Chatwork<4448> 19年12月期にChatwork事業の初の黒字化を計画

2019/10/01

国内最大のビジネスチャットツール「Chatwork」を提供する企業
19年12月期にChatwork事業の初の黒字化を計画

業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ ビジネスチャットツール「Chatwork」の提供を主軸とする企業
Chatwork(以下、同社)は、社名と同じ「Chatwork」ブランドでのビジネスチャットツールの提供を主要事業としている。11年3月にサービスを開始した「Chatwork」はビジネスコミュニケーション向けとしている点が特徴で、19年8月末時点で登録ID数は約285万人、利用企業数は23.2万社の国内最大のビジネスチャットツールである。

同社の事業は、Chatwork事業とセキュリティ事業の2つの報告セグメントで構成される。Chatwork事業は売上構成比が高いが赤字が続いてきた一方、セキュリティ事業は利益を出している事業である。セキュリティ事業での利益をChatwork事業への投資に回してきた状況がうかがえよう(図表1)。

◆ ビジネスチャットツール「Chatwork」
「Chatwork」は、基本となるグループチャットの機能に加え、タスク管理、ファイル共有、ビデオ/音声(会議)等のビジネスコミュニケーションに必要な各種機能をワンストップで提供する。

サービスはSaaS注1形式で提供され、サブスクリプション注2型課金モデルを採用している。サービスプランは、月額利用料が無料のプランのほか、3種類の有料プランがある(月額利用料は1ID当たり400円~800円)。

一般的に、SaaS形式で提供されるサービスにおいては、各年度で獲得した顧客は、解約の増加によって売上高が減少していくものと言われている。しかし、「Chatwork」は年々売上高が増加しており、定着率が高い。その結果、ユーザー)及び利用企業数は着実に増加してきた(図表2)。

◆ 「Chatwork」のユーザー獲得経路
ユーザー獲得経路としては、ウェブ広告や口コミ等によって「Chatwork」を認識した企業等が、自らオンラインで利用を申し込む「フリーミアム」と呼ばれる経路からの獲得が最も多い。月額利用料無料のプランから利用を開始し、有料プランに移行していく流れが形成されている。

フリーミアム以外のユーザー獲得経路は、セミナーや各種イベントへの出展を通じて接点を持った潜在ユーザーに対する自社営業(直接販売)、18年1 月から開始した代理店販売がある。19 年 8 月時点での販売代理店は 65 社(一次販売代理店 49 社、二次販売代理店 16 社)存在している。

また、12年5月より、KDDI(9433東証一部)に対してOEM提供もしており、 「KDDI Chatwork」のサービス名で展開されている。なお、売上高に占める KDDI 向けの割合は、17/12 期 19.2%、18/12 期 17.7%、19/12 期第 2 四半 期累計期間 14.3%で推移している。

◆ 「Chatwork」を活用したサービス
「Chatwork」をビジネスインフラとして活用して展開されるサービスもある。

ひとつは広告サービスである。フリープランのユーザーに対して広告を掲 載・表示することで、広告主や広告事業者から掲載料を得る。この広告サー ビスからの収益が、フリーミアムの顧客獲得に必要なフリープランの運営費 用の一部をカバーする形となる。

もうひとつは、プラットフォームサービスである。提携企業との協業によるサ ービスを「Chatwork」を通じて提供するものである。現在展開されているのは 「Chatwork アシスタント」、「Chatwork 助成金診断」、「Chatwork 電話代行」 といった、ビジネス関連のサービスである。

◆ セキュリティ事業
ESET の提供するセキュリティ対策ソフトウェア「ESET」の仕入販売を行って いる。同社は、ESET の日本国内総販売代理店(一次代理店)であるキヤノ ン IT ソリューションズ(東京都港区)の二次代理店として展開している。

◆ 同社の強み
同社の特色及び強みとして、(1)ビジネスチャットツールとしては国内最大 手であり知名度があること、(2)オープンプラットフォーム型のシステム設計 を採用しており、社内・社外とも共通 ID でコミュニケーションが図れるという 利便性を実現していること(他社はクローズド・グループウェア型のシステム 設計を採用している)、(3)顧客ターゲットが広いことの 3 点が挙げられよう。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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