(4319:東証1部) TAC 期初予想通りの増収増益

2018/08/17

TAC

今回のポイント
・18年3月期の現金ベース売上高は前期比1.6%増の209億67百万円。発生ベース売上高は同2.5%増の209億51百万円。全セグメント増収だった。分野別では財務・会計分野、金融・不動産分野が好調だった。現金ベース営業利益は同5.6%減の8億49百万円。発生ベース営業利益は同16.9%増の8億33百万円。売上原価はほぼ前年並み、販管費は同3.7%増加したが増収効果で吸収した。前期にあった受取和解金1億20百万円がなくなったことなどから当期純利益は同9.7%減の4億42百万円となった。

・19年3月期の現金ベース売上高は前期比1.2%増の212億50百万円を予想。粗利率は0.2ポイント低下するが販管費率も0.6ポイント低下し、営業利益は同9.1%増の9億10百万円を予想。配当は前期より3円増配の8.00円/株を予定。予想配当性向は33.6%。

・小幅の増収増益ではあったが、ほぼ期初予想通りの着地となった。過去8期の期初予想と実績の差異を見てみると、乖離幅は縮小し前々期、前期とほぼ誤差の範囲といえよう。保守的な予想数値との見方もあるが、少なくともここ2期は市場の期待を裏切る形にはなっておらず、2016年以降は堅調に推移している株価もこうした点を反映している面もあろう。今後は、決して良好とは言い難い事業環境の下でも、競争優位性を活かして新規事業の開発やM&Aにより、売上及び利益の継続的な成長を実現できるかを注目したい。

会社概要

「資格の学校TAC」として、資格取得スクールを全国展開。社会人や大学生を対象に、公認会計士、税理士、不動産鑑定士、社会保険労務士、司法試験、司法書士等の資格試験や公務員試験の受験指導を中心に、企業向けの研修事業や出版事業等も手掛ける。

【沿革】

1980年12月、資格試験の受験指導を目的として設立され、公認会計士講座、日商簿記検定講座、税理士試験講座を開講。2001年10月に株式を店頭登録。03年1月の東証2部上場を経て、04年3月に同1部に指定替えとなった。09年9月には司法試験、司法書士、弁理士、国家公務員Ⅰ種・外務専門職等の資格受験講座を展開していた(株)KSS(旧・早稲田経営出版)から資格取得支援事業及び出版事業を譲受。これにより、会計分野に強みを有する同社の資格講座に法律系講座が加わると共に、公務員試験のフルラインナップ化も進んだ。2013年12月、小中高生向け通信教育事業を柱とする(株)増進会出版社と資本・業務提携契約を締結。2014年6月には医療事務分野への進出を狙いM&Aを実施。

【強み】
(1)試験制度の変化や法令改正へのきめ細かい対応

同社は、会社設立間もない頃から講師陣が毎年テキストを改訂し、試験制度の変化や法令改正にきめ細かく対応することで他社との差別化を図り受講生の支持を得てきた。事業が200億円規模になると、毎年発生するテキスト改訂コストを吸収することが可能だが、新規参入を考える企業はもちろん、同社よりも事業規模の劣る同業者にとっても、テキストを毎年改訂することは大きな負担である(ノウハウの蓄積が進み高い生産性を実現していることも強みとなっている)。

(2)積極的な講座開発と充実したラインナップ

同社は大学生市場の開拓も含めて積極的に新しい分野(新講座の開設)にチャレンジすることで業界トップに上り詰め、業界初の株式上場を果たした。また、09年には、Wセミナーの資格取得支援事業を譲受し、従来手薄だった法律系講座や公務員試験のラインナップを拡充した。法律系講座及び公務員講座は、会計系3講座(公認会計士、税理士、簿記検定)と共に3本柱を形成し、マーケットの大きい3本柱を中心に多様な講座をラインナップしている。

(3)受講生中心主義の下でのサービスの先進性

サービスの先進性も同社の強みである。教育メディアや講師を受講生が自由に選択できるシステムを、資格取得学校市場で最初に導入したのは同社である。その背景にある受講生中心主義の経営姿勢は、テキストの品質と共に、「資格の学校TAC」のブランド醸成に一役買っている。

