(2483:JASDAQ) 翻訳センター 機械翻訳の活用へ発進

2018/07/19

Honyaku

今回のポイント
・18/3期の売上高は前期比3.9%増の106億18百万円。主力の翻訳事業が医薬、工業・ローカライゼーション分野中心に好調。派遣事業、通訳事業も2桁増収だった。相対的に収益性の高い翻訳事業の利益率がさらに改善したことに加え、構成比も上昇したため全体の粗利率は1.4ポイント上昇。営業利益は同15.0%増の8億2百万円。人件費中心に販管費も増加したが、増収効果で吸収した。売上、利益ともに予想を上回り、過去最高を更新した。・19/3期の売上高は前期比13.0%増の120億円を計画。全セグメントで増収の予想。子会社(株)メディア総研がフル寄与する。主力の翻訳事業が2桁増収で粗利率も上昇。営業利益は12.2%増の9億円の予想。(株)メディア総研のコストも加わり販管費は同25.3%増加するが吸収する。売上高、営業利益ともに3期連続して過去最高を更新。配当は前期比6円/株増配の35.00円/株の予定で、5年連続の増配。予想配当性向は19.6%。

・第三次中期経営計画の数値目標はほぼ達成し、さらなる高みを目指して「機械翻訳の活用」を主軸とした第四次中期経営計画がスタートした。足元の事業環境が良好な中で、翻訳業界の大変動期を見据えてあえてビジネスモデルの転換に取り組むことが出来るのも業界最大手の同社ならではの地力によるものといえるだろう。まだスタートしたばかりで不透明な要因も多くあり、明確な実績が今期、来期で見え始めることは難しいだろうが、進捗状況については短期、中長期両方の視点からウォッチしていきたい。

会社概要

翻訳業界の国内最大手で初の上場企業。医薬、工業・ローカライゼーション、特許、金融・法務分野において、産業翻訳と呼ばれる技術文書やビジネス文書の翻訳を行う。語学力、専門性、文章力に優れた約4,200名の登録翻訳者を有する。高い品質と専門性、対応言語約80言語という幅広さが特徴。通訳も含めた言語サービスにおける事業領域の拡大を図る。機械翻訳を利用した新たなビジネスモデルの構築にも着手。

【1-1 沿革】

江戸時代から薬の町として有名な大阪・道修町(どしょうまち)で、医薬専門の翻訳サービスを提供するために設立された(株)メディカル翻訳センターが前身。その後、特許などへ翻訳業務の範囲を広げる過程で東京、大阪、名古屋に設立した数社を整理・統合して1997年8月に(株)翻訳センターとなる。2006年株式上場後、海外へも進出。

【1-2社長プロフィール】

二宮 俊一郎社長は1969年7月21日生まれ。
1997年4月同社入社、2004年6月取締役就任。2018年6月代表取締社長役に就任。機械翻訳の進化で大きく変動する翻訳業界においてビジネスモデルの転換でさらなる成長を目指す同社を牽引する。

【1-3企業理念・経営方針】

<経営ビジョン>
「すべての企業を世界につなぐ言葉のコンシェルジュ」

【1-4 市場環境】

翻訳ビジネスは大きく分けて、「産業翻訳」、「出版翻訳」、「映像翻訳」があるが、同社の中心的な事業は、企業や官公庁で発生する技術文書、ビジネス文書の翻訳のことを指す「産業翻訳」と言われる分野。
日常生活においては出版翻訳や映像翻訳を目にすることが多いが、約2,795億円といわれる日本の翻訳市場において、産業翻訳が占める割合は90%と圧倒的な大半を占めている。
一般社団法人日本翻訳連盟によると、国内には約2,000社の翻訳会社・事業者があるが、売上高76億円(翻訳セグメント、2018年3月期)の同社の以下は、10位で売上高数億円程度と、小規模事業者が大多数の業界となっている。

