(6094)株式会社フリークアウト・ホールディングス 営業利益は赤字から黒字に転換

2021/01/14

 

 

本田 謙 社長 Global CEO

株式会社フリークアウト・ホールディングス(6094)

 

 

会社情報

市場

東証マザーズ

業種

サービス業

代表者

本田 謙

所在地

東京都港区六本木6-3-1

決算月

9月末日

HP

https://www.fout.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

949円

16,516,360株

15,674百万円

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00円

278.22円

3.4倍

*株価は11/20終値。発行済株式数は直近期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2015年9月(実)

4,217

96

95

65

5.23

0.00

2016年9月(実)

5,792

358

561

394

30.72

0.00

2017年9月(実)

12,019

601

1,208

842

64.12

0.00

2018年9月(実)

14,745

-532

307

25

1.94

0.00

2019年9月(実)

21,709

-1,270

-1,497

-3,512

0.00

2020年9月(実)

24,878

211

-221

-669

0.00

2021年9月(予)

27,000

200

100

未定

0.00

* 予想は会社予想。単位は百万円。2016年9月1日付で1:2の株式分割を実施。EPSは遡及して調整。

 

 

株式会社フリークアウト・ホールディングスの2020年9月期決算概要などを報告します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年9月期決算概要
3.2021年9月期業績見通し
4.新・中期計画の概要
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 最適な消費者に最適なタイミングで最適なメッセージを伝えたいという広告主の課題を、AI(人工知能)を用いた先端テクノロジーで解決するマーケティング・テクノロジー・カンパニー。広告主や広告代理店が、広告主の利益を最大化するために効率的にインターネット広告を買い付け、配信するプラットフォーム「DSP(デマンドサイド・プラットフォーム)」の運営やOEM提供を行う「DSP事業」が事業の中心。「最大級のデータ保有量」、「良質な広告掲載面の確保」、「優れたアルゴリズム構築のための積極的な投資」などが大きな強み・特長。広告に留まらず様々な分野でテクノロジーによって「人に人らしい仕事を」提供し、創造的な社会づくりに貢献する事を経営理念としている。

     

  • 20/9期は14.6%増収、EBITDAは前期から約10億円改善し5億10百万円となった。21/9期は売上高が前期比8.5%増の270億円、EBITDAは17.4%増を見込む。また、11月17日には新・中期計画を発表した。未達に終わった前・中計の利益目標をあらためて目指し、定性的な諸施策も掲げ、23/9期に売上高450億円、EBITDA30億円を目指す。

     

  • 20/9期は新型コロナの影響を受けながらも営業利益・EBITDAは会社予想を上回り、苦戦しつつもまとめてきた印象。足元では新たな新型コロナの波が来ているが、各国の姿勢は経済を回しながら感染拡大を抑える姿勢にあり、20/9期下期のような状況には陥らないだろう。こうした中、新・中期計画が発表された。今回の施策の中でも注目はPlaywireの成長、業績は1Q偏重となっており、21/9期は1Qから注目したい。株価は低調に推移しており、21/9期の低水準の利益予想を既に織り込んだレベルにあると考える。逆に、Playwireの成長は十分に織り込まれていないといえそう。また、Nasdaqへの上場が実現すれば一気に市場で注目を集める可能性もある。

     

1.会社概要

最適な消費者に最適なタイミングで最適なメッセージを伝えたいという広告主の課題を、AI(人工知能)を用いた先端テクノロジーで解決するマーケティング・テクノロジー・カンパニー。
広告主や広告代理店が、広告主の利益を最大化するために効率的にインターネット広告を買い付け、配信するプラットフォーム「DSP(デマンドサイド・プラットフォーム)」の運営やOEM提供を行う「DSP事業」が事業の中心。
「最大級のデータ保有量」、「良質な広告掲載面の確保」、「優れたアルゴリズム構築のための積極的な投資」などが大きな強み・特長。
広告に留まらず様々な分野でテクノロジーによって「人に人らしい仕事を」提供し、創造的な社会づくりに貢献する事を経営理念としている。

 

【1-1 沿革】

日本よりも1年ほど先行して米国でRTB(Real-Time Bidding)という、インターネット広告の表示回数ごとに入札形式で広告枠を自動的に売買する配信手法が一般化していたころ、日本でもこの手法を導入して広告分野におけるGame Changeを起こすことを目指してエンジニアでありヤフー株式会社で広告ビジネスに携わった経歴を持つ代表取締役Global CEO本田兼氏が2010年10月、同社を設立。グーグル株式会社で同じくエンジニアとして広告製品を担当していた佐藤 裕介氏(前代表取締役社長、現取締役 新領域事業管掌)も創業に参画し、2011年1月、日本国内で初めてRTB技術の商用化を実現した。
新しいプロダクトに対する感度が高いという広告業界の特性もあり、リリース直後から利用する企業は多数に上ると同時に顧客の満足度も高く、売上、利益は順調に拡大。2014年6月、設立から4年弱で東証マザーズに上場した。
2017年1月には意思決定のスピードアップや、よりダイナミックな事業展開を目指し持株会社体制に移行した。

 

2010年

10月

同社設立

2011年

1月

日本初のRTB技術を用いたDSP「Freak Out」をリリース

2012年

5月

スマートフォン向けサービスを開始

2013年

6月

合弁会社(現連結子会社)「(株)インティメート・マージャー」設立

2013年

10月

YouTubeにホスティングされた動画を利用した動画広告配信サービスを提供開始

12月

LINE株式会社と合弁会社M.T.Burn株式会社を設立

2014年

6月

東証マザーズに上場

6月

M.T.Burn(株)がネイティブ広告プラットフォーム「AppDavis(現 Hike)」をリリース

2016年

1月

M.T.Burn(株)の「Hike」とRTB接続を開始

5月

モバイルマーケティングプラットフォーム「Red」をリリース

2017年

1月

持株会社体制へ移行し商号を「株式会社フリークアウト・ホールディングス」へ変更

3月

Gardia(株)設立、Fintec領域へ参入

2018年

12月

伊藤忠商事との資本業務提携を発表

2019年

1月

国内・海外広告事業を統合

Playwire, LLC を連結子会社化

5月

M.T.Burn(株)を解散

10月

子会社インティメート・マージャーが東証マザーズに上場

 

【1-2 経営理念など】

『Give People Work That Requires A Person.』、『人に人らしい仕事を』を経営理念として掲げている。

 

