(9327)株式会社イー・ロジット 計画通りの大幅増益を達成

2021/07/08

 

 

 

角井 亮一 社長

株式会社イー・ロジット(9327)

 

 

企業情報

市場

東証JASDAQ

業種

倉庫・運輸関連業(倉庫・運輸関連業)

代表取締役CEO

角井 亮一

所在地

東京都千代田区神田練塀町68番地 ムラタヤビル5階

決算月

3月

HP

https://www.e-logit.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,619円

3,400,000株

5,504百万円

9.6%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

未定

57.60円

28.1倍

605.03円

2.7倍

*株価6/21終値。各数値は21年3月期決算短信より。

 

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2018年3月(実)

4,794

234

235

158

58.68

5.25

2019年3月(実)

7,446

381

389

269

99.89

6.75

2020年3月(実)

8,385

84

102

76

28.35

2.00

2021年3月(実)

10,696

238

241

151

53.80

3.00

2022年3月(予)

13,575

323

325

197

57.60

未定

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。

 

 

株式会社イー・ロジットの会社概要、成長戦略、業績動向、角井社長へのインタビュー等をご紹介致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年3月期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.角井社長に聞く
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

 

今回のポイント

  • 通販事業者に対して商品の保管、ピッキング、梱包及び配送までを行う「物流代行サービス」を中心に、ワンストップのフルフィルメントサービスとして提供。ドミナント展開するFC(フルフィルメントセンター)を利用し荷主の突発的な出荷量増加にも柔軟に対応する「波動対応力」が強力な競争優位性。通販物流・ECのみでなく実店舗も含んだオムニチャネル物流を事業領域とすることを目指している。

     

  • 21年3月の売上高は前期比27.6%増の106億96百万円。新規顧客の獲得に加え、既存顧客の出荷量も拡大した。売上総利益は同58.0%増加し、粗利率も1.5ポイント上昇。出荷量の増加に伴う荷造運賃の増加、新FC開設による商品移動のための労務費・外注費の増加など、先行投資を含んだコスト増を吸収し、営業利益は同180.8%増の2億38百万円。計画通り大幅増益を達成した。配当は前期比1.00円/株増配の3.00円/株とした。配当性向は5.6%。

     

  • 22年3月期の売上高は前期比26.9%増の135億75百万円の予想。トップラインの高い成長を実現するためリソースを集中するとともに営業力を強化。新規顧客の獲得により取引社数が増加するとともに、既存顧客の出荷量が拡大する。営業利益は同35.6%増加の3億23百万円を見込む。2021年6月の埼玉草加FCの新規開設、新卒32名の採用等の先行投資を増収により吸収する。配当は現時点では未定。

     

  • 角井社長に、自社の競争優位性、課題、投資家へのメッセージなどを伺った。「新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、これまでは縁遠いと思われていた70歳代がECを積極的に利用するなど、消費者の行動が大きく変容しています。こうした事業環境を追い風として経営資源を集中し、売上・利益を拡大していきたいと考えています。是非、当社の挑戦を中長期の視点で応援していただきたいと思います」とのことだ。

     

  • 3月の新規上場後、足元の株価は低調な推移となっている。もっともこれは同社に限ったことではなく、多くのEC関連銘柄に見られるもので、いまだ先行き不透明とはいえワクチン接種が進み始めていることから、「コロナ禍 → 巣ごもり需要拡大」というテーマ買いのモメンタムが弱まっているためであろう。

     

  • ただ、コロナ禍による巣ごもり需要とは関係なく、EC市場は拡大が続くことは確実であり、同社を取り巻く事業環境は今後も良好である。また新規FCの開設は短期的にはコスト増要因ではあるものの、既存FC数が拡大すれば新設に伴うコスト増のマイナスインパクトは小さくなり、反対に増収効果が業績に寄与してくる点は理解しておくべきポイントであろう。

     

  • 今期も大幅な増収増益を予想しているが、「大型FCのドミナント展開」や「波動対応力」の競争優位性を武器に、更に業績を大きく伸長させていくことができるかを注目していきたい。

     

     

