ブリッジレポート:(9416)ビジョン 利用率上昇 トレンド上回るペース

2019/08/29
 

佐野 健一 社長

株式会社ビジョン(9416)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表取締役社長兼CEO

佐野 健一

所在地

東京都新宿区西新宿6-5-1 新宿アイランドタワー

決算月

12月

HP

https://www.vision-net.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

4,860円

16,234,152株

78,897百万円

16.7%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

130.38円

37.3倍

602.84円

8.8倍

*株価は8/19終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2015年12月(実)

12,485

804

807

585

48.95

2016年12月(実)

14,843

1,290

1,298

812

50.12

2017年12月(実)

17,554

1,788

1,795

1,208

74.30

2018年12月(実)

21,503

2,484

2,499

1,529

94.02

2019年12月(予)

25,793

3,264

3,248

2,116

130.38

* 予想は会社予想。単位は百万円、円。

 

 

株式会社ビジョンの2019年12月期第2四半期決算の概要と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2019年12月第2四半期決算概要
3.2019年12月期業績予想
4.2019年12月期の取り組みと進捗状況
5.成長戦略
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 19/12期2Q(累計)は前年同期比31.3%の増収、同36.7%の営業増益。レンタル件数の増加でグローバルWiFi事業の売上が同36.7%、新規取引先開拓と既存取引先の深耕で情報通信サービス事業の売上が同17.8%、それぞれ増加。情報通信サービス事業における商品構成や新規事業ProDrivers(プロドラ)のドライバー人件費の原価計上等による原価率の上昇をAIチャットボット及びRPAの活用等による業務効率化で吸収して営業利益率が13.1%と0.6ポイント改善した。 
  • 2Q決算を踏まえて上方修正された通期予想は、前期比19.9%の増収、同31.4%の営業増益。ただ、修正予想は2Q(累計)の上振れ分の上乗せにとどまり、3Q・4Qは特段の不安はないものの、一先ず期初予想を据え置いた。修正予想に、どれだけ上積みできるか、注目したい。尚、2019年9月30日を基準日として、1株を3株に分割する。 
  • グローバルWiFi事業の高い成長が続いているが、WiFiレンタルサービス利用浸透率(利用率)は、未だアウトバウンドで17.9%、インバウンドで2.9%にとどまる。「グローバルWiFi for Biz」や「無制限プランの提供」、テンスマによる利便性向上、更には価格競争力の源泉となるコストダウン、といった攻守両面からの取り組みの成果が現れ、2Q(累計)の利用率はアウトバウンドを中心に従来のトレンドを上回るペースで上昇した。3Q以降も利用率の向上が続く見込み。 

1.会社概要

「世の中の情報通信産業革命に貢献します」と言う経営理念の下、世界200以上の国と地域で利用可能なパケット定額制WiFiルーターのレンタルを行うグローバルWiFi事業と、情報通信関連のディストリビュータとして、固定通信、移動体通信、ブロードバンド等の事業活動に必要な通信インフラ環境やオフィス機器を扱う情報通信サービス事業を展開している。
国内外の連結子会社18社とグループを形成しており、国内子会社は、請求業務の代行や固定電話サービスの加入取次ぎ等を行う(株)メンバーズネット、ブロードバンドサービスの加入取次ぎを手掛けるベストリンク(株)など6社。海外は、グローバルWiFi事業の海外拠点となる、韓国、シンガポール、英国、香港、ハワイ、台湾、中国(上海)、フランス、イタリア、カリフォルニア、ニューカレドニアの現地法人とシステム開発及びデータベース構築のオフショア拠点であるベトナムの現地法人の計12社。

 

【コーポレートスローガン - More vision, More success(より先見性のある選択で、より多くの成功を) -】

情報通信技術が目まぐるしく進化していく時代はビジネスとコミュニケーションのチャンスに溢れており、同社は情報通信サービスのあらゆる分野において№1ディストリビュータの地位を継続している。この事について、同社は「顧客視点に立ち、最良の価値を提供できたから」と自負している。情報通信の未来を、すべての人たちの未来のために。同社は自らが新しいサービスの創り手となって、顧客がもっと安心して、もっと便利に、もっと効率良く利用できるように取り組んでいく事で多くの夢の実現を応援していく考え。

