ガバナンスと価値創造のあり方~もう1歩突っ込むには

2020/01/14

・11月にWICI(World Intellectual Capital Initiative:世界知的資本推進構想)のシンポジウムが催された。テーマは「見えない資産の時代におけるガバナンスと価値創造のあり方~これからの統合報告」であった。印象に残った論点をいくつか取り上げてみたい。

・まず「ガバナンス総選挙」が面白かった。参加者に、ガバナンスのネーミングを考えてもらうというゲームである。事前の申込者に、ガバナンスとは何かを自由に記入してもらった。WICIのシンポジウムに来る人々だから、もともと意識は高い。

・ガバナンス(コーポレートガバナンス:CG)は、企業統治と和訳され、使われていることは誰でも知っている。その人たちに自分の言葉でネーミングすれば、要は何のことか、と聞いたのである。

・WICIの事務局で、多様な表現を4つにまとめた。その候補は、①指揮監督システム、②舵取り、③羽交い絞めと後押し、時々伴走、④企業協奏、であった。

・指揮監督システムとは、長期的な価値向上を目的として、会社が向かう方向を指し示すとともに、会社組織の規律を維持するという意味である。

・舵取りとは、目的、ゴールを定め、そこに向かえるように、経営をデザインし、実践し、常にチェックし、修正しながら進むという意味を込めている。

・「羽交い絞めと後押し、時々伴走」は、会社がステークホルダーとエンゲージ(対話)しながら、社会に価値を生み出すことで、企業価値を正しく高め、それを次の社会価値を生み出すことにつなげる仕組みを担保する。

・企業協奏とは、会社が透明・公正かつ迅速・果敢な意思決定を行う上で、会社の各部門やグループ全体がステークホルダーと共に、美しいハーモニー(共創)を奏でる行いであると考える。

・この4つは、ガバナンスの意味するところを、参加者がどのように受けとめるか、という視点で要約したものである。したがって、重複した意味づけも含んでいる。

・筆者は、指揮監督システムに投票した。みなさんは、いかがでしょうか。当日シンポジウムに参加して投票した人は161人、その結果は、1位:舵取り(投票率33%)、2位:企業協奏(同30%)、3位:指揮監督(同21%)、4位:羽交い絞め(同17%)であった。この比率は、私にとって意外であった。

・もっとどれかに集中するかと思ったら、4つともそれぞれ票を得ている。ということは、ガバナンスと聴いて、あるいは、ガバナンスという言葉を使う時、その人にとっての意味合いはそれぞれで、結構ばらついている。

・ガバナンスについて話し合う時には、それとなく、どんな意味を込めているのかを、互いに確認した方がよい。そうでないと、会話や議論の途中で、かみ合わないことが起きてこよう。

・まして、社外取締役として企業のガバナンスを担う時には、その企業のカルチャーを踏まえて、ガバナンスの仕組みを理解し、行動していかないと、ガバナンスの効かせ方がうまくいかないことになりかねない。

・では、コーポレートガバナンス(CG)をよくしたら、企業価値は上がるのか。成長力や収益力が高まって、株価は上がるのか。ここがいつも議論になる。

・一般論としてはそうなるはずであるが、そんなうまい話をあまり見たり聞いたりしたことがない。攻めのガバナンスの成功例よりも、CGが不十分で不祥事を起こしてしまった企業の方が目立っている。

・CGは、コーポレートガバナンスコードの見直しを踏まえて、各企業において形は整ってきた。それでも成果が十分みえていない。そこで、形式から実質へ、という中身の実践が問われている。

・CGは、企業が変な方向に暴走するのを食い止めるために役立つ。確かに、暴走を止めることは望ましい。もし変な方向に行くのを抑えてたとしても、外部からみると、その意思決定がみえないことも多い。都合の悪いことは押しとどめたとして、それを公表することはあまりない。

・では、CGを整えた企業から、目の覚めるような成長戦略が打ち出されているだろうか。CGは、価値創造を行うビジネスモデルの重要な枠組みであるが、成長戦略をどう練っていくかは、執行サイドの力量にかなり依存する。社長1人だけではないが、社長の経営能力が本当に十分かが問われる。

・そこで、CGが社長の力量を選択するところまで入り込めれば素晴らしいが、日本の多くの企業では、まだそこまでいっていない。

・ビジネスモデルはどこまで進化させられるのか。現在の価値創造の仕組みであるBM1を、将来のありたい価値創造に向けて、BM2を作り上げていく。そのために、足らないキャピタル(人的資本、知的資本、組織資本、財務資本など)をいかに仕込んでいくのか。

・取り組んでいる企業は多い。もっと大胆に、もっと速く、走ってほしいと思う。そこにガバナンスを効かせてほしい。確かに、ガバナンス改革が成果に結び付くには少し時間がかかる。よって、じっくり評価する必要があろう。一方で、形だけで実質が伴っていないとすれば、いくら待っても効果は出てこない。

・企業評価に当たっては、CGがBM2の創出に向けて、本当に機能しているか。ここを定性的に深く分析していく必要がある。そのためのエンゲージメント(対話)が一段と重要になろう。

株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所   株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所は「リスクマネジメントのできる投資家と企業家の創発」を目指して活動しています。足で稼いだ情報を一工夫して、皆様にお届けします。
本情報は投資家の参考情報の提供を目的として、株式会社日本ベル投資研究所が独自の視点から書いており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではありません。また、情報の正確性を保証するものでもありません。株式会社日本ベル投資研究所は、利用者が本情報を用いて行う投資判断の一切について責任を負うものではありません。

このページのトップへ