日本企業の活動のグローバル化が進むにつれて、翻訳ニーズは益々拡大するものと予想されている。

高速鉄道、プラント設備・装置技術、水道など日本企業による現地インフラ事業の受注拡大
新興国市場における日本の自動車産業の拡大
震災、洪水などの教訓からリスク分散に伴う生産拠点の多極化
企業経営者の多国籍化
所謂「クールジャパン」戦略に基づいた、コンテンツ、製品・サービスの輸出拡大や、来日誘致策の積極化

海外に目を向けてみると、アメリカの調査会社コモンセンスアドバイザリー社発表による2018年の世界の語学サービス会社の売上高ランキングにおいて、同社はアジア太平洋地域では2位にランクインされた。
同社レポートによると、世界の翻訳市場は日本市場の10倍以上にあたる巨大市場が形成されている。当然競争も激しい事は予想されるが、同社は事業拡大のため、新規領域への取組も開始しており、世界トップ10入りを目指している。

【1-5事業内容】

(1)概要
医薬、工業・ローカライゼーション、特許、金融・法務など、専門性の高い事業分野における産業翻訳を行っている。
産業翻訳の具体例としては、以下の様なものが挙げられる。

デジタル機器等における複数言語で書かれている取扱説明書
海外生産工場での機械の仕様書や現地従業員向けの作業マニュアル
現地会社で使う規程などの人事労務資料
日本国あるいは外国へ特許出願する際の特許明細書
日本国あるいは外国で医薬品の承認申請を取得するための資料
決算短信、株主総会招集通知などのディスクロージャー関連資料
企業間で発生する契約書などの法務資料

現在の顧客数は約4,600社。9割が法人顧客。
売上ベースで対応言語の80%が英語で、中国語5%、西・韓・独が数%と続くが、近年、東南アジア言語の翻訳依頼が増えている。
現在、約80言語に対応している。

(2)ビジネスモデル

翻訳作業は、同社に登録している約4,200名(2018年3月期)の翻訳者が行う。質の高い翻訳者をどれだけ確保できるかが事業拡大の上で大きなポイントとなる。
そのために、登録の際トライアルを実施し、語学力のみでなく、技術知識など専門性や文章力、スピードも評価して一定以上の能力を有した翻訳者のみと契約している。合格率は約14%ということだが、一次審査として書類審査も行っていることから、実際の合格率はもっと低く、狭き門となっている。
登録翻訳者の確保が重要な経営課題と認識しているが、実際のところは、翻訳者の数がボトルネックになった事はなく、安定的に仕事を発注できる同社の事業規模の大きさもあり、登録者数は順調に拡大している。
同社の売上原価のほぼ大半が登録翻訳者への支払報酬で、原則的に「対応言語 1ワードあるいは1文字」当たりの従量制となっている。
業務フローを示したのが以下の図だが、同社が安定的に利益を生み出すためには以下の2点が最も重要であり、そのために様々なシステムを導入している。

①翻訳者の選定

品質確保のためには、顧客から依頼された原稿の内容に適した翻訳者を言語、専門性、スピード、発注単価などを加味して選定しなければならない。
この選定でミスをすると、納品までの後工程に支障をきたし、収益低下につながる。

同社では基幹業務統合システムを使用し、常に適切な翻訳者選定が出来るような体制を構築している。案件の受注から納品、回収までを一括管理する同社カスタマイズの基幹業務システムで、販売管理だけでなく、登録者に関する専門分野、過去の実績、スケジュールなど、詳細なデータが蓄積されている。
コーディネータと呼ばれる社内の担当者が、このシステムに蓄積された登録者の専門分野、過去の実績、スケジュールなどのデータを用いて適切な翻訳者を選定する。これによりコーディネータの属人的な経験などに頼らずに適切な翻訳者の選定を行う事が出来る。なお、2015年7月に基幹業務統合システムを改修している。

②翻訳のスピードアップ及び品質チェック

顧客に納品する前に必要な校正作業は社内の校正スタッフ、ネイティブスタッフなど、専門スタッフが行っている。また、翻訳作業をより確実かつスピーディーに行えるよう、各種翻訳支援ツールを使用している。

翻訳支援ツールとは?