1.会社概要

通販事業者に対して商品の保管、ピッキング、梱包及び配送までを行う「物流代行サービス」に加え、通販事業者の通販サイトの運営に係わる商品撮影、受注処理及びお問合せ対応等のカスタマーサポートを行う「運営代行サービス」を、ワンストップのフルフィルメントサービスとして、通販事業者や通販利用者(最終顧客)のニーズに対応したサービスを提供。
ドミナント展開するFC(フルフィルメントセンター)を利用し、荷主の突発的な出荷量増加にも柔軟に対応する「波動対応力」が強力な競争優位性。
通販物流・ECのみでなく実店舗も含んだオムニチャネル物流を事業領域とすることを目指している。

 

【1-1 沿革】

2000年2月、角井社長がインターネット通販事業者への物流代行及び物流業務のコンサルティングを行うことを目的として同社を設立。
物流で売上を向上させる「戦略物流」という概念の下、単なる下請けに甘んじるのではなく、積極的な各種提案や自社開発の「WMS:倉庫管理システム」による業務効率化を通じ、商品を購入した最終顧客が「リピートしたくなる」顧客離れが少ない「売上につながる物流」を実現。顧客(荷主)から高い評価を受けて業容は順調に拡大し、2021年3月、東京証券取引所 JASDAQ市場に上場した。

 

【1-2 企業理念など】

以下のようなVISION、MISSION、VALUEを掲げている。

 

Vision

変化を先取りし、人々の感動体験を進化させ続ける

Mission

*グローバルな視点から流通を俯瞰する

*誰よりもその先のお客さまに役立つソリューションを探求する

*通販/小売物流のプロフェッショナル集団を目指す

*最先端テクノロジーを活用する

 

ことにより、高付加価値を実現する、「感動創造」No.1企業を目指す

Value

*常にその先のお客さまのために考え行動し、信頼される存在となる

*圧倒的な提案力で荷主さまと共に成功を創る

*新しい目で、常に学び、自分自身を向上させ続ける

*すぐ・まずやってみる、そして全員でやりきる

*謙虚で素直な心で仕事を楽しむ

 

同社の顧客は荷主であるが、通販サイトで商品を購入した通販利用者(最終顧客)に対し商品を迅速・丁寧に届けることを通じて、物とサービスから得られる感動を提供していくことを経営の念頭に置いており、最終顧客の満足度向上がリピートによる売上増=荷主の満足度向上につながると考えている。

 

 

【1-3 市場環境】

経済産業省の報告によれば、2019年の国内物販系分野のBtoC-EC市場規模は10兆515億円と10兆円台に乗った。2013年の5兆9,931億円からは、CAGR(年平均成長率)9%で拡大している。またEC化率(商取引市場規模に対する、電子商取引市場規模の割合)も毎年上昇を続けている。

 

(経済産業省「電子商取引に関する市場調査(令和2年7月)」を基にインベストメントブリッジ作成)

 

同調査の2020年分の発表はこれからとなるが、同社資料にあるように、新型コロナウイルス感染拡大に伴う、いわゆる「巣ごもり需要」により、ネットショッピングの利用が大きく伸びている。

 

(同社資料より)

 

加えて、ネットショッピング利用世帯(二人以上の世帯)割合は2020年の第1回目の緊急事態宣言解除後も50%超の水準で推移しており、ネットショッピング利用増加は一過性の消費行動ではないことが見て取れる。

 

(同社資料より)

 

こうしたコロナ禍を契機とした消費行動の変容、キャッシュレス決済の普及・拡大、メーカーが自社商材の販売をECサイト上で直接消費者向けに販売するDtoC(Direct to Consumer)の広がりなどにより、EC市場の拡大スピードはさらに加速することが予想される。

 

また、同社では通販物流・ECのみでなく実店舗も含んだオムニチャネル物流を事業領域とすることを目指しているが、オムニチャネルコマース市場は、80兆円まで拡大するとの予測もある。

 

(同社資料より)

 

 

