(4319:東証1部) TAC 新社長就任 第3四半期に注目

2018/12/06

TAC

今回のポイント
・19年3月期第2四半期の現金ベース売上高は前年同期比3.7%減の107億28百万円。発生ベース売上高は同2.3%減の108億54百万円。個人教育事業、法人研修事業が減収、出版事業、人材事業は増収。現金ベース営業利益は同31.2%減の7億35百万円。発生ベース営業利益は同17.2%減の8億61百万円。売上原価は人件費中心に同0.6%減、販管費は広告費中心に同2.1%減少したが、吸収しきれなかった。

・19年3月期の通期業績予想に変更は無い。現金ベース売上高は前期比1.2%増の212億50百万円を予想。粗利率は0.2ポイント低下するが販管費率も0.6ポイント低下し、営業利益は同9.1%増の9億10百万円を予想。配当は前期より3円増配の8.00円/株を予定。予想配当性向は26.9%。

・19年3月期第2四半期(累計)の現金ベース売上高の通期予想に対する進捗率は50.5%であり、過去5年の実績ベースでの構成比と比較すると、やや低水準となっている。短期的には第3四半期以降の積み上げをどれだけ進めることができるのか注目される。「創業者である斎藤前社長と同様、今後も同社に深く愛情を注ぎ、より一層の成長を目指していく。」と述べる多田新社長率いる同社の今後に期待したい。

 

会社概要
「資格の学校TAC」として、資格取得スクールを全国展開。社会人や大学生を対象に、公認会計士、税理士、不動産鑑定士、社会保険労務士、司法試験、司法書士等の資格試験や公務員試験の受験指導を中心に、企業向けの研修事業や出版事業等も手掛ける。

【沿革】
1980年12月、資格試験の受験指導を目的として設立され、公認会計士講座、日商簿記検定講座、税理士試験講座を開講。2001年10月に株式を店頭登録。03年1月の東証2部上場を経て、04年3月に同1部に指定替えとなった。09年9月には司法試験、司法書士、弁理士、国家公務員Ⅰ種・外務専門職等の資格受験講座を展開していた(株)KSS(旧・早稲田経営出版)から資格取得支援事業及び出版事業を譲受。これにより、会計分野に強みを有する同社の資格講座に法律系講座が加わると共に、公務員試験のフルラインナップ化も進んだ。2013年12月、小中高生向け通信教育事業を柱とする(株)増進会出版社と資本・業務提携契約を締結。2014年6月には医療事務分野への進出を狙いM&Aを実施。

【強み】
(1)試験制度の変化や法令改正へのきめ細かい対応
同社は、会社設立間もない頃から講師陣が毎年テキストを改訂し、試験制度の変化や法令改正にきめ細かく対応することで他社との差別化を図り受講生の支持を得てきた。事業が200億円規模になると、毎年発生するテキスト改訂コストを吸収することが可能だが、新規参入を考える企業はもちろん、同社よりも事業規模の劣る同業者にとっても、テキストを毎年改訂することは大きな負担である(ノウハウの蓄積が進み、高い生産性を実現していることも強みとなっている)。

(2)積極的な講座開発と充実したラインナップ
同社は大学生市場の開拓も含めて積極的に新しい分野(新講座の開設)にチャレンジすることで業界トップに上り詰め、業界初の株式上場を果たした。また、09年には、Wセミナーの資格取得支援事業を譲受し、従来手薄だった法律系講座や公務員試験のラインナップを拡充した。法律系講座及び公務員講座は、会計系3講座(公認会計士、税理士、簿記検定)と共に3本柱を形成し、マーケットの大きい3本柱を中心に多様な講座をラインナップしている。

(3)受講生中心主義の下でのサービスの先進性
サービスの先進性も同社の強みである。教育メディアや講師を受講生が自由に選択できるシステムを、資格取得学校市場で最初に導入したのは同社である。その背景にある受講生中心主義の経営姿勢は、テキストの品質と共に、「資格の学校TAC」のブランド醸成に一役買っている。

ROEは、低下したが、日本企業が目指すべきと一般的に言われている8%を上回っている。レバレッジは既に高水準にあるため、収益性、効率性の改善を進めて行くことができるかが、ROEの更なる向上のためのポイントとなる。