ROEは、低下したが、日本企業が目指すべきと一般的に言われている8%を上回っている。レバレッジは既に高水準にあるため、収益性、効率性の改善を進めて行くことができるかが、ROEの更なる向上のためのポイントとなる。

2018年3月期決算概要
売上高について

各講座の受講者は受講申込時に受講料全額を払い込む必要があり(同社では、前受金調整前売上高、あるいは現金ベース売上高と呼ぶ)、同社はこれをいったん「前受金」として貸借対照表・負債の部に計上する。その後、教育サービス提供期間に対応して、前受金が月毎に売上に振り替えられる(同社では、前受金調整後売上高、あるいは発生ベース売上高と呼ぶ)。損益計算書に計上される売上高は、「発生ベース売上高(前受金調整後売上高)」だが、その決算期間のサービスや商品の販売状況は現金ベース売上高(前受金調整前売上高)に反映され(現金収入を伴うためキャッシュ・フローの面では大きく異なるが、受注産業における受注高に似ている)、その後の売上高の先行指標となる。このため、同社では経営指標として現金ベース売上高(前受金調整前売上高)を重視している。

季節的特徴について

同社が扱う主な資格講座の本試験は、第2四半期(7月~9月)及び第3四半期(10月~12月)に集中しており、特に公認会計士・税理士講座等の主力講座においては、第2・第3四半期は試験が終了した直後で、翌年受験のための新規申し込みの時期となり、一方、第4四半期(1月~3月)及び第1四半期(4月~6月)は全コースが出揃う時期にあたる。
第2・第3四半期は、現金売上及び売掛金売上は多いものの受講期間に応じて前受金に振り替えられる一方、経費は毎月一定額計上されるため売上総利益率は減少する傾向がある。これに対して第4・第1四半期はこれらの前受金が各月に売上高に振り替えられる期になるため売上総利益率は増加する傾向がある。

増収増益。ほぼ予想通りの着地。

現金ベース売上高は前期比1.6%増の209億67百万円。発生ベース売上高は同2.5%増の209億51百万円。全セグメント増収だった。分野別では財務・会計分野、金融・不動産分野が好調だった。
現金ベース営業利益は同5.6%減の8億49百万円。発生ベース営業利益は同16.9%増の8億33百万円。売上原価はほぼ前年並み、販管費は同3.7%増加したが増収効果で吸収した。
前期にあった受取和解金1億20百万円がなくなったことなどから当期純利益は同9.7%減の4億42百万円となった。

講師料、教材制作のための外注費、賃借料等の営業費用は前期比0.5%増の123億73百万円となり、増収で吸収できず減益となった。

【出版事業】

増収・減益
(TAC出版)
増収

簿記、宅建士、社労士、中小企業診断士、FP、行政書士は増収
旅行本、公務員は減収

(W出版)
減収

司法書士は前年を上回る。
司法試験は減収。
【人材事業】

増収・増益

人材事業は会計業界の全体的な人材不足を背景に、人材紹介、人材派遣を中心に好調。TACプロフェッションバンクの営業利益は過去最高を更新。
医療系人材サービスでは、(株)医療事務スタッフ関西が減収。 (株)TAC医療は2018年3月末で事業を休止し、同年8月1日付で(株)TACプロフェッションバンクが吸収合併する予定。

【マーケット概要】
同社が取り扱う各種資格試験の2017年の本試験申込者は258万1千人と、前年の260万9千人を約2万8千人下回り、3年ぶりの減少となった。

(財務・会計分野)
公認会計士講座は、会計士業界における会計士試験合格者の採用状況も監査法人を中心に良好で、講座全体では増収。
簿記講座は、2017年度の日商簿記検定試験の申込者数(1~3級)が2016年度から約7%減少する中でも健闘し、TAC出版が刊行している「スッキリわかる日商簿記」、「みんなが欲しかった簿記の教科書」などの受験対策書籍とあわせ増収となった。

