来年に向けた不安材料の大掃除

2013/12/27

気が付けば2013年も残りあとわずかとなりました。私事ですが、慌てて年賀状の作成に取り掛かって、一息ついたばかりです。来年は馬(午)年。「午尻下がり」と言われるように、相場格言だけで見ればあまり良い年まわりではないようです。なので、年賀状のデザインは縁起物をたくさん盛り込みました。

とはいえ、足元の国内株市場のムードは「かなり」良いと言えます。日経平均が抜けそうで抜けられなかった節目の16,000円台を年末近くになってようやく突破し、昨年末からの日経平均の上昇率は50%を超えました。リスクオンの地合いは続き、来年の株式市場の見通しについても、強気の見通しが賑わっています。日経平均20,000円予想も珍しくありません。

確かに、日経平均だけがするすると上昇し、他の株価指数や個別株がついていけない直近の展開に対して、違和感や過熱感を指摘する声があり、私もいずれ近いうちに調整があると考えていますが、問題はどのような調整を迎えるかです。「塞翁が馬」ではありませんが、年末の大掃除として、もしも来年の相場が下がると仮定するのであれば、どんな不安材料があるのかを考えてみたいと思います。

まずは、前回のコラムでも触れた通り、米国の景況感と金融政策のバランスです。先日のFOMC後の相場は、「金融緩和縮小を決定したものの、量的緩和自体はしばらく続くし、ゼロ金利解除も後ずれするだろう」という面が表に出ています。ただ、米国景気が堅調であるがゆえに、景況感の改善と緩和縮小のペースによっては、思ったよりも早く出口戦略が「実感のないもの」から「実感のあるものに」変化していくことが考えられ、新興国を中心に緩和マネーの縮小懸念が再浮上するかもしれません。

また、米国では財政問題の火種も燻っています。米議会は2015年9月末までの予算案を承認し、10月のような一部政府機関の閉鎖は回避されることになりましたが、来年2月には債務上限が迫っており、引き上げに向けた与野党の駆け引きが始まります。来年11月には米議会の中間選挙が予定されていることもあり、オバマ政権の早期レームダック化にも注意です。

次に、国内については、いよいよ始まる来年4月の消費増税の影響が想定以上に深刻になるシナリオです。安倍政権は対策として、来年夏からの5.5兆円規模の補正予算を組んでいますが、その効果が持続している間に、市場が期待する経済政策や規制緩和などを実行できるかが焦点となります。法人税の実効税率の引き下げや、賃上げの拡大、社会保障や労働市場の改革など、課題は多いですが、来年末までに次の消費増税の判断を下さなければならないため、アベノミクスの正念場となります。当面は、日銀の追加金融緩和観測が相場を下支えしそうですが、来年6月をめどに打ち出される「新成長戦略」が期待外れに終わってしまえば、「結局は金融緩和頼みか」感が強まり、失望売りにつながるシナリオも想定されます。

外交面でも、安倍内閣が発足してちょうど一年となる今週26日に、安倍首相は靖国神社に参拝しましたが、この日は中国の故毛沢東氏の生誕120年の日だったりします。中国側の防空識別圏設定などの動きも絡め、尖閣諸島付近での緊張が高まるシナリオも否定できなくなりました。韓国側からの反発も予想され、日中韓の関係改善が後退する可能性があります。

安倍内閣は、特定秘密保護法案の採決が影響してか、最近になって支持率が低下しましたが、すでに述べたような経済面や外交面の対応をはじめ、3月に迫っている原発再稼動の決断によっては、さらに支持率を低下させる可能性があり、「アベノミクス相場第2弾」は必ずしも順風満帆とは言えないかもしれません。

一方、現在持ち直し基調とされているユーロ圏では、来年の春から主要銀行のストレステストが行われます。資本不足となる金融機関が多くなるような結果になれば、忘れかけていた金融不安が再燃する恐れもあります。

以上のように、これでもかという具合にネガティブな材料を並べてみました。繰り返しになりますが、あくまでも不安材料の整理をしただけですので、現在の相場の流れを否定するものではありませんし、来年の下落相場を予想しているわけでもありません。そもそも相場は、「不安の壁を駆け上る」と言われるように、不安材料を抱えつつ、それらを乗り越えながら上昇していくもので、不安材料がゼロという相場は有り得ません。ただ、来年の相場に臨むにあたって、今年のうちに不安材料を大掃除するだけでも、相場が急変した時の心構えが違うかと思いますので、悪くはないかと思います。

今年最後のコラムとなりましたが、皆様良いお年をお迎えください。

楽天証券株式会社
楽天証券経済研究所 土信田 雅之が、マクロの視点で国内外の市況を解説。着目すべきチャートの動きや経済イベントなど、さまざまな観点からマーケットを分析いたします。
本資料は情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。
銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。
本資料の情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本資料の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本資料の記載内容は、予告なしに変更することがあります。

商号等:楽天証券株式会社/金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号、商品先物取引業者
加入協会:
  日本証券業協会
  一般社団法人金融先物取引業協会
  日本商品先物取引協会
  一般社団法人第二種金融商品取引業協会
  一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