【ビジョングループ経営理念 - 世の中の情報通信革命に貢献します -】

「世の中の情報通信産業革命を積極的に推進し個人のライフスタイル、そして企業のビジネススタイルをイノベーションし、クライアント企業とエンドユーザーを効率的、効果的につなぐディストリビュータ企業として、永久にベンチャースピリットを忘れず従業員の無限なる向上心や夢・思いがステークホルダーに貢献できているか確認しあい妥協しない集団であり続け、人類と社会の進歩発展に貢献したい」という決意が込められている。

 

1-1 事業内容

グローバルWiFi事業
海外の通信会社と提携して、海外への渡航者に現地のインターネットサービスを安価で利用できるWiFiルーターをレンタルする「グローバルWiFi」及び訪日外国人等へ日本国内で利用できるWiFiルーターをレンタルする「NINJA WiFi」といったサービスを提供しており、進出先(韓国、台湾、カリフォルニア)において、海外to海外の渡航者向けサービスにも取り組んでいる。

 

(同社資料より)

 

強み
①割安な定額制、 ②最多エリア、 ③快適、 ④安心・安全、 ⑤サポート拠点、及び法人営業力 ⇒ No.1クラスの顧客数
「グローバルWiFi」及び「NINJA WiFi」のサービス上の強みは、①国内携帯会社の海外パケット定額プランとの比較で最大89.9%のコストメリット(渡航先によっては1日のレンタル料金が300円から)を有し、②カバレッジは業界最多クラスの200以上の国と地域。また、③世界中の通信事業者との提携による高速通信、④セキュア24時間365日世界47の拠点、⑤業界最多クラスの空港カウンター設置拠点数。また、事業としては、安定した需要が見込める法人の利用が約30%~40%を占めている事も強みであり、この結果、シェアナンバーワンクラスの利用者数を誇る。

 

収益構造

 

(同社資料より)

 

情報通信サービス事業
新設法人、ベンチャー企業、及び外食チェーン等の多店舗展開企業を主要ターゲットとして、連結子会社ベストリンク(株)を中心に、全国7か所の営業所、及びパートナー企業との連携の下、ビジネスフォン、固定電話・加入電話・ヒカリ電話の取次ぎ、法人携帯、OA機器・セキュリティ製品(UTM)等の販売・保守、ホームページ制作、更には事業者向け新電力サービスの取次ぎ等のサービスを提供している。

 

主要ターゲットでもある新設法人(設立後6ヶ月以内の企業)の開拓に強みを有し、法務省のデータ(2018年全国法人登記件数116,208社)を基にすると、国内で新規設立される法人の約7~8社に1社と取引がある計算。独自のWebマーケティング(インターネットメディア戦略)で集客し、CRM(顧客関係・取引継続)戦略により、継続的収益の最大化(ストックビジネス化)、高生産性追加販売(アップセル・クロスセル)につなげている。
例えば、回線の取次であれば、サービスが解約されない限りキャリアから手数料を受け取る事ができ、複写機等であれば継続的に保守料を得る事ができる。そして、カスタマー・ロイヤリティ・チームが継続的にフォローしていく事で、顧客の成長と共に増加する回線や機器の需要取り込み、成長ステージに応じた最適なサービスの提供(アップセルやクロスセルによる生産性の高い追加販売)で収益が積み上がっていくストック型ビジネスモデルを確立している。ターゲット層を、成長予備軍から、成長過程の企業へとシフトさせつつ、ストック型ビジネスモデルを進化せていく。

 

2.2019年12月期第2四半期決算概要

2-1 連結第2四半期(累計)業績

 

18/12期 2Q

(累計)

構成比

19/12期 2Q

(累計)