従来の翻訳では、大量の原稿の重複箇所の表現統一を手作業で処理しており、業務の精度を高めるためには、多くの人手を投入するなど、効率的ではなかった。
この問題を解決するために、同社は各種翻訳支援ツールを活用している。これは、重複箇所の表現統一を機械的に処理するもので、ツール導入により翻訳作業に関わる人手を減らし、より速く正確に行うことが可能となった。

③今後の方向性

機械翻訳の精度が急速に向上する中、従来の翻訳アウトソーシングにとどまらず、ソリューションビジネスへの転換を進めて行く。
詳細は、「4.今後の戦略 ~第四次中期経営計画~」および「5.二宮社長に聞く」を参照。

(3)事業セグメント

翻訳事業が売上の大半を占めるが、「すべての企業を世界につなぐ言葉のコンシェルジュ」として、翻訳者派遣、通訳、語学教育、コンベンションなど幅広いフィールドで事業を展開している。

翻訳の対象により、医薬分野、工業・ローカライゼーション分野、特許分野、金融・法務分野で構成されている。

①医薬分野
主に、製薬会社を顧客とした新薬等医薬品開発段階での試験実施計画書、試験報告書、医薬品の市販後の副作用症例報告、学術論文、および、医薬品・医療機器類の導入や導出に伴う厚生労働省、米国FDA(食品医薬品局)などへの申請関連資料などの翻訳を行う。また、医療機器メーカーを顧客としたマニュアルの翻訳や化学品、農薬関連の翻訳も行っている。

②工業・ローカライゼーション分野
主に、自動車、電気機器、機械、半導体、情報通信関連の輸出・輸入メーカーを顧客とした、技術仕様書、規格書、取扱説明書、品質管理関連資料の翻訳、メディアコンテンツ類の翻訳も行っている。

③特許分野
主に、特許事務所および各種メーカーの知的財産関連部署を顧客とした、電気、電子、機械、自動車、半導体、情報通信、化学、医薬、バイオ分野における、外国出願ならびに日本出願などに伴う特許出願明細書や特許公報の翻訳を行っている。

④金融・法務分野
主に、銀行、証券会社、保険会社など金融機関、法律事務所を顧客とした、市場分析レポート、企業業績・財務分析関連資料、運用報告関連資料、人事関連資料、マーケティング関連資料、契約書、定款・約款などの翻訳、また、企業の管理系部署などを顧客とした、株主総会招集通知やアニュアルレポート、有価証券報告書などのディスクロージャー関連資料の翻訳、会社案内、法律関連文書、人事規程などの翻訳も行っている。

(株)アイ・エス・エスにおいて、顧客企業が機密保持上、社外に持ち出せない文書類などの翻訳業務を行う翻訳者派遣、ならびに、会議、商談、工場見学などの通訳業務を行う通訳者の派遣を行っている。

(株)アイ・エス・エスにおいて、大規模国際会議や企業内会議、商談、工場見学などの際の通訳を請負っている。

(株)アイ・エス・エス・インスティテュートにおいて、通訳者・翻訳者養成のための語学教育を提供している。

(株)アイ・エス・エスにおいて、国際会議・国内会議(学会・研究会)やセミナー・シンポジウム、各種展示会の企画・運営を行っている。大型案件の受注により知名度、ブランド力が向上。実績を重視する官公庁においては上場企業として財務基盤が強固である点も含め上位の評価を受けている。

(株)外国出願支援サービスにおいて外国出願用の特許明細書の作成業務や(株)メディア総合研究所においてITシステムの構築・導入・運用支援業務などを提供している。

【特徴と強み】

翻訳業界最大手で初の上場企業である同社は、以下の様な強みや特徴を有している。

◎専門性

医薬、工業・ローカライゼーション、特許、金融・法務の4分野において高い専門性を有している。
本業である翻訳に加えて、外国特許出願に際しての出願書類の作成やメディカルライティング(新薬申請資料の作成)を手掛けるなど、その業界に関する高い専門性と翻訳に付随した付加価値サービスを展開している。
近年様々な翻訳支援ツールや機械翻訳サービスが提供されるようになってきているが、同社でも専門性を維持しつつファイル管理や用語統一などを効率化する有効なツールとして積極的に導入を進めている。

