AI inside<4488> 顧客との契約の積み上がりにより20年3月期は創業来初の営業黒字計上へ

2020/01/09

AI技術をベースとしたAI-OCRサービス市場でのシェアトップの企業
顧客との契約の積み上がりにより20年3月期は創業来初の営業黒字計上へ

業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ 現在の主力事業はAI-OCRサービスの提供
AI inside(以下、同社)は、AI技術を活用して企業の業務プロセスをサポートするためのソリューションを提供する企業である。同社が着目したのが、OCR注1の分野であり、現在はAI-OCRサービスの提供が主力事業である。同社サービスの導入企業は400社を超え、AI-OCR市場では最大のシェアを持つ。

同社のAI-OCRサービスは、AIエンジンとアプリケーションをセットにして、「DX Suite」として提供されている。提供方法として、クラウド経由の「AI inside Cloud」と、クラウドに接続しないオンプレミス注2の「AI inside Cube」の2通りがある。いずれも、サービスの導入時の収益はあるものの、サービスが多く利用されるほど収益が上がっていくストック型のビジネスモデルを採っている。

同社の事業は、人工知能事業の単一セグメントだが、売上高は、収益計上の方法に応じて、継続的な利用に基づく契約による月額利用料や従量課金等で構成される「リカーリング型モデル」と、有期的な契約による導入支援やトライアル等から構成される「セリング型モデル」の2つに区分されている。19/3期の「リカーリング型モデル」の売上構成比は21.9%だったが、契約数の積み上がりにより、20/3期第2四半期累計期間(以下、上期)は36.7%まで上昇した(図表1)。

◆ AI-OCRサービス「DX Suite」
同社の技術面での中核にあるのは、文字画像データを学習し、コンピュータが自動的にルールを設計するディープランニングによる手書き文字認識AIである。文字画像として覚えこんでいくため、手書きの文字にも対応でき、かつ文字認識率が高いことが特徴である。

この手書き文字認識AIをベースに、誰もが使えるような画面構成や操作性を備えて、AI-OCRとしてサービス化したものが「DX Suite」である。「DX Suite」は、定型帳票を読み取ってデジタルデータ化する「Intelligent OCR」、複数種類の帳票から同種類の帳票を選び取って仕分ける「Elastic Sorter」、非定型帳票を読み取ってデジタルデータ化する「Multi Form」という3つのアプリケーションから構成される。「Intelligent OCR」は基本サービスのアプリケーションだが、それ以外はオプションサービスである(図表2)。

◆ サービスの提供の2つの方法
「DX Suite」は、クラウドサービスの「AI inside Cloud」として提供される場合と、「AI inside Cube」というハードウェアで提供される場合とがある。後者は、クラウド経由ではなく、自社のシステム内というオンプレミス環境で利用したいという官公庁や地方公共団体、金融機関等の需要に対応するために開発されたものである。19年6月に提供開始となった。

◆ 顧客
「DX Suite」は、業種を特定して開発されたものではなく、幅広い業種に対応できることが大きな特徴である。現在、導入実績のある顧客業種は57業種となっている。

また、大企業での導入実績の割合が高いことも特徴である。20/3期上期末時点の顧客の規模別内訳は、売上高1,000億円以上26.0%、同100~999億円26.6%であり、売上高100億円の企業が過半を占めている。

◆ 販売
販売経路は、直接販売(直販)と販売パートナー経由の2通りに大別される。19/3期は直販が売上高の約70%を占めていたが、販売拡大を目指すために、現在55社ある販売パートナーを更に増やし、販売パートナー経由の売上構成比を上げていく方針である。

また、販売パートナーの中にはOEMパートナーも存在し、NTT東日本の「AIよみとーる」、NTT西日本の「おまかせ AI OCR」のように、相手先の商品名で提供されるものも存在する。

◆ 開発環境
同社は、AIの開発及びデータ学習のための一連のプロセスを、「AI inside Learning Center」として社内システム化している。開発者でなくても簡単に操作できることと、AI-OCR以外の分野のAIも自動生成できることが特徴であり、同社の競争力の源泉のひとつになっている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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