(金融・不動産分野)
不動産鑑定士講座、宅建士講座、建築士講座、証券アナリスト講座等が引き続き好調。

(経営・税務分野)
税理士試験の受験申込者数の減少が続いており、税理士講座もその影響等により減収。

(法律分野)
司法試験講座、司法書士講座が低調に推移し減収。

(公務員・労務分野)
公務員講座(国家一般・地上)、社会保険労務士講座、教員講座は堅調。

情報・国際分野、医療・福祉分野は前年並み。

講座別(個人・法人合算)動向
<増加>
公認会計士講座(同5.5%増)、宅地建物取引士講座(同6.1%増)、建築士講座(同44.4%増)、FP講座(同8.5%増)、CompTIA講座(同16.6%増)

<減少>
簿記検定講座(同5.8%減)、税理士講座(同3.7%減)、中小企業診断士講座(同4.8%減)、司法書士講座(同7.8%減)、公務員(地方上級・国家一般職)講座(同5.0%減)
法人受講者は、企業からの大型案件のあった通信型研修が同19.5%増、大学内セミナーが同12.2%増、提携校が同10.9%減、委託訓練は10.8%減。

現預金の減少等で流動資産は前期末比6億47百万円減少。投資有価証券の増加等で固定資産は同1億96百万円増加し、資産合計は同4億51百万円減少の216億18百万円となった。
長短借入金の減少等で、負債合計は同7億83百万円減少の163億26百万円となった。純資産は利益剰余金の増加等で同3億32百万円増加の52億91百万円。
この結果、自己資本比率は前期末より2.0%上昇し24.5%となった。

貸倒引当金の増加などで営業CFのプラス幅は拡大したが、有価証券の取得による支出等で投資CFおよびフリーCFのマイナス幅は拡大した。借入金の返済を進め財務CFのマイナス幅は拡大。
キャッシュポジションは低下した。

2019年3月期業績予想
増収増益を予想。

現金ベース売上高は前期比1.2%増の212億50百万円を予想。
粗利率は0.2ポイント低下するが販管費率も0.6ポイント低下。営業利益は同9.1%増の9億10百万円を予想。
配当は前期より3円増配の8.00円/株を予定。予想配当性向は33.6%。

(2)中長期の取り組み

「新規事業の開発・コストコントロール」、「競合他社に対する競争優位性の確立」、「M&A・業務提携の推進」の3点を掲げている。

◎新規事業の開発・コストコントロール

*新規事業・新規分野への継続的な挑戦
2018年1月、理系分野における代表的な資格の一つである電験(電気主任技術者試験)3種について、「みんなが欲しかった」シリーズを刊行し、新たな顧客層や新規販路(書店)開拓を進める。
将来的には、個人向け講座や法人向け研修といった商品の開発も視野に入れている。

また、千葉大学病院と、病院経営の司令塔を育てる「ちば医経塾」の実施に関して連携を開始した。
同社は病院経営の基礎を補完するオプション講座の開設や、Webを利用した教材開発を担当する。

*コストコントロール
人件費を中心に様々なものが値上がり傾向にある中、一定の利益を確保するために個々の費目の観点、全体的な観点の両面からコストをコントロールする。

◎競合他社に対する競争優位性の確立

同社の講座は毎年20万人を超える受講生が利用しており、多数の受講生をストックとして抱えているのが同社の強みである。
そこで、受講生データを収集・解析し、その結果を教育コンテンツ・プログラムに反映し、受講生へのサービス向上とTACブランドの価値向上を図る。

◎M&A・業務提携の推進

引き続きTACグループとのシナジーが見込める案件について積極的にM&Aや業務提携を推進していく。

今後の注目点
小幅の増収増益ではあったが、ほぼ期初予想通りの着地となった。
過去8期の期初予想と実績の差異を見てみると、乖離幅は縮小し前々期、前期とほぼ誤差の範囲といえよう。
保守的な予想数値との見方もあろうが、少なくともここ2期は市場の期待を裏切る形にはなっておらず、2016年以降は堅調に推移している株価もこうした点を反映している面もあろう。
今後は、決して良好とはいえない事業環境の下でも、競争優位性を活かして新規事業の開発やM&Aにより、売上及び利益の継続的な成長を実現できるかを注目したい。

<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書

最終更新日:2018年6月28日

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