構成比

前年

同期比

期初予想

予想比

売上高

9,855

100.0%

12,937

100.0%

+31.3%

11,614

+11.4%

売上総利益

5,819

59.0%

7,496

57.9%

+28.8%

 -

販管費

4,583

46.5%

5,806

44.9%

+26.7%

 -

営業利益

1,236

12.5%

1,690

13.1%

+36.7%

1,437

+17.6%

経常利益

1,245

12.6%

1,673

12.9%

+34.4%

1,439

+16.3%

親会社株主帰属利益

809

8.2%

1,075

8.3%

+32.9%

962

+11.7%

*単位:百万円

 

前年同期比31.3%の増収、同36.7%の営業増益
売上高は前年同期比31.3%増の129億37百万円。レンタル件数の増加(96万件→139万件)でグローバルWiFi事業の売上が81億84百万円と同36.7%増加した他、新規取引先の開拓と既存取引先へのクロスセル・アップセルで情報通信サービス事業の売上も45億09百万円と同17.8%増加した。

 

営業利益は同36.7%増の16億90百万円。情報通信サービス事業での複合機等仕入原価の発生する商材比率の上昇や新規事業ProDrivers(プロドラ)のドライバー人件費の原価計上(18/12期第3四半期より原価計上)で売上総利益率が1.1ポイント低下したものの、AIチャットボット及びRPAの活用等による業務効率化(売上高人件費率が4.3ポイント低下)で販管費率が1.6ポイント低下し営業利益率が改善した。

 

2-2 セグメント別動向

 

18/12期 2Q

(累計)

構成比・

利益率

19/12期 2Q

(累計)

構成比・

利益率

前年同期比

 グローバルWiFi事業

5,987

60.8%

8,184

63.2%

+36.7%

 情報通信サービス事業

3,827

38.8%

4,509

34.9%

+17.8%

 その他

40

0.4%

247

1.9%

+509.3%

連結売上高

9,855

100.0%

12,937

100.0%

+31.3%

 グローバルWiFi事業

1,149

19.2%

1,596

19.5%

+38.9%

 情報通信サービス事業

634

16.6%

832

18.5%

+31.2%

 その他

-67

-157

調整額

-480

-580

連結営業利益

1,236

12.5%

1,690

13.1%

+36.7%

*単位:百万円

 

グローバルWiFi事業
日本から海外への渡航者と訪日外国人が共に過去最多を更新する中、アウトバウンドの利用浸透率(日本から海外への渡航者に占める同社Wi-Fiルーターの利用人数の比率)が18/12期(通期)の14.9%から17.9%に上昇した。法人を中心に無制限プラン及び社内常備型「グローバルWiFi for Biz」が好評を博した事に加え、Wi-Fiルーター・SIMカード等の仕入れを増やしゴールデンウイークの旺盛な需要に応えた事で出荷数が増加した。
利益面では、原価効率及びオペレーションの改善等、収益性向上施策の継続的な取り組みで収益性の改善が進んだ。

 

情報通信サービス事業
主要顧客(新設法人・ベンチャー企業)の獲得が引き続き順調に進む中、CRMによる継続取引(ストックモデル)とアップセル・クロスセル戦略による積み上げが進んだ。また、自社サービス(クラウド型ワークフローサービス)の販売及び各成長ステージに合わせたコンサルティング業務の獲得も成果をあげ始めた。

 

2-3 財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

財政状態

 

18年12月

19年6月

 

18年12月

19年6月

 現預金

7,563

7,994

 仕入債務

877

1,071

 売上債権

1,966

2,169

 未払法人税等

598

556

流動資産

10,262

11,074

流動負債

3,748

3,729

固定資産

3,289

3,515

固定負債

0

7

資産合計

13,552

14,589

純資産

9,803

10,852

*単位:百万円

 

2019年5月15日から2019年6月11日にかけて自己株式の取得を実施し、普通株式243,500株を1,120,100,000円で取得した。自己資本比率74.2%(前期末72.2%)。

 

キャッシュ・フロー(CF)

 

18/12期 2Q(累計)

19/12期 2Q(累計)