【1-4 事業内容】

(1)サービス内容
物流業務をアウトソーシングする通販事業者に対して、主に「物流代行サービス」「運営代行サービス」を通販事業者や通販利用者(最終顧客)のニーズに対応したワンストップのフルフィルメントサービスとして提供している。
また、物流業務を自社運営する企業に対して「物流コンサルティングサービス」も提供している。
「フルフィルメントサービス」とは、通販サイト運営におけるサイトの構築から受注処理、カスタマーサポート、商品管理、物流代行、配送、代金回収等、通販サイトの運営に係わる代行を一括で提供するサービスのこと。

 

(同社資料より)

 

①物流代行サービス
通販事業者の依頼を受けて商品を預かり、商品管理、ピッキング、流通加工、梱包、配送、代金回収等の一連の物流業務を代行している。
◎定常的サービス

サービス詳細

概要

商品管理

通販事業者から預かった商品の保管、品質、消費期限、数量等の管理を行う。

自社開発のイー・ロジットWMSのデータと実地調査とを照合し、消費期限や数量の差異確認を行うことが可能。

通販事業者に同システムのアカウントを付与し、常にデータを共有している。

ピッキング

FC内に保管された商品の内、配送に必要な商品をピックアップし、梱包場所に運ぶ。QRコード検品等の活用により、作業時の出荷ミスを防止し検品精度の向上による適時適切な商品のピックアップを行っている。

梱包

配送単位ごとに区分けした商品を段ボール等の梱包資材で荷造する。

配送

梱包された商品を宅配業者を通じて購入者に届ける。

 

◎オプションサービス

サービス詳細

概要

流通加工

小分け、カスタム商品(※)のパッケージング、半製品の組み立て等の商品付加価値を向上させる作業を行う。

代金回収

宅配業者が商品を届けると同時にその代金を回収する支払方法「代金引換」を通販事業者の代わりに行う。同社が宅配業者と契約することにより、通販事業者にサービスを提供している。

※カスタム商品
単純に商品を梱包して発送するのではなく、通販事業者から受ける特有の梱包方法(メッセージカード、キャンペーングッズ、付録の同梱等)に対して個々に対応する商品。

 

②運営代行サービス
通販事業者の依頼を受けて商品撮影、商品データのアップ、受注処理、カスタマーサポート等を代行している。

 

◎オプションサービス

サービス詳細

概要

商品撮影

通販サイトに掲載するための商品の撮影及び画像の加工を行う。

商品データのアップ

商品撮影した画像や商品情報を通販サイトにアップする。

受注処理

通販サイトの注文に対する出荷指示等、配送に必要な処理を行う。

カスタマーサポート

購入者や購入希望者等からメールや電話での問合せ対応を行う。

 

③物流コンサルティングサービス
通販物流事業で培った経験によるノウハウの蓄積を活かし、定額制の年間教育プログラム、イー・ロジットクラブでのオンライン教育講座の提供、物流知識や改善のセミナー及び通販事業者の物流現場の改善コンサルティングを提供している。

 

(2)フルフィルメントセンターの運営
同社は2021年6月現在、物流代行サービスの拠点となるフルフィルメントセンター(FC)を以下7カ所運営している。

FC名

床面積(坪)

竣工年月

東京FC(東京都江戸川区)

2,600

2010年10月

埼玉FC(埼玉県八潮市)

8,900

2014年10月

三郷FC(埼玉県三郷市)

6,800

2017年11月

大阪FC(大阪府大阪市)

6,400

2019年4月

足立FC(東京都足立区)

8,400

2019年4月

習志野FC(千葉県習志野市)

4,700

2021年1月

埼玉草加FC(埼玉県草加市)

7,400

2021年6月

2023年3月期には大阪第2FCを新たに開設する予定。

 

新規FC開設にあたっては貸借料・資材購入等の先行投資が発生するが、売上高は新規顧客の稼働とともに年々増加し、通常、営業利益は開設後3年目以降プラスに転じて収益に寄与する。
また、先行投資による利益に対するマイナスインパクトは、既存FCに対する新規FCの割合が下がるにつれて緩和される仕組みとなっている。

 

【1-5 特長・強み】

物流業務のアウトソーシングを受託する同社の特長や強みは以下の通り。

 