◎総合力

2006年4月の株式上場時は翻訳事業のみの事業形態であったが、2012年9月に通訳業界で大きな実績をもつ(株)アイ・エス・エスを買収し、事業を拡大した。「すべての企業を世界につなぐ言葉のコンシェルジュ」という経営ビジョンのもと、コア事業である翻訳だけにとどまらず、通訳、人材サービス、コンベンション(国際会議企画・運営)、通訳者・翻訳者育成事業など、外国語ビジネスの総合サプライヤーとして体制を構築している。また、対応言語数が約80言語という幅広さ、前述の外国特許出願時におけるワンストップ・サービスなど、守備範囲の広さが大きな競争優位性に繋がっている。

今期を初年度とする第四次中期経営計画において、2021年3月期「ROE15%以上」を目標として掲げている。
2018年3月期のROEは17年3月期に比べ上昇した。関係会社清算益14百万円を特別利益に計上したこともあるが、売上高経常利益率も前期に比べ0.8ポイント改善しており、上記目標実現に向けた収益性向上の基盤作りは進んでいるようだ。

2018年3月期決算概要
増収増益。売上、利益ともに予想を上回り、過去最高を更新。

売上高は前期比3.9%増の106億18百万円。主力の翻訳事業が医薬、工業・ローカライゼーション分野を中心に好調。派遣事業、通訳事業も2桁増収だった。相対的に収益性の高い翻訳事業の利益率がさらに改善したことに加え、売上高構成比も上昇したため全体の粗利率は1.4ポイント上昇。
営業利益は同15.0%増の8億2百万円。人件費中心に販管費も増加したが、増収効果で吸収した。
売上、利益ともに予想を上回り、過去最高を更新した。

①翻訳事業

増収増益

<医薬>

国内及び外資製薬会社との安定した取引に加え、CROや医療機器関連企業からの受注が拡大した。

<工業・ローカライゼーション>

自動車関連企業からの受注が好調だったことに加え、17年11月に子会社化した(株)メディア総合研究所が寄与した。

<特許>

特許事務所からの受注が好調に推移した。

<金融・法務>

企業の管理系部署との取引は拡大しているものの、金融機関からの受注が伸長せず減収となった。

②派遣事業

増収増益
金融関連企業やITサービス関連企業、医薬品関連企業からの求人が好調に推移した。

③通訳事業

増収増益
大手情報通信関連企業や金融関連企業、IR通訳案件などの受注が好調だった。

④語学教育事業

減収減益
(株)アイ・エス・エス・インスティテュートが運営する通訳者・翻訳者育成講座の集客が前期を下回った。

⑤コンベンション事業

減収減益
大型国際会議の多かった前期の反動で低調に推移した。

⑥その他

増収減益
外国への特許出願に伴う明細書の作成や出願手続きを行う(株)外国出願支援サービスが好調に推移したことに加え、(株)メディア総合研究所のIT事業の売上が加わった。

売上債権の増加などで流動資産は前期末比1億51百万円の増加。(株)メディア総合研究所の子会社化による無形固定資産(のれん)の増加などで固定資産は同4億78百万円増加し、資産合計は同6億29百万円増加の57億41百万円となった。仕入債務および賞与引当金の増加などで負債合計は同1億68百万円増加の18億1百万円となった。利益剰余金の増加などで純資産は同4億61百万円増加の39億39百万円となった。
この結果自己資本比率は前期末の68.0%から68.6%へ0.6ポイント上昇した。

税金等調整前当期純利益は増加したが、法人税等の支払額も増加し営業CFのプラス幅は縮小した。
(株)メディア総研の子会社化に伴い投資CFのマイナス幅は拡大し、フリーCFはマイナスに転じた。
財務CFはほぼ変わらず。キャッシュポジションは低下した。