昨今、DXというキーワードの流行により、企業はより一層のデジタルシフトが求められるようになったが、フリークアウトとしては、IT企業がテクノロジーを駆使して顧客の仕事効率を高めることは、当たり前のことと考えている。

 

人ができることを機械に置き換えるのがDXとするなら、フリークアウトが目指すのは、人にはできなかったことを機械が行う、つまり「新しい仕事の創造」であると再認識させるきっかけとなったのが、この言葉の流行だった。
「人に人らしい仕事を」とは、DXをDXで終わらせないための同社のミッション。

 

沿革にあるように、インターネット広告のリアルタイム取引を日本で初めて事業化し、広告取引を人間の手作業からコンピュータ間の取引に変えていくことを目指したのが創業の経緯。

 

テクノロジーによって、広告主は消費者一人ひとりとコミュニケーションを取ることが可能になり、従来のマス広告では不可能だった真の 1to1 マーケティングに近づく。
また同時に、広告業に従事する「人」たちは、取引に関する雑務から解放され、より人間らしいコミュニケーションのプランニングや、共感を起こすメッセージの作成など、クリエイティブな仕事に集中できるようになる。

 

【1-3 インターネット広告市場概要】

同社の事業内容を理解するためには、広告主やメディアのニーズと広告市場の変化、テクノロジー、メインプレーヤーといった「インターネット広告」運営を取り巻く環境、構成要素等について一定の知識を有していることが欠かせない。以下、主要ポイントについて概要を説明する。

 

≪広告市場の変化≫
従来の広告市場、特にテレビや新聞といったマスメディアを利用した広告ビジネスにおいては、サプライサイドであるメディアや広告代理店にとっては在庫の独占性や排他性が事業展開するうえで最も重要な要素であった。
大手広告代理店は限りのあるTVのスポット枠をほぼ完全に押さえることで広告主に対する価格リーダーシップを握り、メディアとともに大きな利益を生み出してきた。
ところがTVや新聞によるマス広告は、右肩上がりの経済成長の終焉と、従来のメディアと比較した際のコストの安さや双方向性を大きな特徴とするインターネット広告の登場によりその需要は縮小する傾向にある。

 

日本の総広告費用が過去10年間でほぼ横ばいの中、2005年には3,777億円であったインターネット広告費は地上波テレビの2割弱、新聞の4割弱であったが年平均成長率12%超で拡大を続け、2019年には2兆1,048億円となり、地上波テレビ(18,612億円)を初めて上回った。(「電通 日本の広告費 2019」より)

 

一方で、より効果的な広告を求める広告主のニーズはますます増大しており、いかにして「最適な消費者に」、「最適なタイミングで」、「最適なメッセージ」を届けるかが大きな課題となっている。

 

こうした中、「アドエクスチェンジ」と呼ばれる、広告枠のオープンなマーケットプレイスが登場してきた。これは、広告主、メディア、広告代理店などが広告枠を自由に売買することができるまさに「市場」であり、広告主にとっては、より高い広告パフォーマンスを求めて最適な広告枠を買うことが極めて重要になってくるわけだが、それを実現するためのカギとなるテクノロジーの一つが、同社が日本国内で初めて商用化を実現した「RTB」である。

 

≪RTBによる広告枠のリアルタイム取引≫
RTB(Real-Time Bidding:リアルタイムビッディング)とは、インプレッション(広告の表示回数)ごとに入札形式で広告枠を自動的に売買する配信手法。

 

RTBが登場するまで一般的であった「純広告取引」は、ディスプレイ広告(ウェブサイトに表示される画像やFlash、動画などを用いた広告)の枠を、メディアや広告代理店がインプレッション保証や期間保証を付けてパッケージ販売するいわばコースメニュー。
これに対してRTBは、ディスプレイ広告を1インプレッションごとにアクセスしてきたユーザーの属性を解析し、「特定の属性を持ったユーザーへの広告」として1インプレッションごとに入札方式で売買を行なうシステムである。

 

RTB技術の活用により、広告主は従来の特定サイトの広告枠を予め決定された価格で購入する純広告や、検索キーワードに関連した検索連動型広告では難しかった潜在的な消費者層の開拓や、興味・関心をもってもらうための効果的な広告配信による認知施策が可能となる。

 

(RTBの流れ)

インターネットユーザーが広告枠のあるウェブサイトに来訪した瞬間に、広告枠を管理するアドエクスチェンジやSSP、あるいはアドネットワーク(※)などから、複数のDSP事業者に来訪ユーザーの情報と広告枠情報(入札リクエスト)が送信される。

各DSP事業者はデータベースを解析し、入札を実行する。

広告枠のオークションの結果、競り勝ったDSP事業者は広告枠の配信を行う。

同社では、オークションが成立した瞬間にSSP等から広告枠を仕入れ、広告枠の入札価額に一定のマージンを載せて販売価額を決定し、広告枠の配信を行う。

(※)アドネットワーク:複数の媒体サイトの広告枠を束ねてネットワーク化し、広告販売や広告配信を一元的に管理して収益化を実現するもの。

 

「RTB」には広告枠の需要サイドのシステムである「DSP」と、供給サイドのシステムである「SSP」が主要プレーヤーとして登場する。

 

(DSP「Demand Side Platform:デマンドサイド・プラットフォーム」とは?)
広告主や広告代理店が、広告主の利益を最大化するために効率的にインターネット広告を買い付け、配信するプラットフォーム。

 

具体的には、広告主や広告代理店が、RTB技術を活用し独自のアルゴリズムにより、アドエクスチェンジやSSP、あるいはアドネットワークなどに対して、ユーザーの広告1インプレッションごとに最適な自動入札取引・広告配信を行うプラットフォームである。
広告主はあらかじめDSPを通じて広告を見て欲しい対象者の属性、入札の上限額を決めておき、広告主の要望にマッチするユーザーが見つかった場合は瞬時(およそ0.05秒程度)に入札が行われ、最も高い価格を提示した広告が媒体に配信される。

 

RTBが登場するまでは、広告主は、ターゲットであるユーザーが閲覧すると思われるサイトを想定して、特定の広告枠を予め決められた価格で買い付けていた。しかし、DSPを用いることにより、広告主は広告を配信したいユーザーをリアルタイムで判断し、入札による適切な価格で広告を配信することができるため、広告主は広告の費用対効果を高めることが可能である。

 

