成長率目標を下方修正した中国の今後

2015/03/12

前回に続き、今回も中国ネタに触れたいと思います。中国では先週の3月5日から今週末にかけて、「全人代」というイベントが開催されています。全人代の正式名称は「全国人民代表大会」で、名前の通り、全国の人民の代表(3,000名弱の規模)が集まる大会になります。日本では何故か「全人代」と表記されるのですが、地元の中国では「全人大」もしくは「人大」と略されます。

さて、この全人代はここ数年の間、何かと国内外の株式市場などで注目されるようになりました。その理由としては、開幕式で首相が行う演説(政府活動報告)や、閉幕後に開かれる記者会見などで、今年の経済成長率の目標はどのくらいなのか、今後の政策運営の方針はどうなのか、どの分野の課題に力を入れて取り組むのかといった発表があり、株式の銘柄や有望セクター探しの手掛かりになるからです。

その中でも最大の関心事は経済成長率目標です。2015年の成長率目標は「7.0%前後」と発表されました。昨年の目標(7.5%)から引き下げられたことになりますが、全人代の開幕前から今回の目標引き下げを予想する声は多く、想定通りだったこともあって、株式市場等の反応は限定的でした。

とはいえ、7.0%という数字そのもののインパクトはなかったかもしれませんが、その意味を整理しておく必要はありそうです。最近は中国景気の減速傾向を不安視する声が増えてきましたが、中国の成長率目標は低下傾向にあります。

具体的には、2011年までの目標が7年連続で8%、2012年~2014年が7.5%、そして今回の7.0%という流れです。とはいえ、8%が目標だった2011年までの実際の中国の成長率は、リーマンショック直後の時期を除いて2ケタ成長が多く、8%は過熱する経済を上手くコントロールするための「抑制目標」だったと言えます。

一方で、今回の7.0%を含めた直近の目標は抑制目標ではなく、「達成目標」に変わった印象があります。2014年の中国の成長率は7.4%と目標からやや弱い結果となりました。確かに、現在の中国は経済構造を「投資・外需」主導の高成長から、「消費・内需」主導の安定成長へと方向転換をしようとしている最中です。それには改革や規制緩和など痛みを伴うものであり、ある程度の景気減速は仕方がないという姿勢を示しているわけですが、改革の着手が景気減速の口実になっている面があります。

また、中国共産党政権は2012年の党大会にて、「2020年のGDPを2010年から倍にする」という目標を掲げていますが、今後7.0%を下回る状況が続くと、目標達成が怪しくなってきます。「新常態(ニューノーマル)」と称される足元の中国経済ですが、着実な改革の進行とタイムリーに行われる景気下支え策が今後のテーマとなりそうです。目先は金融緩和の動向、中長期的には今年中に策定される「第13次五カ年計画(2016年~2020年)」の内容が注目されると思われます。

 

 

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