エブリー(607A)食品・飲料メーカー向け支援で顧客単価の高いロイヤル顧客の拡大で成長目指す
レシピ動画視聴者基盤と店頭サイネージを活用し、メーカー、小売りの販売を支援
食品・飲料メーカー向け支援で顧客単価の高いロイヤル顧客の拡大で成長目指す
業種:サービス業
アナリスト:鎌田良彦
◆ レシピ動画と店舗のサイネージを活用しメーカー、小売の販売を支援
エブリー(以下、同社)は、料理レシピ動画メディアの「デリッシュキッチン」等の運営によるユーザー基盤と、スーパー等の小売店舗に設置したデジタルサイネージを通じた広告配信等による食品・飲料メーカー等の広告宣伝、販売促進の支援及び小売企業のDXを推進するMarketing Solutionビジネスと、メディアのユーザーを中心とする消費者向けのConsumerビジネスを展開している。
25/6期の売上構成比は、Marketing Solutionビジネスが74.0%、Consumerビジネスが10.3%、その他ビジネスが15.8%であった。近年はMarketing Solutionビジネスの拡大に注力しており、同事業の売上構成比が上昇している(図表1)。
◆ Marketing Solutionビジネス
Marketing Solutionでは食品・飲料等のメーカー向けと小売企業向けのサービスを提供している。ビジネスの中核は、食品・飲料メーカー等に対するブランドや商品の認知拡大から、店頭での販売促進までの一気通貫のマーケティング支援である。これを支えるのが「デリッシュキッチン」の運営により獲得するユーザー属性やレシピ検索等のオンラインデータと、全国のスーパー等に設置した11,000台以上のデジタルサイネージと小売・卸売企業との連携を通じて取得するオフラインの購買データである。
1)デリッシュキッチン
デリッシュキッチンは、15年9月の同社創業時から運営しているレシピ動画メディアである。26年4月時点で57,000本以上のレシピ動画が登録されている。レシピは管理栄養士が監修し、同社が動画を制作している。26年4月のアプリとウェブを合算した月間利用者数は3,100万超、Instagram、Facebook、YouTube等のSNSの総フォロワー数は1,300万超となっている。
同社はデリッシュキッチンのレシピの検索結果に基づく最近の食トレンドや、時系列変化、季節による需要変化等を把握して、食品・飲料メーカー等への広告企画の提言に役立てている。
こうした分析等も踏まえ、同社は食品・飲料メーカー等とのタイアップ広告を制作し、デリッシュキッチンのアプリやウェブ、SNSに配信している。また、SNS等への広告出稿に関するプランニングや配信設定、広告効果の測定・分析等を行う、運用型広告の受託も行っている。
2)デジタルサイネージ
デジタルサイネージのスーパー等の小売店舗への設置は、18年から開始され、19年7月に伊藤忠(8001 東証プライム)傘下の食品卸の伊藤忠食品とのリテールメディア注1分野での業務提携により加速した。リテールメディア分野での食品卸企業との提携は、その後、加藤産業(9869 東証プライム)、旭食品(高知県南国市)とも行っている。
デジタルサイネージによる小売店舗でのマーケティングは、食品・飲料メーカー等、同社と伊藤忠食品、小売企業の連携によって行われる。
伊藤忠食品はデジタルサイネージを購入し、小売店舗に設置する。同社は食品・飲料メーカー等がプロモーションを行いたい商品を使ったデリッシュキッチンのレシピ動画や商品広告動画を、デジタルサイネージにストアビジョン広告として配信し、食品・飲料メーカーから広告配信費による収入を得、収益の一部を伊藤忠食品に支払う。
小売企業は、プロモーション商品の販売POSデータや会員証等と紐づいたIDPOSデータを提供する。こうした連携により、小売企業はプロモーション商品の販売拡大の恩恵を受け、食品・飲料メーカー等は、販売促進施策の費用対効果を、実際の購買データを通じて可視化することができる。
デジタルサイネージにはビーコン注2が設置され、ビーコンが発する電波をアプリをインストールした顧客のスマートフォンが受信すると位置情報等の人流データを取得することができ、同社はデジタルサイネージのおおよその視聴率を把握することが出来る。一部のデジタルサイネージはAIカメラを搭載しており、画像を性別、年代、滞在時間等のデータに転換し、視聴率を取得している。
デリッシュキッチンのスマートフォンアプリの利用者の場合には、アプリでレシピ検索をしたか、スーパーのデジタルチラシを見たユーザーが店舗でデジタルサイネージを視聴したかといったデータを取得することが出来る。小売事業者の会員である場合にはID POSデータと突き合わせることで実際に購入したか等のデータを得ることができる。
3)retail HUB
小売事業者のDXを推進する複数のサービスをretail HUBという名称で提供している。具体的なサービスとしては、①デジタルサイネージの設置や、デジタルチラシのデリッシュキッチンへの配信等のストアDX、②ネットスーパー運営のための顧客向けアプリ、店舗運営用アプリ、管理システムの提供、③ポイント機能、クーポン機能、ニュース機能等が利用できる小売アプリの提供等がある。
◆ Consumer ビジネス
Consumerビジネスでは、デリッシュキッチンアプリの有料プレミアムサービス(税込月額480円)と、冷凍弁当「ミールズ」の宅配サービスを行っている。
デリッシュキッチンのプレミアムサービスでは、お気に入りの登録数が無制限になる、限定レシピを閲覧できる等の機能を利用することができる。
◆ その他ビジネス
その他ビジネスでは、自社メディアの運営で培った動画制作力やシステム開発の知見を活かし、顧客の個別案件の業務受託を行っている。
主要販売先として開示されているKDDI(9433 東証プライム)傘下のauコマース&ライフは、その他ビジネスの主要顧客で、同社はau PAYマーケット内でライブ配信による商品紹介や販売を行うライブコマース機能のシステムの保守・運用や番組制作、動画制作受託を行っている。
同社はauコマース&ライフから、ライブコマースの共同運営に関する契約を26年9月末で終了するとの通知を受けており、26年10月以降は、auコマース&ライフ向けの売上高はなくなる見込みである。