同社は自社開発のDSPである「Red」や「FreakOut」の販売やOEM供給を行う「DSP事業」をメインビジネスとしている。
常に最適なユーザーに広告を配信し、最適な価格で入札を行うには、極めて高度なアルゴリズムを構築し、大量のデータを元に機械学習を繰り返すことで「より賢いAI(人工知能)」に磨き上げていく必要があるが、同社はその点で強力な競争優位性を有している。(詳細は【1-6 特徴・強み】を参照)

 

(SSP「Supply Side Platform:サプライサイド・プラットフォーム」とは?)
メディア側から見た広告効果の最大化を支援するシステム。メディアが広告枠を管理及び販売する際に使用するプラットフォームであり、DSPのリアルタイムな入札に対応する技術を有している。

 

このように、RTB技術をベースにして従来の純広告では困難であった最適化を自動かつ瞬時に行う費用対効果に優れた広告は「運用型広告」と呼ばれ、インターネット広告全体を上回るスピードで成長を続けている。
2019年には日本のインターネット広告の79.8%が運用型広告となっている。

(電通「日本の広告費 2019」を基に当社作成)

 

(※)運用型広告:膨大なデータを処理するプラットフォームにより広告の最適化を自動的もしくは即時的に支援する広告手法の事。検索連動型広告や一部のアドネットワークが含まれるほか、新しく登場してきたDSP、アドエクスチェンジ、SSPなどが典型例。枠売り広告、タイアップ広告、アフィリエイト広告などは運用型広告に含まれない。

 

また、同社が日本国内で商用化したRTBは、市場規模は米国の10分の1以下であるが、急成長を遂げている。

 

このように、他の媒体と比べて高い伸びを見せるインターネット広告の中でも特に伸長著しいRTB技術をベースとした「運用型広告」が同社のフィールドであり、旺盛な需要を確実に取り込んで業容を拡大させている。

 

加えて、後述するように同社では東南アジアを中心とした海外事業の拡大にも積極的に取り組んでいるが、東南アジアにおいても台湾を筆頭に各国において広告市場におけるデジタル広告費の割合は上昇傾向にあり、マーケットは継続的に拡大している。

 

【1-4 事業内容】

1.事業セグメント
事業セグメントは、「DSP事業」、「DMP事業」、「その他事業」、及び20/9期から「投資事業」が新たに加わり、4事業となる。

 

① DSP事業
◎ビジネスモデル
SSP・アドエクスチェンジおよびメディアを通じて広告枠を仕入れ、広告主・広告代理店に対してインターネット広告枠を提供。一部広告代理店に対してはDSPプラットフォームのOEM提供を行っている。

(会社側資料より)

 

◎主要プロダクト、サービス
広告主の自社サイトのアクセスデータ、広告配信データ、会員データ、購買データなどのビッグデータを用いて、DSP「Red」、「FreakOut」による広告配信効果の最大化を追求している。

 

「Red」、「FreakOut」は広告主にとって有望な見込顧客にターゲティングするために、多様な配信手法を備えている。
具体的には、「知らない人(潜在層)」には知ってもらうための「オーディエンス拡張」等の配信手法を用いた潜在層ターゲティング、「既に知っている人(興味層)」には欲しいと思ってもらうための「キーワードマッチ」等の配信手法を用いた興味関心層ターゲティング、「欲しいと思った人(顕在層)」にはコンバージョン(購入、資料請求、会員登録など実際の行動)してもらうための「リターゲティング」等の配信手法を用いた顕在層ターゲティングを行い、消費者の行動プロセスに応じてターゲティングした広告配信を実施している。

 

プロダクト、サービス

概要

Red

生活者のインターネット利用シーンがPC からスマートフォンへ移行していることをふまえ、スマートフォン領域における広告効果の最大化を目指し、最先端の広告配信最適化技術の適用、優良な独自広告枠在庫の確保を実現したモバイル特化型のマーケティングプラットフォーム。2016年5月リリース。

(特徴)

◇ 最先端の独自機械学習エンジンを搭載

◇ 業界最大級、数百億インプレッション規模のモバイル・インフィード広告枠在庫の確保

◇ 月間 1,300 億インプレッションに及ぶ業界最大級のモバイル広告枠在庫の確保

 

モバイルメディア上で、広告主が効率的にターゲット顧客にリーチすることを可能にするプラットフォームを日本、東南アジア、中近東エリアなどグローバルに展開していく。

Red for Publishers

プレミアムメディア(大規模なトラフィックを有する媒体)や広告主を対象として、販売支援、オペレーション支援、開発支援、プロジェクト管理面から独自の広告プラットフォーム立ち上げを支援する技術および、それに付帯するサービスパッケージ。2017年9月リリース。

媒体社は広告配信による収益最大化を「Red for Publishers」に委ね、本来リソースを注ぐべきコンテンツの充実や集客に専念することが可能となる。

広告主も、優良な媒体社の広告枠へDSP「Red」が優先的に接続されることによって、従来からの「Red」の目的であった広告価値の最大化のさらなる追求が可能となる。

 

マネタイズとしてはDSPとしての売上に加え、プレミアムメディアから受領する「広告配信システム利用料」。後者は100%が粗利となるため収益貢献大。

Freakout

2010年、国内初のDSPとして開発された。ブランド認知促進から販売促進までさまざまな目的に利用されている。

Poets(ポエット)

コンテンツ UI と親和性の高い広告フォーマットを活用した、ユーザー体験を損なわずに広告体験を提供することができるプレミアムアドプラットフォーム。

ダイレクトレスポンスでの広告効果が最大限に期待できる、厳選されたメディアのみを保有しているため、広告主はコンテンツに馴染むフォーマットにより、目標 KPI に合わせた高い広告効果を得ることができる。また、媒体社に対しては、Red for Publishers の広告配信技術を活用し、高額買付けの広告主をマッチングする。

トレーディングデスクサービス

広告主のオンラインマーケティングにおける成果向上を目的としたサービス。

新たなマーケティング技術を活用したオンラインマーケティング戦略の立案から、高度化・複雑化する広告運用支援までを行っている。

 

② DMP事業
DMPとは「Data Management Platform(データ・マネジメント・プラットフォーム)」の略で、広告主がもつ自社サイトへのアクセスデータ、広告配信データ、会員データなどのデータを管理及び解析し、メール配信や分析調査などの様々なデータ活用チャネルと連携して利用可能にする、データ統合管理ツールのこと。
クライント企業や広告代理店のデータマーケティングの最適化を実現するため、メディア企業や調査会社などデータプロバイダーから多様かつ膨大なデータを集め、DMPで蓄積・解析を行い、独自性の高い膨大なパブリックデータDMPの提供、大規模ポータルサイトのDMP構築支援、最適なマーケティングチャネルでの自社データの活用のコンサルティングサービス等を提供している。