2019年3月期業績予想
増収増益、3期連続で過去最高更新へ

売上高は前期比13.0%増の120億円を計画。全セグメントで増収の予想。(株)メディア総研がフル寄与する。主力の翻訳事業が2桁増収で粗利率も上昇。
営業利益は12.2%増の9億円の予想。(株)メディア総研のコストも加わり販管費は同25.3%増加するが吸収する。
売上高、利益ともに3期連続して過去最高更新へ。
配当は前期比6円/株増配の35.00円/株の予定で、5年連続の増配。予想配当性向は19.6%。

①翻訳事業

AI・ICTなどの最先端技術を積極的に取り込み、翻訳制作の生産性向上、社内業務プロセスの効率化に取り組む。
また引き続き、医薬、工業・ローカライゼーション、特許、金融・法務の主要4分野における分野特化戦略を推し進め、専門性を強化し、シェア拡大を図る。
*医薬分野
主要ターゲットであるメガ・ファーマへの深耕を図り、開発関連文書の受注拡大を推進する。

*特許分野
企業の知的財産関連部署の開拓と拡販を図る。

*工業・ローカライゼーション分野
自動車、電機・機械、エネルギー、情報通信・ITの4つの専門領域を主軸とし、各種ツールやソフトウェアを積極活用して差別化を進める。

*金融・法務分野
企業の管理関連部署からの受注拡大を図り、顧客企業内におけるシェア向上を図る。

②派遣事業

企業内での多様な需要を満たす通訳者・翻訳者の確保を最優先に、製薬企業、情報通信関連企業、金融関連企業での業績拡大を目指す。

③通訳事業

製薬・金融・情報通信業界における売上拡大に加え、IR通訳業務のさらなる拡大を目指す。関西圏・中部圏における営業強化にも取り組む。

④語学教育事業

首都圏における通訳訓練ニーズの確実な取り込みと翻訳者育成の拡充に加え、受講生のニーズに合わせた講義内容の充実を図る。法人研修の売上拡大にも取り組む。

⑤コンベンション事業

官公庁や学会・財団が主催する国際会議や学術会議に積極的に対応するとともに、一般企業のイベントニーズ獲得も目指す。

⑥その他の事業

(株)外国出願支援サービスの特長を生かしたサービス展開を推進する。

今後の戦略 ~第四次中期経営計画~

2018年3月期をもって第三次中期経営計画が終了し、新たに2021年3月期を最終年度とする第四次中期経営計画を策定・発表した。

(1)第三次中期経営計画のレビュー
①業績目標

売上高が未達だったものの、概ね目標を達成することが出来た。

②施策

3つの重点施策についての評価は以下の通り。

「顧客満足度向上のための分野特化戦略のさらなる推進」

医薬分野を中心として同社の強みである技術専門性を活かし、翻訳工程の受託等、新たなサービスの提供や顧客の開拓に成功し、翻訳事業の4分野すべてを成長させることができた。

「ビジネスプロセスの最適化による生産性向上」

ISMS認証、ISO17100の認証取得によりサービスの信頼性は向上した。
一方、ICTの活用による業務改善は一部に効果が見られるものの引き続き課題として取り組む必要がある。

「ランゲージサービスにおけるグループシナジーの最大化」

ISSと翻訳センターのクロスセリングなど、営業の相互作用で各事業が拡大した。また、拡大する組織を効率的に運営することができた。満足のいく成果が上がったと考えている。

(2)第四次中期経営計画について

企業のグローバル展開が加速し、外国語ビジネスのニーズ拡大が見込まれる中、第三次中期経営計画の成果と課題を踏まえ、2019年3月期から2021年3月期までの3 ヵ年における中期経営計画を策定した。

