WeWorkとTKP/Regusは何が違うのか

2019/12/16

・TKPは、空間シェアリングエコノミーで断トツのビジネスモデルを展開する。2019年5月末に日本リージャスの買収を完了した。世界トップクラスのレンタルオフィス企業であるRegus(リージャス)の日本におけるマスターフランチャイジーとなった。

・これで貸会議室に加えて、貸オフィスでもブランド力のある事業展開が可能となった。TKP 250拠点、日本リージャス150拠点の合計400拠点を、今後10年で1500拠点まで拡大しようという戦略がスタートした。画期的な事業展開で成長力は加速しよう。

・TKP(貸会議室)+ Regus(貸オフィス・コワーキングスペース)を一体としたフレキシブルオフィス事業のビジネスモデルは、不動産オーナーから大口のスペースを割安に仕入れて、この空間の使い勝手を工夫し、顧客ニーズに合った多様なサービスを付加して、小口販売(空間シェアリング)を行うことにある。

・ユーザーである企業にとっては、大手企業であっても、中堅企業やベンチャーであっても、賃料負担を軽減しつつ、フレキシブルな働き方を実践できる。

・TKPの貸会議室・ホテル宴会場は時間貸しである。時間当たりの単価は高いが、ピーク時にはフル稼働していても、使われていない時間は意外にある。また、時間貸しの準備やサービスには人手がかかる。

・一方、リージャスのレンタルオフィス・コワーキングスペースは、月貸しなので時間貸しよりも安いが、使っていなくてもフルタイムの賃料がとれる。人手も相対的にみるとかからない。よって、レンタルオフィスの収益性はTKPがまとめて運営するならば、これまで以上に上げられよう。

・レンタルオフィス・コワーキングスペースは、フィットネスクラブに似ている。会員になって月額料金を支払えば、好きな時にいつでも使える。しかし、夜はやっていないし、昼間混んでいることもある。専用で借りれば、その分チャージは上がってくる。それにしても多様な使い方ができるので、利便性は高い。

・TKPにとっては、スペースの活用、スペースシェアリングの提供という点で、貸会議室+貸オフィスという2つを手に入れたので、今後の事業展開の広がりは極めて大きくなった。

・TKPはRegusのマスターフランチャイジーなので、日本において自前で直営の拠点を拡大してもよいし、立地によってはFC(フランチャイズ)展開を行ってもよい。

・東京では、新築のビルが1500万坪できてくる。TKPが有する貸しスペースはまだ12万坪である。その拡大余地は極めて大きいといえよう。

・また、日本のTKPのユーザー、リージャスの会員が世界にでると、世界のリージャスの施設が使えるように工夫することも可能となろう。逆に、海外のリージャスの会員が日本に来た時には、日本の施設を使えるようにしていく。互いのプラットフォームを利用し合うことが出来るわけだ。

・IWG(International Workplace Group)は、レンタルオフィスとコワーキングスペースで、世界トップクラスである。北中南米で1300拠点、アジア・太平洋で690拠点、欧州・中東アフリカで1020拠点、英で330拠点を有する。2018年12月期の業績は売上高3320億円、EBITDA 504 億円、営業利益201 億円であった。しっかり稼いでいる。

・TKPは、IWGと組んで、グローバル展開を目指す。まず、台湾を買収したが、アジア・太平洋で、リージャスは中国123拠点、インド110拠点、豪81拠点、マレーシア37拠点、シンガポール31拠点、タイ28拠点、香港28拠点、インドネシア21拠点など、ほとんどの国に進出している。このIWGと多面的に連携していく。

・TKPの貸会義室モデルとリージャスの貸オフィスモデルでは収益化のパターンが異なる。貸会議室はスタートとともに稼働率次第ですぐに収益化するが、貸オフィスは出店して黒字化するのに半年はかかり、巡行速度で儲かるようになるには1年半ほどかかる。

・よって貸オフィスの方が先行投資は重い。そこで貸会議室と貸オフィスを組み合わせ、バランスを図ることによって、利用効率と収益性を高めることができる。

・リージャスとTKPのシナジーでは、レンタルオフィスと貸会議室の相互紹介、相互送客、連携出店ができるところにある。連携出店では、福岡の西日本新聞会館(9月)に続いて、11月に兵庫のミツワビル、愛媛の青野ビル、宮城の仙台ソララプラザが出てくる。