前年同期比

営業キャッシュ・フロー

1,103

1,444

+340

+30.8%

投資キャッシュ・フロー

-902

-993

-91

財務キャッシュ・フロー

-303

2

+305

現金及び現金同等物期末残高

6,338

7,994

+1,656

+26.1%

*単位:百万円

 

 

3.2019年12月期業績予想

3-1 通期連結業績

 

18/12期 実績

構成比

19/12期 予想

構成比

前期比

期初予想

予想比

売上高

21,503

100.0%

25,793

100.0%

+19.9%

24,470

+5.4%

売上総利益

12,650

58.8%

15,094

58.5%

+19.3%

14,640

+3.1%

販管費

10,165

47.3%

11,830

45.9%

+16.4%

11,628

+1.7%

営業利益

2,484

11.6%

3,264

12.7%

+31.4%

3,012

+8.4%

経常利益

2,499

11.6%

3,248

12.6%

+29.9%

3,013

+7.8%

当期純利益

1,529

7.1%

2,116

8.2%

+38.4%

2,003

+5.6%

*単位:百万円

 

前期比19.9%の増収、同31.4%の営業増益を見込む。第2四半期決算を踏まえて通期予想を上方修正した。

 

セグメント別売上高・利益

 

18/12期

実績

構成比・

利益率

19/12期

予想

構成比・

利益率

前期比

期初予想

予想比

 グローバルWiFi事業

13,505

62.8%

16,395

63.6%

+21.4%

15,579

+5.2%

 情報通信サービス事業

7,775

36.2%

8,587

33.3%

+10.4%

8,036

+6.9%

 その他

231

1.1%

814

3.2%

+252.6%

855

-4.8%

調整額

-8

-4

連結売上高

21,503

100.0%

25,793

100.0%

+19.9%

24,470

+5.4%

 グローバルWiFi事業

2,413

17.9%

2,916

17.8%

+20.8%

2,662

+9.5%

 情報通信サービス事業

1,218

15.7%

1,543

18.0%

+26.6%

1,422

+8.5%

 その他

-194

-69

62

調整額

-954

-1,126

-1,135

連結営業利益

2,484

11.6%

3,264

12.7%

+31.4%

3,012

+8.4%

*単位:百万円

 

4.2019年12月期の取り組みと進捗状況

4-1 グローバルWiFi事業

「グローバルWiFi for Biz」の提供による法人需要の掘り起こしと法人顧客との関係強化、店舗スマート化戦略(テンスマ)の推進、同戦略とクラウドWiFi及び顧客データベースとの連携による超直前オンライン受注体制の強化に取り組んでいる。

 

クラウドWiFiとグローバルWiFi for Biz(月額1,970円でオフィスに常備)
クラウド上でSIMを管理する次世代型の通信技術(クラウドWiFi)を搭載したWi-Fiルーターの端末レンタル数がレンタルされている端末全体の約90%を超えている(通信キャリアによっては対応できない国があるため、ほぼ上限)。クラウドWiFiは自社契約のSIMを活用した差別化サービスであり、SIMの挿入・交換作業をする事なく、1台で世界中の通信回線を利用する事ができる。クラウドWiFiにより1台で多くの国・地域のキャリアとシームレスに接続するためには、セキュリティ面でのハードルが高いが、同社はすでに100以上の国と地域での利用を可能にしている。
一方、同社にとっては、通信にかかる原価率低減(通信回線利用効率向上)、出荷・運営オペレーション省力化(販売管理費低減)、活用サービス・新手法の提供(収益向上)といったメリットがある。「法人ユーザーの継続利用促進(利便性、満足度向上)効果が期待できる「グローバルWiFi for Biz」の提供(オフィスに常備 → 都度レンタル手配不要、国内通信月間3GBまで無料提供 → 普段使い可能)、旅行会社・海外旅行商品への組み込み、空港カウンターの在庫拡充・対応エリア拡大(機会損失の最小化)、更には出発当日客へのサービス提供(利用件数増加)等の活用サービス・新手法の導入にもつなげている。

 

