負担を減らす。一方で、新薬開発へのインセンティブも強化する必要がある。マイナンバー(社会保障と税の共通番号)を活用すると、薬歴情報を共通化して、無駄な投薬や検査が減少できる。マイナンバー活用へのIT投資が市場を活性化し、その利用が生産性の向上に結びつこう。

・インバウンド2000万人はみえた。次の3000万人に向けて、キャパシティを拡大する必要がある。日中関係からみて突然観光客が途切れるリスクには十分注意する必要があるが、国別の分散を図りながら、日本のさまざまな地域が競って、インバウンドの受け入れに力を入れていくことになろう。モノからサービスの真価が問われる。成田、羽田だけでは間に合わないので、地方の空港の活用が進もう。広域観光ルートの整備で、今まで無名の地域にも客を呼ぶことができる。免税店も2万店近くになっているが、今後一段と増えてこよう。

・ベンチャー企業の育成では、シリコンバレーとの連携が注目される。ベンチャー人材のシリコンバレー進出、シリコンバレーへの日本からの投資、シリコンベンチャーとのオープンイノベーションなど、これまでの動きが加速することになろう。こうみてくると、民間企業にビジネスチャンスが広がってくる。大学発ベンチャーも一段と伸びてこよう。ロボット、IT、ヘルスケア、ベンチャー企業のIPO、社会インフラ投資、地方の余剰アセットの活用など、今後10年のビジネスは面白くなってこよう。

・2030年度のエネルギーミックスについては、原発を一定程度活用するとともに再生可能エネルギーを全体の22~24%に持っていく計画である。その内訳は水力8.8~9.2%、太陽光7.0%、風力1.7%、バイオマス3.7~4.6%、地熱1.0~1.1%である。その中で、重要なテーマは、原子力災害からの福島復興の加速である。廃炉、汚染水対策に手を打ちつつ、長期的には放射性物質汚染廃棄物の処理のためのR&D、人材育成も不可欠である。そのための国際的産学連携の拠点作りも進むことになろう。

・税負担の公平化も喫緊の課題である。配偶者控除への工夫が必要である。妻の年収が103万円以下なら夫の課税所得から38万円控除され、1400万人がそれを利用しているが、103万円の壁をなくして働いただけ本人にプラスになるようにすべきである。次の130万円の壁についても、これを超えると社会保険料を納める必要が発生するが、広く薄く負担してもらって大いに働くことにメリットがあるようにする必要があろう。

・2013年のデータでみると、共働き世帯は1065万、専業主婦の世帯は745万である。90年代前半からすでに逆転しており、共働きが当たり前になりつつある。一方、正規社員3281万人に対して、非正規社員は1870万人と年々増えている。基本的な考え方としては、税負担、社会保障の負担はできるだけ公平にするということである。もう1つは、子供を増やすために、子育て世帯に対する働き易さを確保することである。

・そうすると、次のようなことが基本的な軸になろう。1)元気な高齢者にはできるだけ長く働いてもらう、2)働くことが収入のプラスになると同時に、一定の税負担も担ってもらう、3)女性にもできるだけ、働きに出てもらう。4)働くことが収入になって、必ずプラスになるようにする、5)働き易いように育児などのサポートシステムを一段と強化する、6)非正規社員を減らすような施策を推進する、7)非正規社員にも一定の税負担を担ってもらう、ということが求められる。

・次に、あらゆるサービスについて有料化を図ることを考えるべきであろう。無料によるボランティアという活動はあってよいし、必要な場面も多い。しかし、社会的に必要なサービスであれば、民間企業、NPO法人、公共機関のいずれにあっても、サービスに価格をつけることを考えてみたい。そうすると本当に必要なサービスかどうかが分かる。

・その上で、サービス収入を原資として、そこで働いた人たちの対価として支払う。そうすれば、これまでよりも収入を得る機会が増える。つまり、社会的参加に対して、一定の対価が支払われるので、働き手の収入が全体として増える。サービスの付加価値化が図れるわけである。ひいてはサービスの生産性を向上させるインセンティブにもなろう。

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