2019年3月期第2四半期決算概要
売上高について
各講座の受講者は受講申込時に受講料全額を払い込む必要があり(同社では、前受金調整前売上高、あるいは現金ベース売上高と呼ぶ)、同社はこれをいったん「前受金」として貸借対照表・負債の部に計上する。その後、教育サービス提供期間に対応して、前受金が月毎に売上に振り替えられる(同社では、前受金調整後売上高、あるいは発生ベース売上高と呼ぶ)。損益計算書に計上される売上高は、「発生ベース売上高(前受金調整後売上高)」だが、その決算期間のサービスや商品の販売状況は現金ベース売上高(前受金調整前売上高)に反映され(現金収入を伴うためキャッシュ・フローの面では大きく異なるが、受注産業における受注高に似ている)、その後の売上高の先行指標となる。このため、同社では経営指標として現金ベース売上高(前受金調整前売上高)を重視している。
季節的特徴について
同社の四半期毎の業績推移は次のとおり。なお、現金ベース売上高(前受金調整前売上高)は受講申し込み金額を集計した売上高を、発生ベース売上高(前受金調整後売上高)は受講申し込み金額を教育サービス提供期間に対応して配分した後の売上高を、それぞれ表している。
同社が扱う公認会計士や税理士などの主な資格講座の本試験が春から秋(第1~第3四半期)に実施されることや、公務員講座など大学生が主な顧客となる講座の申し込みは春から夏(第1~第2四半期)に集中する等の特徴があるため、第4四半期は申し込み(現金ベース売上高)がその他の四半期に比べて少なくなりやすい傾向がある。一方、賃借料や講師料、広告宣伝費などの営業費用は毎月一定額が計上されるため四半期ごとの偏重は無い。

減収減益
現金ベース売上高は前年同期比3.7%減の107億28百万円。発生ベース売上高は同2.3%減の108億54百万円。個人教育事業、法人研修事業が減収、出版事業、人材事業は増収。
現金ベース営業利益は同31.2%減の7億35百万円。発生ベース営業利益は同17.2%減の8億61百万円。売上原価は人件費中心に同0.6%減、販管費は広告費中心に同2.1%減少したが、吸収しきれなかった。

第1四半期(4‐6月)減収だった公認会計士講座の第2四半期(7-9月)は増収。講師料、教材制作のための外注費、賃借料等の営業費用は前年同期比0.4%減の62億68百万円。

講師料、営業のための人件費など営業費用は前年同期比0.2%増の16億49百万円。

【出版事業】
増収・増益

増収
宅建士、社労士、FP、マンション管理士、医療関連が増収
サッカー ロシアW杯観戦ガイド、旅行本、子供向け絵本が寄与
簿記、司法書士は減収

営業費用は同3.0%の減少。人件費や返品等に備えて設定する引当金の純繰入額などが増加した一方、翻訳本出版に係る費用や販路拡大のための施策が一巡し販促費用が減少した。

【人材事業】
増収・増益
人材事業は会計業界の全体的な人材不足を背景に、人材紹介は堅調、人材派遣は労働者派遣法改正の影響で稼働が減少。
広告売上は法人プロモーション用ビデオ制作の受注が一巡したこともあり減収。
医療系人材サービスでは、(株)医療事務スタッフ関西は、兵庫県内において国民健康保険に係る業務を新規に受注したことなどにより増収となった。医療事務系人材の確保、派遣のための営業及びマッチングの強化に注力している。

【マーケット概要】
同社が取り扱う各種資格試験の2017年の本試験申込者は258万1千人と、前年の260万9千人を約2万8千人下回り、3年ぶりの減少となった。

(財務・会計分野)
第1四半期低調だった公認会計士講座は、第2四半期、初学者向けのコース及び再受験生向けのコースがともに好調に推移し、財務・会計分野全体では前年並みの売上。

(経営・税務分野)
税理士講座は、税理士試験の全体的な受験者数の減少の影響で減収。

(金融・不動産分野)
第1四半期からの好調を第2四半期も維持し、不動産鑑定士、宅地建物取引士、マンション管理士、建築士、FP等が増収。宅地建物取引士及びFPは試験対策書籍の好調な売上が講座全体の売上増加に大きく貢献している。

(公務員・労務分野)
公務員講座(国家一般・地方上級)は、民間の良好な就職状況の影響等により、それぞれ減収。

(医療・福祉分野)
(株)医療事務スタッフ関西の新規受注による売上増及び社会福祉士・介護福祉士の試験対策書籍売上が貢献。

講座別(個人・法人合算)動向
<増加>
不動産鑑定士講座(前年同期比4.9%増)、建築士講座(同24.7%増)、マンション管理士講座(同31.1%増)、FP講座(同5.3%増)、ビジネススクール(同23.8%増)等。