第四次中計の中心となるのが「機械翻訳の活用」だ。
専門性の高い産業翻訳においては、「機械翻訳によるアウトプットの洗練度は低く、利用には値しない。」というのが従来の認識であったが、機械翻訳技術の進歩は目覚ましく、制作工程、顧客の内製化進展など、同社を含めた翻訳会社にとって大きな変化をもたらすことを見据えた上で、基本方針に掲げているように、ビジネスモデルの転換によってさらなる成長を目指すのが第四次中期経営計画のメインテーマである。

②重点施策の具体的な取り組み
◎ソリューション提案力の強化:機械翻訳を活用した新たなビジネスモデルの構築

企業のグローバル展開が加速する環境において、一段と顧客満足度の高いサービスを提供するため、専門特化サービスの集合体としての強み・価値を訴求しながら、各種ツール・ソフトウェアを活用した翻訳業務の効率化を提案する。

具体的な取り組みは以下のとおりである。

資本参加した(株)みらい翻訳の人工知能(AI)を用いた機械翻訳エンジンを顧客企業に外販。
手間及びコスト面から自社のみでは翻訳データを収集することが難しい顧客に対し、人手翻訳により機械翻訳の成長に必要な翻訳データの蓄積を支援。
外販した機械翻訳に翻訳データを学習させることで機械翻訳を最適化(カスタマイズ)し、翻訳精度を向上させる。
この循環を構築して顧客との関係性を一層強固なものとし、顧客内シェアの拡大を図る。

単に翻訳の成果物だけではなく、機械翻訳のカスタマイズという他社には真似のできない特徴を武器に、翻訳業務の効率化を提案するコンサルティング企業への転換を目指す。詳細は「5.二宮社長に聞く」を参照。

◎言語資産の活用:機械翻訳活用による生産性向上

翻訳文の品質安定と生産効率の向上を図るため、翻訳支援ツールや機械翻訳を積極的に活用し、言語資産を効果的に運用する環境を整備する。以前より同社では翻訳工程の一部に翻訳支援ツールを取り入れてきたが、機械翻訳の精度が著しく向上するに伴い、機械翻訳エンジンの精度が高いとされる分野・文書において翻訳の精度および制作の作業効率が向上したという。こうした結果を受け、翻訳支援ツールや機械翻訳を積極的に導入し、品質と生産性の双方を向上させる。

◎経営基盤の整備:社内業務の効率化

ICTを活用しながら業務プロセスの標準化と自動化を推進し、引き続き社内業務の効率化に取り組む。特に、業務プロセスの中でも制作管理を担うコーディネータの社内業務を自動化、効率化するシステムを導入する。また、ツール、ソフトウェアを効果的に活用するため、人材の育成と組織機構の最適化を図る。

③業績目標

上記3つの重点施策を着実に遂行し、更なる成長と収益性の改善を追求する。

二宮社長に聞く

2018年6月27日に開催された定時株主総会及びその後の取締役会で新しく社長に就任した二宮俊一郎社長に、翻訳業界の将来と自社の取り組み、投資家へのメッセージなどを伺った。

Q:「第四次中期経営計画では、ビジネスモデルの変革を打ち出しています。まず、翻訳業界の現在と将来をどう見ていらっしゃるかをお聞かせください。」
A:「機械翻訳の精度向上により、翻訳作業が効率化する一方でIT投資の必要に迫られるなど、翻訳会社にとっては大きな変化の時代を迎えることになるだろう。だが、当社にとってはシェア拡大の大きなチャンスだ。」

翻訳業界はこれからかつて経験することの無かった大きな変化の時代を迎えることとなる。
その引き金となるのが「機械翻訳」だ。

ほんの数年前まで機械翻訳は、業務目的の使用に耐えうる正確性や洗練さからは程遠いものだったが、ニューラルネットワーク技術、つまり人工知能(AI)を取り入れたことにより目覚ましい進歩を遂げ、機械翻訳は翻訳工程における重要なツールとなっている。

翻訳工程への導入効果は大きく、当社の場合でも前述の通り作業効率の向上を把握している。今後、機械翻訳の活
用が進めば、翻訳会社は従来の作業工程だけでなくビジネスモデルまで変化を迫られるだろう。