世界初、クラウド対応スマホ型Wi-Fiルーター「GW01」レンタル提供開始(8月1日~)
端末の重さや厚さに改善を求めるユーザーの声に応えるべく、端末の厚さを59%ダウン、重さを25%ダウンした「グローバルWiFi」スマホ型Wi-Fiルーター「GW01」の提供を開始した。これまで提供していたクラウドWi-Fiルーター同様、1台で108箇所以上のエリアに自動的に接続する機能はもちろん、最大12時間の連続利用が可能で、バッテリー残量を気にする事なく、大きなディスプレイで利用状況を確認できる。
また、各種事業会社毎にコンテンツ設定が可能なため、広く海外渡航者の利便性向上を目的にクラウド対応スマホ型Wi-Fiルーター「GW01」を採用したOEM提供の取組みも行っていく。

 

無制限プランの提供
昨今、スマートフォンアプリの多様化、容量の多い画像や動画の送受信、更にはSNS投稿等でデータ通信容量が増加傾向にあり、また、友人・家族等、複数人でシェアしての利用も増えている。このため、通信容量を気にせず使えるプランを望む声が多かった。こうした要望に応えるべく、無制限プランの提供を開始した。2019年8月09日現在、71カ国で対応している。

 

店舗スマート化戦略(テンスマ)と超直前オンライン受注体制の整備
①自動受渡しロッカー(Smart Pickup)、②多言語対応・決済機能のセルフレジKIOSK端末(Smart Entry)、更にはQRコード活用受付カウンターである③即時お客様識別カウンター(Smart Check)の設置による店舗スマート化戦略を進めている。レンタル件数(受渡件数)やオプションサービス(補償サービス、付帯品等)の増加への対応強化はもちろん、海外へ渡航する日本人・訪日外国人旅行客にとって、より便利に、より快適で、より安心して利用できる店舗への進化を目指している。
第2四半期末現在、国内17(前期末15)空港で25カ所のカウンターを展開しており、内主要6空港に合計20機(17/12期末8機、18/12期末18機)の自動受渡しロッカー(Smart Pickup)を設置済み。ユーザータッチポイントの強化に加え、ユーザーに応じサービスレベルの最適化が可能になる(リピーター層等の説明が不要なユーザーの待ち時間をなくし、説明が必要なユーザーには空港スタッフが応対する)。空港カウンターの増設や拡張が難しい中、スマートピックアップ(Smart Pickup)の増設により人員を減らし、限られたスペースを有効活用してスループットの向上とコスト削減につなげていく考え。

 

加えて、店舗スマート化戦略、クラウドWiFi、及び顧客データベースを連携させる事で「“超”直前オンライン受注体制」が整備され、これまで逃していた出発当日客へのサービス提供も可能になった(データベースと連携させる事で空港カウンター店舗目の前でのWEB申込への即時対応が可能になった)。

 

自動受渡しロッカー(Smart Pickup)の設置状況 20機設置済

羽田空港:3機、成田空港:6機、中部国際空港:3機(1機増設)、関西国際空港:6機、伊丹空港:1機、北九州空港:1機(1機新設)

 

4-2 情報通信サービス事業

販売チャネルの強化と自社開発サービスの販売に力を入れている。販売チャネルの強化では、スタートアップ・中小・ベンチャー企業向けビジネス支援サイトである「ビマケ(Vision Business Market)」の育成に取り組んでいる。「ビマケ」は、起業準備中の個人も対象とし、お役立ち情報と共に、同社サービス及びタイアップパートナーの商材を案内している。

 

一方、自社開発サービスは、既存顧客に対して(これまでに培ってきた顧客基盤の活用)、同社の業務ノウハウを活かして自社開発したサービスをクラウドで提供する。第1弾として、テレアポ事業支援トータルソリューション「VWS WEB CALL SYSTEM」の販売を開始した。人員の稼働効率を高める機能や営業状況を把握する機能に優位性があり、固定費負担が軽く、小規模事業者でも導入が可能。「IT導入補助金」対象サービスでもある。今後もニーズの高いサービスを順次投入していく考え。

 