(1)大型の物流センターをドミナント展開
FCの開設にあたっては、1か所の床面積5,000坪前後を目安にしており、1,000~2,000坪程度が中心の他社の通販物流センターと比較すると格段に大規模である。
関東エリアでは近隣のFC間の距離を20km以内に開設するドミナント戦略を推進している。

 

◎ドミナント戦略:同社最大の競争優位性「波動対応力」の源泉
大型FCのドミナント展開により、EC通販事業者の突発的な売上増大に対応が可能である。
同社ではこれを「波動対応」と呼んでいる。

 

例えば、荷主Xが販促キャンペーンを実施するため商品出荷量が急増する場合、同社では主に以下の3つの方法で対応する。

 

①FC内で出荷商品を移動
同一FC内の、スペースに余裕のある他の荷主の作業エリアに荷主Xの商品を一時的に移動・保管して対応する。

 

②近隣FCへ出荷商品を移動
他の荷主のスペースにも余裕が無い場合は、近隣FCに荷主Xの商品を移動し、そこで作業を行う。
年末のカレンダー発送などのケースで行われる対応。

 

 

③近隣FCから人員応援
商品の種類が多い場合などは、商品を移動させることは効率的ではないため、近隣FCからスタッフが応援に駆け付ける。

 

商品出荷量の増加は様々なケースがあるため、その時の状況に応じた適切な対応をとるが、①のケースでは「大型FC」であること、②及び③はFC間の距離が20km以内というドミナント展開であることから可能な対応である。
荷主の希望通りに出荷を行うことで売上を確保しつつ、配送コストの削減やリードタイムの短縮を実現しており、この「波動対応」が可能な点は、同社最大の競争優位性であり、今後も更なるブラッシュアップを図る考えである。

(同社資料より)

 

(2)マスカスタマイゼーション
物流の「入荷」「保管」「梱包」「ラッピング」「出荷」という各ステップにおいて、同業他社、特に大手プラットフォーマーやロボティクスによる効率化を図っているケースでは、すべての荷主に対して同じオペレーションを適用することが一般的である。

 

これに対し同社では、荷主各社の独自性を支援しつつ、ベースとなる作業は全社統一である。
これによって、荷主の要望に合わせた配送方法、手の込んだラッピングや資材の使用などで、顧客のブランドの独自性のある世界観や価値観を表現することができる。作業は全社統一であるため効率性も維持できている。

 

これはミッションにある「感動創造」No.1企業を目指す同社ならではの取り組みである。

(同社資料より)

 

(3)IT×物流
同社では、倉庫内の商品の保管場所、消費期限、入出荷、数量等の情報を管理するソフトウェアであるWMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)を自社開発している。

 

複数のEC通販事業者(荷主)の通販サイトの仕様に合わせた通販カートシステムと連携することで、複雑な在庫管理をシステムで管理している。
また、自社のシステム部門で内製化しているため、EC通販事業者のシステム環境と柔軟に連携することができ、スムーズな立ち上げが可能である。新サービス導入の取り組みにも積極的で、ITの活用により物流サービスの改善と品質向上を徹底して追及している。

 

(4)通販物流に特化し、ノウハウを深耕
設立から21年以上、通販物流代行を中心にサービスを展開してきた中で、物流の中でも難易度の高い「多品種少量」に対応してきたほか、カー用品、アパレル、サプリ、化粧品、ワイン等様々なジャンルの商品に対応し実績とノウハウを蓄積してきた。また、現場実務と物流コンサルティングによりノウハウを一段と深堀りしてきた。

 

こうした信頼と信用の積み重ね、蓄積されたノウハウが高く評価され、既存顧客から多数の新規顧客の紹介を受け顧客基盤の強化が進んでいる。

 

蓄積されたノウハウ、強固な顧客基盤は同社の「見えない資産」として評価すべきであろう。

 

(5)最前線である現場を重視
FCにおいては全スタッフが「高品質」と「改善活動」を常に意識している。

 

