アシロ<7378> 広告投資等によるユーザー送客件数の多さが特徴

2021/08/05

弁護士のインターネット集客を支援するリーガルメディアを主に展開
広告投資等によるユーザー送客件数の多さが特徴

業種: サービス業
アナリスト: 阪東 広太郎

◆ リーガルメディア関連事業を主に展開
アシロ(以下、同社)グループは、インターネット上で法律情報や弁護士情報等を提供する「リーガルメディア関連事業」と主に弁護士有資格者の人材紹介サービスを提供する「リーガルHR事業」を展開している。21/10期第2四半期累計期間における売上構成比は、リーガルメディア関連事業95.1%、リーガルHR事業4.9%である(図表1)。

◆ リーガルメディア関連事業
リーガルメディア関連事業は、弁護士へのマーケティング支援サービスを提供しているリーガルメディアと、弁護士以外の広告主へのマーケティング支援サービスを提供している派生メディアに分類される。21/10期第2四半期累計期間における売上構成比は、リーガルメディア79.0%、派生メディア21.0%である。

リーガルメディアは、弁護士を主な顧客としているメディアサイトであり、主に「離婚弁護士ナビ」、「交通事故弁護士ナビ」等、弁護士が取り扱う個別の事件分野に特化した弁護士ナビシリーズを運営している。

弁護士ナビシリーズは、離婚・交通事故・相続・労働問題・刑事事件・債権回収・債務整理・IT・企業法務の9つの事件分野で独立したサイトで構成されている。同社グループは、上記に加えて、様々な事件分野を1つのサイト内で取り扱う総合ポータル型法律メディアサイト「あなたの弁護士」を運営している。同社グループによると、売上収益は特定分野への大きな集中はなく分散しているようである。

弁護士業界は、司法制度改革による弁護士数増加に伴い、案件獲得の競争が激化している。各弁護士は得意分野や取扱い分野を明確化し、差別化を図る事が重要となっている中、同社グループが運営するリーガルメディアは個別の事件分野に特化したサイトであることから、弁護士にとって積極的に獲得したい事件分野の問い合わせが得られやすいサービスとなっている。ユーザーにとっては、悩みを抱えている事件分野を積極的に取り扱っている弁護士を見付けやすくなっている。

弁護士ナビシリーズ及び「あなたの弁護士」への訪問者数は、16/10期の10,071千人から20/10期には48,257千人に増加した。SEO注1対策やコラム記事等のコンテンツ制作といったWebマーケティングを強化したことによって、自然検索注2経由の訪問者数が増加した。

収益モデルとして、同社グループは、メディアへ広告出稿する弁護士から広告収入を得ている。ユーザーはリーガルメディアを原則無料で閲覧することができる。

広告収入には、初期収入と掲載料収入の2種類がある。初期収入は顧客が新規に広告掲載を開始する際にシステム登録手数料として受け取り、金額は1枠当たり一律5万円である。掲載料収入は顧客が広告を掲載する期間にわたって月次で受け取る。金額はサイト内の有料広告の枠数に月額定額の掲載枠単価を乗じたものである。掲載枠単価は、顧客の事務所の所在する都道府県によって決まり、2万円から10万円である。東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、福岡県では、月額10万円である。

契約期間は当初は半年であり、その後は一カ月ごとの自動更新である。前月の掲載枠数に対する当月の解約枠数の比率である月次解約率については、21/10期第2四半期累計期間の平均は1.5%と低い水準にある。

リーガルメディアの掲載枠数(期間平均)は、16/10期の388件から21/10期2 四半期には1,353 件まで増加している(図表2)。同社グループによると、 新規顧客の獲得が進んだことが主たる要因である。掲載枠単価(期間平均) は、17/10 期の75,764 円から18/10 期に66,885 円へ低下したのち、21/10 期第2 四半期累計期間の68,061 円へ微増している。

派生メディアは、「キャリズム」という転職エージェントサイトを顧客としたメディアサイトと、「浮気調査ナビ」「人探しナビ」という探偵事務所を顧客としたメディアサイトで構成されている。同社グループによると、「キャリズム」が派生メディアの売上収益の約3 分の2 を占めている。

派生メディアは弁護士に相談・依頼するユーザーが有する派生ニーズに対応したメディアサイトである。例えば、「キャリズム」は労働問題で悩みを抱えるユーザーに対して、弁護士への相談を促すだけでなく、転職という選択肢を提供している。

同社グループは、広告を掲載する転職エージェントや探偵事務所から、ユーザーからの問い合わせ件数に応じた成果報酬を受け取る。単価は顧客毎に相対で決まり、1 万円から2 万円程度である。

派生メディアのサイト訪問者数は、18/10 期の7,195 千人から20/10 期の5,235 千人に減少する一方で、ユーザーから顧客への問い合わせ件数は、18/10 期の6,084 件から20/10 期の27,714 件に増加している。同社グループによると、自然検索から、よりニーズが明確なユーザーを集客すべくリスティング広告注3 に重点を移したことに起因している。

◆ リーガルHR事業
同社グループは、19年12月に連結子会社trientを設立し、20年4月に有料職業紹介事業の許認可を取得し、リーガルHR事業を開始した。同社グループは、法務人材を必要としている企業に対して、弁護士有資格者を紹介し、双方の求人ニーズ及び転職ニーズをマッチングさせる人材紹介サービスを提供し、弁護士専門の転職サイト「NO-LIMIT」を運営している。

同社グループは、候補者の採用が決定、入社した際に、採用企業から紹介手数料を受け取っている。紹介手数料は、顧客毎に相対で決まっており、採用する人材の年収の数カ月分である。

◆ 顧客の構成と獲得経路
同社グループの主要顧客は中小規模の弁護士事務所である。顧客構成として、従業員数が5名以下の小規模事務所が約80%、従業員数が5名から50名の中規模事務所が約15%を占めている。顧客の年齢は、インターネットリテラシーが相対的に高い30代から50代が大半を占めている。

顧客の獲得経路は、同社グループ社員による架電営業が大半を占める。既にインターネット広告の利用経験があり、送客件数の少なさや、広告の費用対効果に対して問題意識の高い弁護士が同社グループのリーガルメディアに関心を持つケースが多い。顧客の窓口は、小規模事務所では事務所代表または事務員、中規模・大規模事務所では、広告運用担当者の場合が多い。決裁者は事務所規模によらず事務所代表の場合が多い。

顧客数は中小の弁護士事務所の構成比が高い一方で、売上収益は少数の大手弁護士事務所に集中する傾向がある(図表3)。21/10期第2四半期累計期間において、アディーレ法律事務所(東京都豊島区)及びベリーベスト法律事務所の広告制作・運用を担うベリーベスト(東京都港区)の2法人で売上収益の23.6%を占めている。これらの先は、取り扱う事件の種類、サービスを展開する地域が広いため、1社当たりの掲載枠数が多く、売上高が大きくなっている。

一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

このページのトップへ