<減少>
公認会計士講座(同3.2%減)、税理士講座(同9.1%減)、中小企業診断士講座(同4.4%減)、公務員(国家一般・地方上級)講座(同5.2%減)等。
法人受講者は、通信型研修が前年並み、大学内セミナーは就職関連が減少し同17.9%減、提携校が同13.3%減、委託訓練が同20.9%減。

現預金の増加等で流動資産は前期末比9億81百万円増加。投資その他の資産の増加等で固定資産は同1億25百万円増加し、資産合計は同11億6百万円増加の227億25百万円となった。
長短借入金の増加等で、負債合計は同5億70百万円増加の168億97百万円となった。純資産は利益剰余金の増加等で同5億36百万円増加の58億28百万円。
この結果、自己資本比率は前期末より1.1%上昇し25.6%となった。

(6)トピックス
◎代表取締役社長の異動
18年10月23日、同社創業者であり代表取締役社長の斎藤博明氏が健康上の理由により辞任し、取締役副社長の多田敏男氏が代表取締役社長に就任した。
多田新社長は1984年1月同社入社、1998年3月専務取締役、2007年6月取締役副社長に就任した。

◎理系分野への挑戦
前回のレポートで紹介したように、2018年10月、新規講座として「電験三種講座」を開講し、試験対策書籍の出版も開始した。

(電験三種概要)
電験三種(第三種電気主任技術者)は、商業ビルや工場などの電気設備(事業用電気工作物)の工事、維持及び運用の保安の監督を行う国家資格であり、事業用電気工作物の設置者には、電気事業法によって電気主任者を選任することが義務付けられるなど、電気設備を安全に利用するため社会的に非常に重要な仕事を担っている。
電気は、一般家庭はもちろん、商業ビル、工場、鉄道など我々の日常生活に密接に関わる社会のインフラとして必要不可欠なものであり、電気主任技術者は今後も将来性が十分な資格である。
最近の電験三種の受験申込者数は6 万5 千人前後で推移し、合格率(合格者の受験者数に対する割合) は 8%前後。受講者数では税理士、社労士等を上回る規模である。
同社では、これまで公認会計士や税理士、不動産鑑定士など難関資格試験対策を得意としており多くの合格者を生み出してきたが、「理系」分野は手つかずであった。
これまでに蓄積してきた合格ノウハウや効率的なカリキュラムに加え実務経験に長けた優秀な講師陣を配置し、電験三種でも多くの合格者を輩出していきたいと考えている。

書籍は入門書、理論、電力、機械、法規の5種を出版しているが、売れ行きはいずれも2位を大きく引き離して1位となっている。(同社調べ)
極めて順調なスタートを切ることができたと考えており、今後の伸長に大きく期待しているということだ。

◎教育におけるITの積極活用
受講生の出席・受講状況のデータ管理(受講生の学習の進捗状況を適時に把握、学習が遅れ気味な受講生に対して適切なフォロー)および、受講生の成績データの管理(受講生の得意なエリア・苦手なエリアを把握、苦手なエリアを把握し必要に応じて適切なフォロー)にITを積極的に活用していく。

こうしたデータをきめ細かく管理、チェックしていくことで在籍する受講生の底上げおよび「合格実績」の更なる向上につなげていく考えだ。

2019年3月期業績予想

業績予想に変更無し。増収増益を予想。
現時点で業績予想の変更は無い。現金ベース売上高は前期比1.2%増の212億50百万円を予想。
粗利率は0.2ポイント低下するが販管費率も0.6ポイント低下。営業利益は同9.1%増の9億10百万円を予想。
配当は前期より3円増配の8.00円/株を予定。予想配当性向は26.9%。

今後の注目点
19年3月期第2四半期(累計)の現金ベース売上高の通期予想に対する進捗率は50.5%であり、過去5年の実績ベースでの構成比と比較すると、やや低水準となっている。短期的には第3四半期以降の積み上げをどれだけ進めることができるのか注目される。
「創業者である斎藤前社長と同様、今後も同社に深く愛情を注ぎ、より一層の成長を目指していく。」と述べる多田新社長率いる同社の今後に期待したい。

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2018年6月28日

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