「当たり前」を徹底してこだわり抜き、高品質を実現・維持している。誤出荷など問題が発生した際には、原因究明と改善を実施するほか、全スタッフでの共有までを必ず行うことを徹底している。
また、様々な工程に現場スタッフからの改善提案を積極的に導入しており、改善提案数は年間7,200件を超えている。
社内外に対してサービス提供する物流人材の育成・教育を実施している。厚生労働省が後援するビジネス・キャリア検定試験合格講座も実施し、多数のスタッフが資格を保有している。

 

 

【1-6 成長戦略】

顧客ニーズに応える3つの軸を強化することで売上・利益の成長を図る。

 

(1)バリューチェーン展開
フルフィルメントの前工程(WEBマーケティングなど)と後工程(再購入プロモーション)をカバーし、通販事業者が意識するカスタマージャーニー(※)を向上させる=見込み客の顧客化に繋がるソリューションを提供する。

 

※カスタマージャーニー
顧客が商品やサービスを知り、購入・利用意向をもって実際に購入・利用するまでに、顧客が辿る一連の体験を「旅」に例えたもの。
通販事業者が見込み客を顧客化し、自社商品のファンとなってもらうためには、顧客の辿る「旅」全体を通した顧客体験のマネジメントが必要であり、顧客体験を効率的にマネジメントし、適切なマーケティング施策を打っていくためには、カスタマージャーニーを地図上の旅のように可視化して捉える、カスタマージャーニーマップの作成が必要である。

 

(2)対象顧客・エリアの拡大
D2Cなどの有望市場を中心にサービスを拡充し、新規顧客を継続的に獲得する。
成長著しいASEAN地域など海外展開も視野に入れている。

 

(3)FCの開設と進化
新規顧客の獲得と既存顧客の出荷量拡大に対応するため、継続的に新規FCを開設する。
顧客ニーズに合わせFC運営を進化させる。
FC運営の効率化と生産性向上を図る。

 

(同社資料より)

 

また、従来の通販物流・ECにとどまらず、実店舗も含めたオムニチャネル市場を事業領域とする考えで、そのための経営資源確保にも取り組んでいる。

 

 

【1-7 株主還元】

株主還元を重要な経営課題と認識しているが、現在成長過程にあり、事業規模の拡大には新規のフルフィルメントセンターの賃貸借や設備の購入等の先行投資が必要であるため、内部留保を充実させていくことも必要であると認識している。
そのため今後も経済動向、経営成績及び財務状況等を総合的に勘案し、株主還元策として安定的に配当を実施していく方針であり、配当性向は30%を目指す。

 

2.2021年3月期決算概要

(1)業績概要(非連結)

 

20/3期

対売上比

21/3期

対売上比

前期比

予想比

売上高

8,385

100.0%

10,696

100.0%

+27.6%

+65

売上総利益

530

6.3%

838

7.8%

+58.0%

+33

販管費

446

5.3%

600

5.6%

+34.6%

+6

営業利益

84

1.0%

238

2.2%

+180.8%

+26

経常利益

102

1.2%

241

2.3%

+134.8%

+24

当期純利益

76

0.9%

151

1.4%

+98.0%

+19

*単位:百万円

 

大幅な増収増益。売上高は過去最高を更新。
売上高は前期比27.6%増の106億96百万円。新規顧客の獲得に加え、既存顧客の出荷量も拡大した。
売上総利益は同58.0%増加し、粗利率も1.5ポイント上昇。出荷量の増加に伴う荷造運賃の増加、新FC開設による商品移動のための労務費・外注費の増加など、先行投資を含んだコスト増を吸収し、営業利益は同180.8%増の2億38百万円。計画通り大幅増益を達成した。
配当は前期比1.00円/株増配の3.00円/株とした。配当性向は5.6%。

 

(2)財政状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

20/3月末

21/3月末

増減

 

20/3月末

21/3月末

増減

流動資産

1,874

3,459

+1,584

流動負債

1,624

2,314

+690

現預金

877

2,249

+1,372

仕入債務

505

726

+221

売上債権

755

981

+226

短期借入金

100

93

-7

前払費用

182

207

+24

未払金

825

1,073

+247

固定資産

1,404

1,557

+152

固定負債

569

645

+75

有形固定資産

534

470

-63

長期借入金

467

471

+3

建物付属設備

307

288

-18

負債合計

2,193

2,959

+765

投資その他の資産

851

1,074

+223

純資産

1,085

2,057

+971

資産合計

3,279

5,016

+1,737

負債純資産合計

3,279

5,016

+1,737

*単位:百万円。

 

