ロシアへの警戒は続くのか

2014/12/19

「アフター衆議院選挙」となった今週の国内株市場ですが、与党の勝利を受けた「ご祝儀相場」にはならず、週前半までの日経平均はむしろ軟調な展開が目立ち、節目の17,000円台を下回る推移が続きました。原油価格の下落傾向が続いていることをきっかけとした不安が台頭し、世界的なリスクオフのムードに押された格好です。

原油安とその煽りを受けた資源価格の下落そのものは、資源輸入国である日本経済にとっては恩恵があるほか、「原油安は実体経済にプラス」との意見が米FRBやIMF関係者からも出ており、エネルギー消費量が多い先進国にメリットがあると言えます。その一方で、資源価格安は需要の減少によるもので、世界の景気はあまり良くないのではないか、また、資源国の採算悪化による財政懸念、エネルギー関連企業の業績悪化懸念などで資金が流出し、新興国の経済が後退するサイクルに入るのではないかといった見方が強まっています。

また、資金の流出といえば、昨年、米国の量的金融緩和の縮小観測が出た際に、新興国から資金が引き揚げられ、金融市場が混乱する場面がありましたが、その時の記憶がまだ新しいことも、リスクオフムードを高めている可能性があります。当時は「フラジャイル5」というキーワードが跋扈しましたが、足元でとりわけ不安視されているのがロシアです。

そのロシアでは、株安とルーブル安が進行しています。元々、年明けに発生したウクライナ情勢の影響で、株安・ルーブル安の傾向だったのですが、原油安による懸念がさらに拍車をかけた格好です。ウクライナ情勢については、9月のあたまにウクライナとロシアとの間で停戦が合意されたものの、欧米諸国とロシアがお互いに実行している経済制裁はいまだに解除されておらず、引続きロシア経済を圧迫しています。

ロシア経済は外国の金融機関からの投資や借り入れに支えられている面が大きく、制裁によって国内企業の資金調達が苦しくなっているほか、消費関連の品物の多くを海外からの輸入に頼っており、自ら課した輸入禁止措置によって、農畜産物の供給が足りなくなってきています。

これらに加え、直近の原油安が追い討ちをかけています。ロシアは輸出の7割以上を石油などの資源関連が占めていますが、過去6か月間に原油価格が約半分まで下げたことによるダメージは小さくなく、日本時間12月16日の早朝に、ロシア中銀が10.5%から17.0%へと大幅な利上げをしたことからも、ロシアからの資金流出への警戒がただならぬ状況であることが推測されます。

日経平均は、10月半ば(10月17日)から先週(12月8日)の上昇幅の、「3分の1押し」水準まで下落した値頃感から、12月17日の取引では反発を見せ、米FOMC後となった翌18日は、17,000円台を回復してスタートしています。さらに原油価格の下げ止まりが確認されれば、このまま値を戻す展開も想定され、年末に向けた相場に期待したいところです。

とはいえ、ロシア中銀が「原油価格が1バレル=60ドル前後で推移すれば、来年のロシア経済はマイナス5%成長となる」と警告していることもあり、底打ちした後の原油価格の推移次第では不安が継続する可能性が残っていることには注意が必要となりそうです。

 

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