③ 投資事業
20年9月期より新設されたセグメント。従前より将来有望なベンチャー企業への投資を行い一定の成果を上げてきたが、安定的な収益基盤の拡大とそれに伴う企業価値の向上を図るため、投資事業部門を設立、投資活動を組織的に事業として行う。

 

④ その他の事業
持株会社体制への移行に伴い17年9月期より新設されたセグメント。国内外のグループにおける新規事業、及び経営管理が含まれる。

 

【1-5 グループ企業】

持株会社である株式会社フリークアウト・ホールディングスの下、グループを形成している。
海外事業においてはFreakOut Pte.Ltd. (本社:シンガポール)をヘッドクォーターとして、ネイティブ広告プラットフォーム事業を中軸とするグローバル展開を推進してきた。
2015年に、東南アジア初のネイティブ広告プラットフォームをリリース以降、各国上位のメディアを中心に提携先を拡大してきた。18/9期には、アジア中心にグローバル16カ国にてサービスを提供。19/9期下期から米Playwireを子会社化し、英語圏に進出した。19/9期から20/9期に事業体制を見直し、再度成長フェーズに入ろうとしている。

 

【1-6 特長と強み】

前述のように、常に最適なユーザーに広告を配信し、最適な価格で入札を行うには、極めて高度なアルゴリズムを構築し、大量のデータを元に機械学習を繰り返すことでより「賢いAI(人工知能)」に磨き上げていく必要があるが、同社はその点で強力な競争優位性を有している。加えて、良質な広告掲載面を有している点も大きな強みとなっている。

 

① 最大級のデータ保有量
RTB技術を日本国内で初めて商用化したこともあり、データ保有量は国内最大規模となっている。
どんなに優れたAIを開発したとしても、大量のデータを使って機械学習を繰り返し行わないと実用的で効果の高いAIには成長しない。
「日本で一番スマートフォン所有者のことを知っている」同社は、全国6,000万人のモバイルユーザーのうち、5%、300万人の正確なデータがあれば、残り5,700万人の年齢や性別による思考、行動はほぼ正確に類推することが可能ということで、広告主に対し高い顧客満足度を提供している。

 

② 良質な広告掲載面を確保
一方、RTBの登場によってオープンな環境でのプラットフォームの「賢さ」が優位性である時期がある程度続くと、技術の格差・優劣が相対的に縮小し、特にモバイルの世界でどれだけ良質な掲載面を確保しているかという「掲載面の品質とその独占性」が再び有力な競争条件となってきた。

 

③ 優れたアルゴリズム構築に向けた積極的な投資
ターゲティング広告においては入札金額が高ければ落札はできる。売上規模拡大を目指す同社としては、できるだけ多くの広告枠を買いたいが、パフォーマンスが悪ければ広告主から評価されず、継続的な取引も難しくなってしまう。
そこで、高く買ったとしても結果としてはリーズナブルであったと判断してもらえるような結果を生むことが極めて重要である。
この課題に対し同社では「クリック率予測モデル」、「コンバージョン率予測モデル」を開発し、広告主に対する提案力を高めており、加えてこれらモデルの正確性を一段と向上させるために常に投資を行っている。
同社のデータ・サイエンスチームは日本の、特に中堅企業クラスではトップレベルの能力を有しているとのことで、積極的な投資の蓄積が継続的かつ高いパフォーマンスの提供に結び付いている。

 

④ 優秀な人材の獲得
インターン制度を積極的に活用し学生との接点を増やしているのに加え、広告がメイン事業ではあるが、今後は新規分野としてHR tech、Fintechといった幅広いフィールドで活躍できる可能性がある事、エンジニアとして業界でも著名な優秀なエンジニアと一緒に働くことが出来る事を魅力と感じているということだ。
また、チャレンジを最大に評価するインセンティブ制度も学生からの人気が高い要因の一つであると会社側は考えている。

 

【1-7 伊藤忠商事との資本業務提携】

18年12月には、伊藤忠商事との資本業務提携を発表した。
伊藤忠商事が保有する膨大な有形・無形のアセットと、同社のテクノロジー基盤をかけあわせることで、デジタルマーケティング領域における新規サービスの共同開発やアジアを中心とした海外事業の拡大など、広範囲にわたる提携を行う。

 

2.2020年9月期決算概要

(1)連結業績

 

19/9期

構成比

20/9期

構成比

前期比

会社予想

予想比

売上高

21,709

100.0%

24,878

100.0%

+14.6%

27,000

-7.9%

売上総利益

5,405

24.9%

5,806

23.3%

+7.4%

販管費

6,676

30.8%

5,595

22.5%

-16.2%

営業利益

-1,270

211

0.9%

200

+5.7%

経常利益

-1,497

-221

200

EBITDA

-491

510

2.0%

500

+2.2%

当期純利益

-3,512

-669

単位:百万円*数値には(株)インベストメントブリッジが参考値として算出した数値が含まれており、実際の数値と誤差が生じている場合があります(以下同じ)。

 

前期比14.6%の増収、EBITDAは黒字に転じ、5億10百万円
20/9期の売上高は前期比14.6%増の248億78百万円。
国内インターネット広告市場は、新型コロナの影響で、広告主の予算の低下、物理的な人の移動を前提とするサービスの売上の減少などはあった。しかし、夏以降は「Red」は比較的順調に推移し、「Poets」はインターネットメディアのView数増加によって過去最高の売上・売上総利益を計上するなど、業績を牽引した。海外では、新型コロナの影響があったが、Playwireが夏以降に急速に再成長し、業績を強く牽引した。このほか、台湾子会社やインドネシア子会社等についても順調に収益に貢献している。また、グローバルアプリ広告事業を営む本田商事、中国子会社についても、新型コロナの影響がひと段落して以降も収益貢献を継続するなど、今後に向けて順調に事業を推進している。
営業利益は前年同期12億70百万円の損失から2億11百万円の黒字に転じた。売上総利益率は前年同期24.9%から23.3%に低下したものの、販管費が大きく縮小した。
持分法適用会社では、タクシー内のデジタルサイネージを提供するIRIS社については、新型コロナウイルス感染症の影響で物理的な人の移動が減少した結果として、一時的に赤字となっており、経常損失は2億21百万円(前期は14億97百万円の損失)となった。
EBITDAについては、前期4億91百万円の損失から5億10百万円の黒字に転じた。
四半期毎の推移は下図の通り。国内広告_DSP等で、EBITDAは新型コロナの影響を受ける前の水準に回復。海外広告はPlaywireの大幅な成長により、売上・EBITDAともに大幅増。一方、持分法IRISは3Qに続き赤字が継続している。