株式上場に伴う公募増資による現預金増加などで資産合計は前期末比17億37百万円増加し50億16百万円。
売上増に伴う仕入債務、未払金増加などで負債合計は同7億65百万円増加し29億59百万円。
公募増資による資本金、資本剰余金の増加などで純資産は同9億71百万円増加の20億57百万円。
自己資本比率は前期末より7.9ポイント上昇し41.0%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

20/3期

21/3期

増減

営業CF

242

830

+588

投資CF

-265

-265

+0

フリーCF

-23

565

+588

財務CF

35

806

+771

現金・現金同等物残高

877

2,249

+1,372

*単位:百万円。

 

税引前当期純利益の増加で営業CFのプラス幅は拡大、フリーCFはプラスに転じた。
株式上場時の株式発行による収入で財務CFのプラス幅は拡大。
キャッシュポジションは上昇した。

 

3.2022年3月期業績予想

【3-1 業績予想】

 

21/3期

対売上比

22/3期(予)

対売上比

前期比

売上高

10,696

100.0%

13,575

100.0%

+26.9%

営業利益

238

2.2%

323

2.4%

+35.6%

経常利益

241

2.3%

325

2.4%

+34.9%

当期期純利益

151

1.4%

197

1.5%

+30.4%

*単位:百万円。予想は会社側発表。

 

 

21/3期

上期

下期

22/3期

上期(予)

前年同期比

下期(予)

前年同期比

売上高

5,302

5,394

6,311

+19.0%

7,264

+34.6%

営業利益

192

46

-19

342

+637.3%

*単位:百万円。予想は会社側発表。

 

大幅な増収増益を予想
売上高は前期比26.9%増の135億75百万円の予想。
トップラインの高い成長を実現するためリソースを集中するとともに営業力を強化。新規顧客の獲得により取引社数が増加するとともに、既存顧客の出荷量が拡大する。
営業利益は同35.6%増加の3億23百万円を見込む。
2021年6月の埼玉草加FCの新規開設、新卒32名の採用等の先行投資を増収により吸収する。

 

上期・下期で見ると、埼玉草加FCの新規開設による賃借料やマテハン等の資材購入費用などの増加、32名の新卒採用による人件費の増加などから、上期の営業損益は19百万円の損失となるが、増収と新卒社員の戦力化により下期は前年同期比7倍強の3億42百万円と大きく増加する。

 

配当は現時点では未定。

 

【3-2 主要施策】

B to C-EC市場の更なる拡大が見込まれる中、今期も持続的成長のための投資フェーズと捉え、新規FCの開設や人材育成・採用等、先行投資を機動的に実施する。

 

主な施策は以下の通り。

現場力の強化

*リーダーの経営力アップ

*大卒を中心とした新卒採用と教育プログラムの策定

営業力の強化

*新規FCの開設:2021年6月 埼玉草加FCを開設

*PULL型に加えPUSH型営業の更なる強化

*FC1坪当たり売上高の更なる拡大

(現在1坪当たり月商は23,000円だが、これまでの経験値から、33,000円まで上昇余力がある)

既存顧客の売上アップ

*FCのドミナント展開による波動対応力の更なる強化

*運営代行サービスの拡充による顧客満足度の向上

*カスタマージャーニーのブラッシュアップ

 

 

 

4.角井社長に聞く

角井社長に、自社の競争優位性、課題、投資家へのメッセージなどを伺った。

 

Q:「まず初めに御社が掲げている『戦略物流』というコンセプトについて、もう少し具体的なイメージをお話しいただけますか?」

 

