8年ぶりの上昇に転じた公示地価

2016/03/25

連休明けとなった今週の国内株市場は、日経平均が17,000円台を挟んだもみ合いの展開が続いており、堅調と言えば堅調ですが、膠着感が強まっている印象でもあります。買い上がる材料に乏しい一方、日本株の出遅れ感や年度末を控えた公的資金の買い、補正予算を含めた経済対策観測や消費増税先送り議論も浮上している中では売り崩すにもパワーが要るため、結果として動きにくいのかもしれません。

そんな中、今週の22日(火)に国土交通省が2016年1月1日時点の公示地価を発表しました。全国平均(全用途)が前年比0.1%上昇し、2008年以来8年ぶりに前年比でプラスに転じたことがニュースのヘッドラインに載りました。訪日外国人の増加や再開発などを背景に、大都市圏の中心商業地の地価上昇が牽引した格好です。

また、日銀のこれまでの金融緩和やマイナス金利政策導入によって、不動産投資信託(REIT)などに集まった資金が都市圏の商業地などに向かい、地価を押し上げている面も指摘されています。住宅地の公示地価についても全国ベースではマイナスでしたが、三大都市圏では0.5%の上昇です。金額の規模面では、例えば、首都圏のマンション平均販売価格は2015年で5,518万円でした(不動産研究所調べ)。前年(2014年)比で9.1%の上昇だったほか、何気にいわゆるバブル末期(1991年)の5,900万円以来の水準になっています。その意味では日銀の金融政策の効果が現れた一例と見ることもできます。

とはいえ、当初のアベノミクスの目標となっている、「名目GDP成長を年3~4%」、「CPI上昇率2%」の達成からはまだ距離があるのが実情です。このまま、過剰流動性相場による株や不動産の価格上昇が継続しても、実体経済成長や物価上昇目標未達成の乖離が拡大するだけでは、株価や不動産価格の上昇も限界が意識されてしまいます。いよいよ新年度入りとなりますが、4月中旬からの企業決算、5月半ばの2016年1-3月期GDP発表、5月26日〜27日の伊勢志摩サミットというスケジュールの中、政府の経済政策動向が注目されることになります。金融緩和政策を実体経済への効果につなげる政策が出てくるかが焦点になりそうです。

 

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