 

売上高・EBIDAの推移

(同社資料より)

 

(2)セグメント別動向

セグメント別売上高・利益

 

19/9期

構成比

20/9期

構成比

前期比

DSP事業

18,461

83.8%

22,376

86.8%

+21.2%

DMP事業

2,188

9.9%

2,042

7.9%

-6.7%

投資事業

442

1.7%

その他

1,378

6.3%

920

3.6%

-33.2%

全社・消去

-318

-903

連結売上高

21,709

100.0%

24,878

100.0%

+14.6%

DSP事業

-284

745

3.3%

DMP事業

128

5.9%

39

1.9%

-69.0%

投資事業

180

40.9%

その他

-1,116

-159

連結調整

2

-595

連結営業利益

-1,270

211

0.9%

*単位:百万円
*営業利益の構成比は営業利益率

 

DSP事業
売上高は前期比21.2%増の223億76百万円、セグメント利益は7億45百万円(前期は2億84百万円の損失)、EBITDAは同170.0%増の10億15百万円。
モバイルマーケティングプラットフォーム「Red」、アドプラットフォーム開発・運用支援「Red for Publishers」、ネイティブアドプラットフォーム及びトレーディングデスクの提供を行い、広告主の広告効果最大化及び媒体社の収益最大化に取り組んだ。

 

全体として新型コロナの影響が売上・売上総利益の押し下げ要因となったものの、「Poets」が順調に業績を牽引したほか、「Red」についても夏以降は順調に推移するなど業績を下支えしている。海外子会社では、Playwireが強力に業績を牽引したほか、adGeekやグローバルアプリ広告事業を営む本田商事社、中国子会社の黒字化などにより、海外全体として強く収益を牽引した。
一方で、新型コロナの影響については、徐々に影響が限定的になってきてはいるものの、物理的な人の移動が前提となるプロダクト、新型コロナの影響が比較的強い海外の一部拠点における売上・売上総利益の減少が生じている。

 

DMP事業
売上高は前期比6.7%減の20億42百万円、セグメント利益は同69.0%減の39百万円。EBITDAは70.7%減の43百万円。
子会社インティメート・マージャーがデータ活用によりクライアント企業のマーケティング課題を解決する事業を行う。新型コロナの影響による景気鈍化が、同社の顧客である旅行業界やエンターテインメント業界を中心とする特定業種の広告費抑制の影響を及ぼしていたが、6月以降は営業再開をしている顧客からの受注は回復し、顧客数も若干の持ち直しを見せる結果となった。

 

投資事業
売上高は4億42百万円、セグメント利益は1億80百万円、EBITDAは1億75百万円。
20/9期からの新セグメント。従前より将来有望なベンチャー企業への投資を行い一定の成果を上げてきたが、20/9期より安定的な収益基盤の拡大とそれに伴う企業価値の向上を図るため、投資事業部門を設立、投資活動を組織的に事業として行う。既存の投資先について一部売却を行った。

 

その他事業
売上高は前期比33.2%減の9億20百万円、セグメント損失は1億59百万円(前期はセグメント損失11億16百万円)。EBITDAは1億28万円の損失(前期は10億18百万円の損失)。
その他事業では、国内外のグループにおける経営管理機能の提供をしている。M&A先を中心とする海外拠点の拡大に伴う管理体制の強化、海外子会社からの配当金受領等を実施した。

 

新型コロナの影響について
≪正常収益力の整理≫
前回の売上14.6億円、EBITDA3.0億円と比較すると、Playwireを中心に海外はかなり鎮静化してきている。一方で、持分法のIRISが3Qと比較しても落ち込んでいる。尚、今回重要性の観点から影響を集計していない東南アジア圏では、引き続き新型コロナウイルスのマイナス影響が生じている。

(同社資料より)

 

≪国内広告_DSP等の内訳≫
3Q以降新型コロナの影響で大きく落ち込んだ青色部分の事業領域では、①タクシーサイネージに関連する売上、②ASEの売上、③広告運用系の売上となる。この3つの売上の中でも、②と③はかなり戻ってきており、①が前回よりも落ちている。合計してほぼ横ばいという状況。一方で、この3つを除く、その他DSP等の売上については、ほぼ横ばいとなっている。但し、内訳として、Poetsが3Qかなり好調だったが、それが若干減となっている。一方で主力のDSPの売上がかなり戻ってきているという状況。このあたりの落ち込みが継続ないしは3Qよりダウンした部分が比較的粗利率が低い一方で、売上の回復が顕著な事業が粗利率が高い傾向があるため、売上以上に今回はEBITDAが回復しているという状況。

(同社資料より)

 

一部事業を除いて新型コロナの影響がかなり薄れてきたこともあるが、Playwireを中心として収益性は改善を継続しており、全体として健全な成長プロセスを継続できているとの考え。

 

海外広告事業
最も大きなポートフォリオを占めるPlaywireは、例年1Qの年末シーズンに年内の過半のEBITDAを計上し、2Qは年始で落ち込み、3Qがそこそこ、4Qは夏休みシーズンも重なり、それほどよくないという季節傾向となっていた。その中で、3Qはコロナの影響もあり、売上ベースで前年比でもかなりマイナスが生じた。一方で、素早くコストダウンを行ったためEBITDAベースでは数字をしっかり維持していた。4Qは米国内での広告需要がほぼ戻ってきたことに加えて、かなり規模が大きな複数メディアの獲得が進んだ。また、コストダウンの影響がまだ残っていることから、4Qとしては今までにない売上・EBITDAを計上した。一過性のものではなく、経常的な事業活動の成果として、大きく売上・EBITDAが成長した結果となっている。同社としても北米を中心とするPlaywireの事業は勝ち筋が見えたので、もう一段人員増強を中心に投資を行ったうえで、23年9月期に収益を最大化させるべく、事業を進める予定(詳細は後述する次期の中期経営計画で説明)。また、adGeekや他のM&A先もコロナウイルスの影響と夏休みの影響もある中ではあるが、合計して0.4億円のEBITDAと、収益性を維持している。さらに、自社拠点についても、グローバルアプリ広告事業(中国法人と本田商事)を中心に収益化が進んでおり、引き続き黒字で着地している。

 

海外広告売上、EBITDAの内訳

(同社資料より)