こうした変化に対応できない翻訳会社が現れる可能性は高い。これは翻訳業界最大手で数少ない上場企業である当社にとって、シェアを拡大することのできる大きなチャンスだ。
人手翻訳という労働集約型産業が機械翻訳というツールによって大きな構造改革を迎え、初めて規模のメリットを享受できる。つまり当社のようなIT投資が可能な翻訳会社が有利となる時代が到来する。

Q:「では、具体的なビジネスの取り組みについてお話しください。」
A:「AIを使った機械翻訳の外販と、顧客の翻訳データの管理・運用を通じて、単に翻訳の成果物だけではなく、機械翻訳のカスタマイズという他社には真似のできない特徴を武器に、翻訳業務の効率化を提案するコンサルティング企業への転換を目指す。」

ご存知のように、当社は2017年10月、機械翻訳技術の開発およびサービス提供を行っている(株)みらい翻訳に資本参加するとともに、翌11月には翻訳事業およびシステムソリューション事業を手掛ける(株)メディア総合研究所を子会社化した。(株)みらい翻訳は極めて高度な機械翻訳技術をベースとしたAI搭載の機械翻訳エンジンを開発しており、国内有数の機械翻訳開発会社だ。

ただ、AIを有効に活用するために重要なのは豊富なデータだ。AIはそのアルゴリズムがいくら優れていても大量のデータを使って訓練を積み重ねていかないと単なる箱であり、「賢いエンジン」には成長しない。
では翻訳の場合、翻訳のデータがどこに集まるかというと当然翻訳会社ということになる。また「ボリューム=売上規模」とすれば、ボリュームが最も集まるのは業界最大手の当社となる。

つまり当社はAIを使った機械翻訳において、「優れたエンジン」と「大量の翻訳データ」を有する数少ない企業だ。
特に日本で一番翻訳データが集まりやすい会社であるという点は強力な参入障壁であり、ここから他社が当社を追随するのは極めて難しいのではないか。
このポジションを最大限に活かして従来とは違ったアプローチで事業を展開していく。

まず、(株)みらい翻訳の機械翻訳を顧客に販売する。ただ、単に売り切るというのではなく顧客の業種などに応じてカスタマイズを加えた「個社専用エンジン」を提供する。
AIは使っていれば勝手に成長するものではない。ユーザーのニーズに適したエンジンに育てるには大量の翻訳データに加え、エンジン自体のカスタマイズが必要だが、(株)みらい翻訳の機械翻訳はエンジン自体をカスタマイズできる数少ない機械翻訳だ。

次に、(株)みらい翻訳の機械翻訳の優秀さを理解し、導入していただいた顧客には、機械翻訳成長のために必要な翻訳データの蓄積をお手伝いする。
機械翻訳の成長に必要なのは日・英翻訳であれば、日本文と英文1文ずつをマッチングさせた対訳データだが、顧客が自社のみでこのデータを十分に収集・蓄積することは難しい。
またこの作業を外部に委託しようと思えばある程度のコストが必要となる。
そこで、その都度、当社の人手翻訳をご利用いただき、当社が機械翻訳で使用できるように翻訳データを管理・運用して提供し、顧客はそのデータを使ってエンジンに学習させ機械翻訳の精度を向上させる。
この循環を構築し、当社と顧客の関係性を一層強固なものとし、当社の顧客内シェアの拡大を図る考えだ。

このように、当社は、単に翻訳の成果物だけではなく、豊富な翻訳データ量と機械翻訳のカスタマイズという他社には真似のできない特徴を武器に翻訳業務の効率化を提案するコンサルティング企業への転換を目指す。

Q:「機械翻訳外販の反応はどうですか?」
A:「機械翻訳導入は翻訳作業の効率化だけでなく『働き方改革』の実現にも有用。手応えを感じている。」

当社の既存顧客や、(株)みらい翻訳の有するネットワークなどを使って、翻訳ニーズの強い企業を中心にアプローチしている。
まだスタートしたばかりなので明確なことは申し上げにくいが、機械翻訳導入による飛躍的な作業効率の向上は、日本企業が最も取り組まなければならない課題の一つである「働き方改革」にも大きく貢献するものであるため、経営マネジメント層からも大きな関心を持っていただいている。

