中国のGDP

2013/04/19

今週月曜日(4月15日)に、中国の第1四半期(1-3月)GDPが公表されました。四半期が終わってから約2週間で公表されるため、その集計スピードの早さと同時に、データの信頼度に対する疑念を抱いてしまう部分もありますが、ここでは素直に公表された数値で話を進めます。因みに、この日はGDPと同時に鉱工業生産や小売売上高、固定資産投資などの経済指標も公表されています。

さて、その中国GDPの結果ですが、前年同期比で+7.7%でした。市場予想(+8%)を下回ったほか、前回(+7.9%)からも成長ペースが鈍化しました。さらに、前期比の結果(+1.6%)を見ても、2期連続のペースダウンだったため、公表後の中国株市場(上海と香港)は下落で反応し、特に上海総合指数は節目の2,200ポイントを下回り、年初来安値を更新しました。

最近の中国株市場は、不動産取引の規制強化に対する警戒や、鳥インフルエンザへ問題などもあり、すでに軟調な展開が続いていましたが、今回の経済指標の結果を受けて、昨年の第3四半期で底を打ったとされる中国景気の回復基調に黄色信号が灯り、先行きへの不安が高まった格好です。とはいえ、3月の全人代で示された2013年の成長目標(+7.5%)は上回っており、今後もペースが鈍化するのか、回復基調を維持するのかを冷静に見極める段階だと言えます。

公表後に中国国家統計局が行った記者会見では、今回の成長率7.7%の寄与度のうち、1.1%分が貿易収支、2.3%分が固定資産投資、4.3%分が消費だったことが判明しました。中国指導部は「外需から内需」、「投資から消費」へと経済の構造を変えようとしていますが、寄与度だけで見ると、消費が頑張っている印象となっており、一応ねらい通りに進んでいるように見えます。

ただし、GDPと同時に発表された経済指標を見ると、1-3月期の鉱工業生産は前年同期比で+9.5%と前回から2.1ポイント減少、小売売上高は同+12.4%で前回から2.4ポイント減少、固定資産投資は+20.9%で前回とほぼ同じ水準となっており、大きな変化の動きは見受けられません。むしろ、投資は伸びているのに、生産や消費への波及を含め、成長につなげられていない点が問題と言えそうです。

いずれにしても、今後の中国はかつての2ケタ高成長を再び目指すのではなく、安定成長を維持しつつ、経済構造の転換を進めていくために、指導部がどう上手くコントロールできるかがポイントとなります。そのため、中国株市場にとっては、引き続き政策動向が大きなカギを握り、その動向を探る上でヒントになるのが、習近平体制が決まった昨年の共産党大会で打ち出された3つの柱、「所得倍増」、「美麗中国」、「政府清廉」になります。現在の中国株市場のキーワード(都市化や戸籍改革、格差是正、環境対策、規制緩和など)は、この3つの柱の基本方針に沿ったものですが、一方でキーワードの数だけ中国の課題の多さも意味しています。

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