 

(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

財政状態

 

19年9月

20年9月

 

19年9月

20年9月

現預金

5,690

9,916

仕入債務

2,854

3,065

売上債権

4,454

4,340

短期有利子負債

3,358

3,354

流動資産

14,511

16,492

流動負債

11,498

12,275

有形固定資産

239

180

長期有利子負債

6,809

5,608

無形固定資産

2,615

2,302

負債合計

18,353

17,959

投資有価証券

5,830

4,635

純資産

5,885

6,356

投資その他

6,872

5,340

負債・純資産合計

24,239

24,316

固定資産

9,727

7,823

有利子負債合計

10,168

8,962

*単位:百万円
*有利子負債=借入金+リース債務

 

20/9期末の総資産は243億16百万円となり、前期末比77百万円増加した。これは主に、未収入金が31億86百万円減少したものの、現預金が42億26百万円増加したことによるもの。
負債は179億59百万円となり、前期末比3億93万円減少した。これは主に転換社債型新株予約権付社債が30億27百万円増加したものの、未払金が34億88百万円減少したことによるもの。なお、20/9期末以降の2020年10月5日に期限が到来した第1回転換社債型新株予約権付社債45億円を償還している。
純資産は63億56百万円となり、前期末比4億70百万円増加した。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失の計上による利益剰余金の減少6億69百万円の一方で連結子会社の上場に伴う増資等により非支配株主持分が2億91百万円増加及び20年6月に実施した資金調達のうち、第10回新株予約権の行使により資本金、利益剰余金がそれぞれ3億14百万円増加したことによるもの。
自己資本比率は、18.9%(前期末18.2%)となった。

 

キャッシュ・フロー(CF)

 

19/9期

20/9期

前期比

営業キャッシュ・フロー

1,759

844

-914

-52.0%

投資キャッシュ・フロー

-5,352

-684

+4,667

フリー・キャッシュ・フロー

-3,592

160

+3,753

財務キャッシュ・フロー

6,130

4,088

-2,041

-33.3%

現金及び現金同等物期末残高

5,690

9,916

4,226

+74.3%

*単位:百万円

 

20/9期末の現金及び現金同等物は、前期末比42億26百万円増加し99億16百万円となった。
営業CFは、8億44百万円の流入(前期は17億59百万円の流入)となった。これは主に減価償却費の計上2億73百万円、貸倒引当金の増加2億71百万円及び仕入債務の増加2億67百万円によるもの。
投資CFは、6億84百万円の流出(前期は53億52百万円の流出)となった。これは主に、投資有価証券の売却による収入7億48百万円があったものの、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による支出8億47百万円及び投資有価証券の取得による支出5億50百万円によるもの。
財務CFは、40億88百万円の流入(前期は61億30百万円の流入)となった。これは主に、第2回及び第3回の新株予約権付社債の発行による収入29億16百万円及び長期借入れによる収入13億96百万円によるもの。

 

 

3.2021年9月期業績見通し

(1)通期業績予想

 

20/9期 実績

構成比

21/9期 予想

構成比

前期比

売上高

24,878

100.0%

27,000

100.0%

+8.5%

営業利益

211

0.9%

200

0.7%

-5.4%

経常利益

-221

100

0.4%

EBITDA

510

2.0%

600

2.2%

+17.4

当期純利益

-669

未定

*単位:百万円

 

21/9期は8.5%増収、EBITDAは17.4%増の見通し
21/9期は売上高が前期比8.5%増の270億円、経常利益は1億円(前期は2億21百万円の損失)、EBITDAは前期比17.4%増の6億円を計画する。
引き続き成長が見込まれる国内インターネット広告市場において、従来の主力事業であるDSP事業に加えて、「RED For Publishers」・「Poets」による収益貢献を進めていく。また、伊藤忠商事との提携事業や、新たな優良メディアの獲得などを目的とする大型のアライアンス、digitalサイネージ事業の多角化などを積極的に進めることで、成長を加速させる考え。また、著しい成長を見せる海外インターネット広告市場において、北米を中心に事業を展開するPlaywireが急速に成長している。21/9期はPlaywireに対して人を中心に重点的に費用投資をしっかり行い、同社の収益最大化を進める。収益獲得フェーズに入った東南アジア~南アジア主要各国についても、さらなる事業・拠点の選別を進めることで収益力の強化に努める。さらに、同社の技術基盤を活用して、従来取り組んできたインターネット広告事業のみならず、FinTech領域、RetailTech領域にも引き続き投資を進め、将来へ向けた企業価値の更なる向上に努める。
一方で、新型コロナの影響は、10月以降も継続するものの、ゆるやかな回復に向かうと考えている。ただし、新型コロナウイルス感染症の拡大が進んだ場合、顧客の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があり、それに伴う広告出稿の減少により同社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

EBITDAの増減要因

(同社資料より)

 

 

4.新・中期計画の概要

◎前・中期計画(18/9期~20/9期)振り返り
✔ 定量目標(FY20 売上330億円・EBITDA 30億円)は未達。
✔ 一方、次の収益の柱となり得る事業(Playwire、カンム等)の仕込みはできた。
✔ 懸案であったCB償還も完了し、新中計(=前中計の延長戦)に挑む準備を整えた。

(同社資料より)

 

要因としては、大きなところで①某大規模メディアとの提携関係の解消があった。これは、最盛期は、持分法投資利益として四半期で約2億円、DSP等の粗利として四半期で3.5億円程度が発生していた取引となる。多少落ち込みがあったとしても、安定して収益を支える基盤になると見越していた事業だったため、この提携が終了したのは非常に大きな影響があった。②新領域事業について、現時点においてカンム社が非常に順調に成長を遂げているものの、連結子会社化には至っていない。また、そのほかにも複数社で新規事業を行って経営してきたが、これらについても収益貢献に至ることなく、清算・売却・経営陣によるバイアウトによりいずれも連結グループからは外れている。これらによって、当初想定していた収益を生じさせることができなかったことが、目標数値未達の要因。③新型コロナも20/9期に一定程度影響を与えた。これらの主に3つの要因によって、前回の中期計画は大幅な未達となっている。
一方で、不採算の拠点・事業の撤退を中心に、手を打つべきところにはすでにしっかりと手を打っている。その結果、某メディアとの提携が終了したことや、不採算事業に関連する撤退損失やのれんの減損を一気に行った影響で、19/9期はかなり大規模な損失が発生したが、20/9期は新型コロナの影響がある中でも、営業利益・EBITDAは黒字に回復した。また、北米のPlaywire、カンムのように、次の中計期間の収益の柱となるべき事業の仕込みが着実に完了している。さらに、ファイナンス面では、前中計達成に転換価格のターゲットを置いて実施した新株予約権付社債(CB)の償還問題が、計画未達に伴い生じていたが、これも無事に償還が完了しており、次の中計期間に挑む準備を終えている。
総括すると、特に某メディアとの提携が終了したことで前中計達成のストーリーが大きく崩れることになったが、そこに依拠しない収益基盤を作るという前中計の課題については、一定の成果を出せたとの考え。

