バーナンキ米FRB議長の議会証言

2013/07/19

今週最大のイベントのひとつだったバーナンキ米FRB議長の議会証言。まずは17日に下院で行われました。議会証言は半期ごとに行われますが、バーナンキ議長は来年の1月末で任期満了となるため、このまま退任となれば今回が最後になります。

今回の議会証言での注目点は、かねてより相場を揺るがしてきた、米量的金融緩和(資産買い入れ)策の縮小について、突っ込んだ発言があるかどうかでしたが、いざ蓋を開けてみれば、「資産買い入れ縮小を年内に開始し、来年中に終わらせる」と述べる一方で、「経済状況次第では変更の可能性がある」と、これまでのシナリオそのものに大きな変化はありませんでした。ただ、「縮小は規定路線ではない」、「予測可能な将来において緩和的な政策は必要」、「量的緩和終了後も米国債とMBSを保持する」などの柔軟姿勢を示す発言もあり、全体としてややハト派寄りの印象となりました。

もっとも、今週末(19~20)に、G20財務相・中銀総裁会合が控えていますが、先進国の金融緩和策縮小による新興国からの緩和マネー流出懸念が議論されるテーマのひとつになる見込みのため、G20を前に「ヘタなことは言えない」というのがあったのかもしれません。ちなみにバーナンキ議長はG20には出席しない予定です。

目新しい材料がなかったとはいえ、少なくとも、議会証言を受けた日米市場の反応は落ち着いており、量的緩和策の縮小そのものについては、かなり織り込まれてきました。5月下旬以降、FRB当局者の発言等に市場が振り回される場面もありましたが、「量的緩和の縮小と利上げは別物であること」や、「条件が揃わないと縮小しない」など、市場との対話を働きかけてきた頑張りが受け入れられ始めたと言えます。

今後は、縮小開始の時期がいつになるのか、どのくらいの規模・ペースで縮小していくのかが焦点となりますが、市場では9月もしくは12月開始との見方が大勢を占めています。次回のFOMCは7月30日~31日ですが、8月はFOMCの開催がなく、その次は9月17日~18日となるため、次回のFOMCで動きがなければ、経済環境が大幅に改善しない限り、12月開始となる可能性が高そうです。

ただし、新興国の多くは引き続き、量的緩和策の縮小に対する警戒感が続きそうです。リーマンショック以降、先進国は積極的に金融緩和策を行い、かれこれ5年近くになりますが、かつては、「緩和マネーの波及効果(スピルオーバー)」問題として、溢れたマネーが新興国に大量に流入し、インフレやバブルの要因になっていると、むしろ先進国の金融緩和策は新興国側からの非難の対象でした。ところが、今になって「資金を引き揚げられては困る」と新興国の言い分は逆になったわけです。

その背景には、過去の米国量的金融緩和(QE1、QE2)と違い、QE3の期間において先進国の景況感が改善する一方で、新興国はイマイチの状況が続いていることがあります。先週(9日)にIMFが世界経済見通し(WEO)を発表し、2013年と2014年の世界経済成長率予想をそれぞれ前回(4月発表分)から下方修正しました。その理由のひとつに、新興国の成長が減速していることが挙げられています。新興国はこれまでの高成長モデルが転換期を迎えつつあり、金融システムや経済をはじめとする構造改革や景気刺激策に取り組んでいますが、その中での資金流出は痛手となります。

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