例えば、通販で注文したお客様が商品を受け取りますよね。注文した商品が届いた時、みなさんは通常、わくわくして開封すると思いますが、その時、思った通りの商品が届いたと、喜んでいただける場合もあれば、落胆してしまう場合もあるわけです。
同じ段ボールを使い、同じ緩衝材を使い、同じ商品が入っていても、梱包の仕方などで、受け取った時の印象が異なってしまう。
喜んでいただければ、「また注文しよう」「違う商品もあの通販を使おう」となりますが、がっかりしてしまえばもう注文しないということにもなりかねません。

 

他に、通販事業者様の戦略、商品コンセプトに沿った梱包を行いましょうといった提案も「戦略物流」の一つです。
例えば、SDGsに注力している企業であれば、緩衝材を環境にやさしい素材の使用をお勧めするといったものです。

 

このように、お客様がまた注文したいと思って頂けるように、非常に細かい点まで注意を払って物流を代行するのが当社の戦略物流です。
物流というと、一般的にはコストセンターなのでいかに生産性を上げるか、効率化を図るかという発想が中心ですが、当社はそうではなく、いかにして売上を上げるか、商品の付加価値を高めるかが「物流」の役割だと考えています。

 

 

Q:「こうしたきめ細かい取り組みは当然全社で共有していると思いますが、そのためのベースになるビジョンやミッションについてもご説明ください」

 

ビジョンは経営幹部によって、ミッション、バリューは従業員も参加する形で決めていきました。ですので、私の想いと社員の想いが一致したものとなっています。

 

ビジョンに「変化を先取りし、人々の感動体験を進化させ続ける」、ミッションに「『感動創造』No.1企業を目指す」とあるように、最終的に商品を購入していただいたお客様に感動を体験していただこうという想いが大きな柱となっています。
一般的にはビジョンやミッションと言えば、直接のお客様に対する姿勢や想いを述べるのでしょうが、当社の場合はその先にいるお客様に向けたものです。

 

先程お話ししたように、商品が届いた時に喜んでいただければ、「また注文しよう」「違う商品もあの通販を使おう」とリピートオーダーに繋がり、それは当社の直接のお客様、荷主様の満足に繋がるのです。

 

また当社では、感動体験を創り出すためには、作業現場であるFCにおける「高品質」と「改善活動」も重視しています。
誤出荷など問題が発生した際には、原因究明と改善を実施するほか、全スタッフでの共有を徹底しています。
また、現場スタッフからの改善提案数は年間7,200件を超えていますが、これもパートやアルバイトも含めた全社員・スタッフがビジョン、ミッション、バリューを自分事として共有しているからです。

 

これからは当社の規模もますます大きくなっていきますから、その場合でも、経営幹部の育成などを通じてこれらをしっかりと共有できるようにしていこうと考えています。

 

 

Q:「続いて御社の競争優位性についてお話しください」

 

当社の最大の強み・特長は「波動対応力」です。
荷主様の突発的な出荷量増加にも柔軟に対応できる点は、高くご評価いただいており、それまでは他社を利用していたのが、お試しで使って頂いた結果、当社に切り替えたというケースも多く、大きな強みとなっています。
この源泉は、FCのドミナント展開にあるわけですが、今後、FCを年間に1、2か所新規開設していく中でボリュームもどんどん大きくなりますから、波動対応力のブラッシュアップに向け、主要なリーダークラスの経営力向上に取り組んでいます。

 

また、当社の競争優位性としては、コンサルティング能力を挙げることができます。
物流の中でも難易度の高い「多品種少量」に対応してきたほか、様々なジャンルの商品に対応し実績とノウハウを蓄積してきましたし、現場実務と物流コンサルティングによりノウハウを一段と深堀りしてきました。
こうして蓄積させてきたノウハウをご評価いただき、既存のお客様から多数の新規のお客様をご紹介いただいてきました。
そのためこれまで、いわゆるプッシュ型の営業はほとんど行っておらず、非常に効率的に顧客開拓を行うことができています。

 

 

Q:「御社が成長を追求するうえでの課題、取り組まなければならないことはどんな点だと認識されていますか?」

 