 

◎新・中期計画(21/9期~23/9期) 基本方針

「前・中期経営戦略の延長戦」・・・未達に終わった前中計の目標にあらためて挑む。

前中計を仕込みの期間と位置づけ、新中計では収益化・地盤固めの期間とする。

(同社資料より)

 

前・中期計画の前半(18/9期-19/9期前半)は、海外を始めとする新規事業への投資を一気に行った。多くの新規事業・拠点展開・買収と行ってきており、その中から、順調に伸びてより注力すべきところと、継続が難しいところの判断と整理を行ってきたのが前中計後半(19/9期後半-20/9期)にあたる。
新中計においては、この前・中計でしっかり結果を出せた事業に対し、更なるフォーカスを行う。つまり、これらに対し更なる経営資源の投下を行い、組織もこれに向けて一新する。それによって更に事業を伸ばしていくことと、また新たな投資についてはその周辺領域にフォーカスして行われることとなる。

 

◎新・中期計画 サマリ

(同社資料より)

 

定量面では、23/9期のEBITDAの計画を、30億円と設定した。前・中計で未達となった目標を改めて目指す。20/9期でもすでにそれなりのインパクトを出していた投資事業からの利益は、引き続き上乗せ要因として期待はしているものの、時期が読みづらいことから計画には含めず、事業収益のみから発生する利益計画とした。
定性面では、前中計で伸ばせた広告・FinTech領域へ、海外も米国を始めとしてすでに順調に成長している地域へさらにフォーカスする方針。そしてグループ経営面では、このようにフォーカスエリアも定まったことから、個別最適のフェーズから全体最適の方向へ移行する。具体的には、グローバル企業運営に求められる、国をまたいだ、シナジー創出や、人やお金の行き来の効率性を高めて経営の最適化を行い、結果としてグループ全体の収益力を高めていくことを目指す。

 

◎定量計画

(同社資料より)

 

21/9期については、20/9期と比較して収益水準はほぼ横ばいと置いている。特に大きなところでは、Playwireにおける人員増を中心とした投資がある。成長スピードが極めて速く、北米を中心とする英語圏という巨大なマーケットで完全に勝ち筋が見えている。このため、Playwireの収益を23/9期に最大化するため、もう一段、ヒトを中心とした投資を決定した。この成長投資を継続しつつ、一方で有価証券売却による収益に依存することなく全体として、21/9期はしっかりと収益化させるというターゲットを想定している。
22/9期については、21/9期の成長性と23/9期の目標数値達成度合を見ながら、順調であればやや投資を抑制することもありうる。ビハインドが生じそうであれば利益の状況を見つつ、追加で必要な投資を必要な事業に行っていくなど、調整弁となる期を想定している。また、現時点では意思決定してないが、順調であれば22/9期の後半から23/9期にかけて、SilverPushやカンム、Jentといった新しいグループ会社の連結開始を狙っていくことになる。そのため、EBITDA30億円に向けた道筋としては、21/9期から22/9期にかけては微増程度、そこから23/9期に向けて非連続的に収益が伸びていくといった成長曲線のストーリーを予定している。

 

◎定性計画 – フォーカス戦略 全体概要

 

ターゲティングデータ偏重ビジネスからの脱却

 

プライバシー保護に対する意識の高まりや、プラットフォーマーの方針により、例えば「リターゲティングで品質の低い媒体を高く売る」ことが難しくなるなど、ユーザーデータを使ったターゲティング広告は今後ますますやりづらくなってくる。・・・このような状況下、これからの広告事業者は、どのような方針でどれだけの準備ができているか?が問われている。

(同社資料より)

 

同社が10年前の創業以来続けている、主力事業であるDSP事業の根幹をなすのは、「ユーザーデータを活用したターゲティング技術」であることに疑いの余地はない。これによって、「良質なユーザーデータを用いれば、高い広告効果が期待できるので、プレミアムな媒体でなくても広告枠を高く販売する」ことが理論上可能になった。一方で、こういったことが可能になると、一部の広告事業者は、極めて品質の低い媒体や、極端な場合、違法サイトのようなところの広告枠まで販売をするなどしたケースも起こった。これがTVなどのメディアでも取りあげられ、社会問題化することもあった。この結果、インターネット利用者の間には過度なプライバシー意識が芽生えたり、大手プラットフォーマーも、広告事業者に対して、より厳格なデータ利用のルールを敷いてくるようになり、この傾向は今後益々強まる見通し。広告事業者はこれまでの「ユーザーデータ偏重ビジネスからの脱却」が迫られており、この問題に対する具体的な解決策をどれだけ持っているかが問われているのが、広告事業者が迫られている現状と言える。プライバシー保護に対する意識の高まりや、プラットフォーマーの方針により、例えば「リターゲティングで品質の低い媒体を高く売る」ことが難しくなるなど、ユーザーデータを使ったターゲティング広告は今後ますますやりづらくなってくる。
そのような中、フリークアウトは、誰でも知っているような国内有数の複数プラットフォーマーへの広告システムを提供するなど、従前より、プレミアムな一流媒体との取引を中心に事業を伸ばし、「低品質な媒体を、ユーザーデータを使って高く売る」ような事業方針とは距離をおいてきた。またインターネット外においても、広告によってタクシー車内のプレミアムな空間作りの手伝いをするなど、「プレミアムなものづくり」に対しては、グループ内の各事業会社が高い水準のこだわりを持って取り組んできた。今後広告会社がユーザーデータを活用しにくくなる流れの中で、同社が中計に向けて定めたスローガンは「Focus on the good stuff.」つまり、ユーザーデータに頼りすぎず、今までやってきた通りに、高いモラルをもって、よいものを扱っていくことに集中していこうという考えを海外の子会社を含むグループ全体で共有することとした。この考えに基づき、当社主力事業である広告事業において、「ユーザーデータ依存から離れて、プレミアムなものを扱う」ことにフォーカスする当社の戦略を4つ掲げた。