・ウィーワークとの違いは何か。TKPは赤字では戦わない。米国のウィーワークは2008年創業で、2017年7月にソフトバンクグループと合弁で、WeWork Japanを設立した。ウィーワークは世界31カ国、97都市に554拠点、40万人をこえる会員に対してコワーキングペースを展開している。シェアードオフィス、ワークスペースを共同で利用する仕組みを提供する。

・レンタルオフィスという範疇でみると、ウィーワークとリージャスは高単価のコワーキングスペースの提供であるのに対して、TKPは別のセグメントも狙える。貸会議室とのシェアリングで、成長企業にフレキシブルなスペースを中価格帯で提供する。ニーズのあるボリュームゾーンを狙うという考えである。

・TKPは日本で12万坪、日本リージャス3万坪のシェアリングスペースを有している。一方、ウィーワークは、ニューヨークに本社をおき、NYで9万坪のコワーキングのスペースを有している。

・ウィーワークはオフィスの執務室のシェアリングであるが、TKPはオフィスの共有スペースのシェアリングを中心に100人が使えるような会議室をシェアリングしている。さらに、バンケットや商業イベントのスペースのシェアリングへハイブリッドの活用を展開している。

・ウィーワークとの違いでは、彼らはスタートアップ企業にフォーカスしながら、大規模なコワーキングスペースの急拡大を図っている。よって、業績は先行投資で大赤字である。

・TKPは、働き方改革におけるフレキシブルオフィスの提供という点では共通しているが、1)会議室との組み合わせ、2)レンタルオフィスのニーズの明確化によって、コンテンツの充実を図り、差別化を図っていく方向にある。

・ウィーワークとは競合にあるが、実は連携も可能である。ウィーワークとの競合はどうか。ウィーワークはマネジメントとファイナンス問題で、その拡大テンポに一旦ブレーキがかかっている。TKP にとっては、ウィーワークは競合であるとともに、協業もできる。つまり、リージャスとTKPにシナジーがあるように、ウィーワークとの連携も十分ありうる。当面、今後の事業拡大にとって特に障害とはならないとみてよい。

・リージャスの攻勢は続いている。9月にSPACES品川がオープンした。大手町ビル(2016年)、JPタワー名古屋、博多駅前に続き、4拠点目となる。品川イーストワンタワー7~8階に4000㎡(1200坪)を有する。ここにはすでにリージャスも入居しており、ワークスタイルに合って選べるようになる。

・10月に、青森県八戸、リージャス八戸センター(503㎡)を開設した。八戸市役所やオフィス街にある。青森県では2つ目である。同じ10月に、リージャス大宮ウエストセンター(717㎡)がオープンした。大宮駅西口から徒歩5分のところにある。また、10月にリージャス長崎BizPORTセンター(501㎡)がオープンした。長崎県で初のリージャスである。

・11月に、リージャス秋田駅前センター(462㎡)を開設する。秋田県では初の拠点である。さらに11月に、オープンオフィス(Openoffice)大阪肥後橋(496㎡)を開設する。リージャスの「Openoffice」は無人で運営される。

・日本リージャスのPMI(買収後の経営統合)では、1)9月に福岡の西日本新聞会館にTKPのガーデンシティPREMIUMとリージャスの共同出店、2)11月に愛媛松山市駅前の青野ビルにおけるTKPカンファレンスセンターとリージャスの共同出店、3)同じく秋に仙台のソララガーデン(旧大塚家具が入っていたビル)に、ガーデンシティPREMIUMとSPACESが共同出店する。

・また、TKPの顧客である大手日系企業に、リージャスのレンタルオフィスを紹介することや、リージャスの顧客である大手外資系企業にTKPの貸会議室を紹介するという、相互送客のキャンペーンを行っており効果を発揮している。

・TKPは、日本リージャスとのシナジーで成長を加速している。日本リージャスとの連携がスタートして、仕入れを西岡取締役(日本リージャス社長)が担当している。案件は大幅に増えている。相互に融通できるし、一緒に開発・出店することもできる。運営の効率化も見込める。

・高収益モデルで出店できる点が、ウィーワークとは全く異なる。SPACESでの出店も加速するので、コワーキングスペースでも業界をリードすることができよう。

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