Q:「翻訳業界および御社も大きな変化を迎える中、最も必要なリソースはなんでしょうか?また、課題はありますか?」
A:「翻訳だけでなくIT やAIの知識が豊富で、言語サービスのプロとして顧客に適切な提案のできる人材が必要だ。その点で当社のコーディネータは最適な人的資源。彼らの優れた知見を活かして、サービスの高付加価値化を図る。」

機械翻訳の外販及び翻訳データの管理・運用に対応するには、いわばSIer(システム開発会社)的な提案のできる人材が必要だ。
ただ単に翻訳に詳しいだけでは不十分で、ITやAIの知識が豊富で、言語サービスのプロフェッショナルとして顧客に適切な提案のできる人材でなくてはならない。
その点で当社のコーディネータは最適な人的資源だ。
彼らの優れた翻訳の知見と機械翻訳の活用でサービスの高付加価値化を図る。

翻訳業界の変化に対する理解は社内に概ね浸透していると感じている。
ただ、今までに経験したことの無い大きな変化であるので、より一層理解を深めてもらわなければならず、その理解や浸透を進めるのが新社長としての私の重要な仕事の一つであると考えている。

Q:「では最後に株主や投資家にメッセージをお願いいたします。」
A:「業界が大きく変化する中、今後さらにその地位を強固なものとするために新たなビジネスモデルへの転換を図り、シェア拡大に取り組んでいく。是非とも中長期の視点で、当社の成長を応援していただきたい。」

機械翻訳が台頭しつつある翻訳業界において、同業他社は機械翻訳の売り切りや、人手翻訳から機械翻訳への完全な転向などを打ち出している。これに対して当社は、機械翻訳はあくまでも道具に過ぎず、重要なのはアウトプットとしての文書や言語のプロフェッショナルとしてのサービスであり、「人が提供する価値」を追求していきたいと考えている。当社は翻訳業界の変化を好機ととらえ、業界における地位をさらに強固なものとするため、新たなビジネスモデルへの転換を図り、翻訳市場におけるシェア拡大に取り組んでいく。是非とも中長期の視点で、当社の成長を応援していただきたい。

今後の注目点
第三次中期経営計画の数値目標ははほぼ達成し、さらなる高みを目指して「機械翻訳の活用」を主軸とした第四次中期経営計画がスタートした。
足元の事業環境が良好な中で、翻訳業界の大変動期を見据えてあえてビジネスモデルの変革に取り組むことが出来るのも、業界最大手の同社ならではの地力によるものといえるだろう。
まだスタートしたばかりで不透明な要因も多く、明確な実績が今期、来期で見え始めることは難しいだろうが、進捗状況については短期、中長期両方の視点からウォッチしていきたい。
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書

最終更新日:2018年6月28日

<基本的な考え方>
当社ではコーポレート・ガバナンスの重要性を踏まえ、「コンプライアンス重視」を基本的な経営方針のひとつとして位置付けております。コンプライアンス体制を整備・確立するために、グループ企業行動規範を定め、コンプライアンス担当役員を長とした委員会を組織しております。これにより、社内のリスク管理体制の整備に努めるとともに、翻訳業界のリーディング・カンパニーに求められる社会的責任を果たしていきたいと考えております。
当社におけるコーポレート・ガバナンスについては、取締役会が経営方針等の最重要事項に関する意思決定機関および監督機関としての機能を担い、3名の社外監査役から成る監査役会が経営の透明性の向上および監視機関としての機能を担っております。また、取締役会の監督機能の一層の強化および適切な意思決定を図ることを目的として社外取締役1名を選任しております。

<実施状況>
JASDAQ上場企業として、コーポレートガバナンス・コードの基本原則をいずれも遵守している。

株式会社インベストメントブリッジ
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