 

◎定性計画 – フォーカス①プレミアム媒体支援

 

媒体社の収益化を総合的に支援

新しい媒体開発、広告フォーマット開発、広告以外の収益モデルの開発など、媒体社が抱える様々な課題を総合的に解決し、収益化を支援。

 

(同社資料より)

 

◎定性計画 – フォーカス②動画広告技術

 

SilverPush “Mirrors”による動画メディアへのコンテクストマッチ広告の提供

拡大する動画広告市場で、ユーザーデータに依存しない高度なターゲティングを実現

 

(同社資料より)
• AIを活用した動画解析技術により、ロゴ、人物、表情など、OTT動画メディア広告の機能を補完する定義で配信が可能
• コンテンツ上での最適な広告コミュニケーションを実現、ブランドセーフティにも利用可能
• 日本市場での本格展開開始及び東南アジアでの協業推進

 

◎定性計画 – フォーカス③デジタルサイネージ

 

フリークアウト・サイネージ配信技術で新たなサイネージ市場を開拓。

タクシーサイネージの収益最大化とあわせ、デジタルサイネージを中核事業に。

 

(同社資料より)

 

◎定性計画 – フォーカス④次世代型チャット

 

次世代型チャット技術への投資・事業展開

企業にとって、チャットが消費者接点のスタンダードとなる将来を見越し、旧来型のシンプルなチャットボットに留まらない、より高度な「接客」レベルの顧客対応を可能とする技術への投資・事業化。

 

(同社資料より)

 

◎定性計画 – フォーカス⑤カンム

 

引き続きの順調な成長により、新しい収益の柱へ

17年より継続的に出資(計30億円超)。今後、収益化に至ったタイミングで連結子会社化を予定。

 

(同社資料より)

 

◎定性計画 – グローバル戦略

 

米国事業及びAPAC事業の収益力拡大にフォーカス

動画広告プロダクト(SilverPush)のグローバル展開

 

(同社資料より)

 

フリークアウトの企業理念である「人に人らしい仕事を。」、これをグローバルで実現する事をミッションとする。17年~20年9月までの前・中計期間には自社拠点の展開に加えて、ASEANを中心にM&Aにより多くの企業を取得し、一部は売却や清算等を行ってきた。各海外グループ会社について、23年にはそれぞれが明確な付加価値と強みを確立し、収益力を確保し、各国で存在感を獲得している姿を目指す。各社がしっかりと収益を確保した上で、各社間での提携・シナジー創出が本格的に推進できるようになるという考え。従って23年までの新・中計期間は、まず第一に各事業の収益拡大にフォーカスする。グループ会社の中でも特に米国のPlaywire社はメディア向けの収益化支援事業が好業績となっており、今後さらなる成長のチャンスがあると考え、可能な限りリソースを大胆に投入し、体制を拡充して、収益を拡大させる方針。また、NasdaqへのIPOも視野に入れて進めたい考え。今後Playwireがプロダクトカンパニーとしてグローバル市場で高い競争力を持って展開していくためにも、Playwireを足がかりに米国市場でプレゼンスを獲得して行く考え。新・中計において、米国事業は非常に重要。
APAC事業は、台湾のadGeek社、タイのdigitiv社、dotgf社など各社のコアコンピタンス確立と基礎収益力の拡大を進める。さらに動画解析・広告技術を持つSilverPushとの協業を深化させる。

 

◎定性計画 – グループマネジメント戦略

 

「グループ力」の強化

グループとしての全体最適をより意識した経営により、グループ全体の価値向上を目指す。

成長領域への投資余力を高めるため、よりキャッシュ・フローを重視し、改善・安定化に努める。

 

(同社資料より)

 

前回の中計においては、グループ全体としてのシナジー創出、経営資源の配分(人材ローテーション含む)、一部グループ会社のハンドリング(損益管理含む)について、より改善すべき課題が多くあった。これらをより円滑に行うためにホールディングスを4年前に実施したが、十分に達成されないままに前・中計期間が経過した。
新・中計においては、その反省もしっかり踏まえて、特に優秀な人材のグループ内ローテーションや、定量面・定性面双方に渡るグループ会社の損益管理、シナジーの構築などを目指して、組織体制も大きく変更する。
また、グループ内に上場企業も出てきたことで、今後はコア事業への集中投資を可能にするため、非コアの事業については積極的に売却を進めていく。すでに複数の有価証券を20/9期に売却してきたが、21/9期においても第一弾として、先日インティメート・マージャー社の株式売却を決議した。なお、これは売却する事業の成長性を否定するものではない。成長確度が極めて高い領域に集中的に投資するため、換金可能性が高く、安定稼働に入ってきた資産について優先順位を見定めてしっかり売却していこうという意志を反映したもの。

 

5.今後の注目点

20/9期は新型コロナの影響を受けながらも営業利益・EBITDAは会社予想を上回り、苦戦しつつもまとめてきた印象。21/9期もPlaywireへの先行投資を行うことから各利益は低水準にとどまる見通し。また、新型コロナの影響も軽微になってきた中、足元では国内外で新たな新型コロナの波が来ている。ただし、各国の姿勢は経済を回しながら完全拡大を抑える姿勢にあり、20/9期下期のような状況には陥らないと見るのが妥当だろう。こうした中、新・中期計画が発表された。国内は巡航速度での回復が見込まれる中、今回の施策の中でも注目はPlaywireの成長であろう。まずは21/9期の動向に注目。また、Playwireの業績は1Q偏重となっており、1Qから注目したい。株価は低調に推移しており、21/9期の低水準の利益予想を既に織り込んだレベルにあると考える。逆に、Playwireの成長は十分に織り込まれていないといえそう。また、Nasdaqへの上場が実現すれば一気に市場で注目を集める可能性もある。

 

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

8名、うち社外4名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2019年12月26日

 

<基本的な考え方>
当社は、経営の効率化を図ると同時に、経営の健全性、透明性及びコンプライアンスを高めていくことが長期的に企業価値を向上させていくと考えており、それによって、株主をはじめとした多くのステークホルダーへの利益還元ができると考えております。経営の健全性、透明性及びコンプライアンスを高めるために、コーポレート・ガバナンスの充実を図りながら、経営環境の変化に迅速かつ柔軟に対応できる組織体制を構築することが重要な課題であると位置付け、会社の所有者たる株主の視点を踏まえた効率的な経営を行っております。

 

 

<実施しない主な原則とその理由>
「当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。」と記述している。

 

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