「WMS:倉庫管理システム」の進化です。
我々は今後通販・ECのみでなく、実店舗も含めたオムニチャネルに事業領域を拡大させていきますから、FCのみでなく、実店舗も含めて在庫を一元的に管理しながら、これまで同様に商品を受け取るお客様には感動体験を、荷主様に対しては波動対応を提供していかなければなりません。
そのためにはこれまでにはないWMSを開発する必要がありますから、構想力や人材も含めたシステム開発投資に取り組んでいきます。

 

また、新規顧客を開拓していく上で、物流業界だけではなく、異業種の人材採用も必要と考えています。
それぞれの業界のことを熟知している人材を採用することで、その業界へのアプローチの仕方が理解できます。
加えて、FCは物流センターであると同時に付加価値を生み出す工場でもありますから、生産管理や労務管理といった分野の専門人材も必要です。

 

 

Q:「では、株主や投資家へのメッセージをお願いします」

 

新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、ネット通販、ECが拡大しています。しかしこれはコロナ禍が終息すると低調に転じるようなものではありません。これまでは縁遠いと思われていた70歳代がECを積極的に利用するなど、消費者の行動が大きく変容しているのです。
当社は、こうした事業環境を追い風として経営資源を集中し、売上・利益を拡大していきたいと考えています。
是非、当社の挑戦を中長期の視点で応援していただきたいと思います。

 

5.今後の注目点

3月の新規上場後、足元の株価は低調な推移となっている。もっともこれは同社に限ったことではなく、多くのEC関連銘柄に見られるもので、いまだ先行き不透明とはいえワクチン接種が進み始めていることから、「コロナ禍 → 巣ごもり需要拡大」というテーマ買いのモメンタムが弱まっているためであろう。
ただ、コロナ禍による巣ごもり需要とは関係なく、EC市場は今後も拡大が続くことは確実であり、同社を取り巻く事業環境は今後も良好である。
また新規FCの開設は短期的にはコスト増要因ではあるものの、既存FC数が拡大すれば新設に伴うコスト増のマイナスインパクトは小さくなり、反対に増収効果が業績に寄与してくる点は理解しておくべきポイントであろう。
今期も大幅な増収増益を予想しているが、「大型FCのドミナント展開」「波動対応力」の競争優位性を武器に、更に業績を大きく伸長させていくことができるかを注目していきたい。

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

5名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2021年6月29日

 

<基本的な考え方>
当社は、持続的な事業成長を達成することによって、企業価値の最大化を図ることを目標としております。そのためにコンプライアンスの徹底、適切な情報開示等、透明性の高いコーポレート・ガバナンス体制の構築及び企業の社会的責任を果たすべく、経営環境の変化に迅速に対応し、最適な経営管理体制の選択・改善・強化の努力を行ってまいります。
上記内容を実行することによって、株主・取引先・役職員等のすべてのステークホルダーから信頼を得て、良好な関係を構築してまいります。

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

【原則4-8 社外取締役の有効な活用】

当社は独立社外取締役を2名選任しております。また、監査役3名全員が独立社外役員であり5名の独立社外役員を選任しております。取締役会においては、5名の独立社外役員が属性に応じた役割・責務を十分に果たしており、業務執行に対する適切な監督が行われる体制が保たれていると判断しておりますが、今後の当社を取り巻く環境の変化等を勘案しながら、独立社外取締役の増員の必要性と候補者の選任を検討してまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示>

原則

開示内容

【原則1-4 政策保有株式】

当社では、現時点において政策保有株式としての上場株式を保有しておりません。

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】

当社は、株主及び投資家の皆様との建設的な対話の促進に取り組んでおります。

(i) 管理部経営企画課をIR窓口と定め、管理部管掌の役員をIR担当役員としております。

(ii) 管理部経営企画課が各部と連携し、情報収集を行っております。

(iii) 株主総会、決算説明会に加え、ホームページを通じた情報提供を行ってまいります。

(iv) 対話を通じて得られた株主・投資家からの意見は、都度、経営陣に報告する体制を取っております。

(v) 決算発表前の一定期間は、株主・投資家との対話が行われないようIR活動を制限することとしております。インサイダー情報の管理につきましては、「インサイダー取引防止規程」に基づき、インサイダー情報の管理の徹底を図ってまいります。

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