4-3 その他(旅行関連サービスプラットフォーム)

合計約360万人・2,522万泊(アウトバウンド:約282万人・1,976万泊、インバウンド:約78万人・545万泊、2018年実績・同社調べ)、の顧客基盤を活用し、海外渡航中の課題解決に役立つ情報(メディア)・サービスを提供しており、新サービスとして、空港送迎・役員送迎等、ビジネス・日常両面でのあらゆる移動を快適にする送迎サービス「ProDrivers(プロドラ)」を開始した。

 

「ProDrivers」は、2時間単位で利用可能、荷物と一緒に移動、最大9人で利用可能(割り勘でお得)といった特徴を有し、都内でのサービスを開始した。30台の車両を保有しており、ドライバーの増員を継続的に行っている。グローバルWiFi事業の顧客だけでなく、情報通信サービス事業の顧客もターゲットとしており、もちろん新規の顧客にも力を入れる。パートナー展開も含め、全国主要都市に順次サービスエリアを広げていく予定。海外では、資本業務提携先であるディーエルジービー株式会社(東京都中央区、代表者 木村聡太)の送迎サービス「SmartRyde」を提供する事でニーズに応えていく。

 

5.成長戦略

グローバルWiFi事業では、顧客基盤・事業基盤の、拡大(市場開拓=各ステージの成長、世界展開)、拡充(収益性向上)、及び活用(ビジネス展開=旅行関連サービスプラットフォーム)に取り組み、情報通信サービス事業では、チャネル、商品・サービス、及びビジネスモデルの強化に取り組む。

 

(同社資料より)

 

5-1 グローバルWiFi事業

市場規模
2018年の訪日外国人旅行者(インバウンド)は約3,119万人(日本政府観光局)。同社は、顧客単価平均を基にWiFiルーターレンタルの市場規模を約2,183億円と推定している。ただ、日本政府は訪日外国人旅行者数の目標として、「2020年4,000万人」、「2060年6,000万人」を掲げており、更なる市場拡大が期待できる。一方、日本から海外へのアウトバウンドは年間1,700万人前後で推移しており、同社が試算した市場規模は約1,326億円。海外から海外へのグローバル渡航者に至っては13億人を超え(同社資料より。出所:国連世界観光機関公表資料)、同社試算による市場規模は9兆円超。

 

(同社資料より)

 

大きいシェア拡大余地
高い成長を続けている同社だが、シェアは、海外利用(アウトバウンド:日本⇒海外)が17.9%、国内利用(インバウンド:海外⇒日本、日本人含)が2.9%、日本市場内(アウトバウンド+インバウンド)で8.2%、とシェアアップの余地が大きい。ユーザーの新規開拓に加え、リピーターの積み上げや法人需要の取り込みで、更なる利用率の向上に取り組んでいく考え。また、並行して、コスト抑制・生産性向上により事業基盤を強化して収益性も高めていく。
中長期的には、「グローバルWiFi」及び「NINJA WiFi」の顧客基盤を活用して新ビジネス「旅行関連サービスプラットフォーム」を育成していく。

 

(同社資料より)

 

海外渡航先インターネット接続手段比較(1)

 

(同社資料より)

 

海外渡航先インターネット接続手段(2)

 

(同社資料より)

 

5-2 情報通信サービス事業

独自のWebマーケティング(インターネットメディア戦略)で集客し、CRM(顧客関係・取引継続)戦略により継続的収益を最大化(ストックビジネス化)し、更には高生産性追加販売(アップセル・クロスセル)につなげている。

 

新規開拓では、主要ターゲットでもある新設法人(設立後6ヶ月以内の企業)の開拓に強みを有し、毎期8,000~9,000社をコンスタントに開拓している。法務省のデータによると、2018年の全国法人登記件数は116,208社だったので、国内で新規設立される法人の約7~8社に1社と取引がある計算。また、ストックビジネス化する事で、商材の追加及びオフィス移転時の変更手続きや機器の入替え等の需要も取り込んでいる(本店支店の移転登記数総数は、登記申請の必要のない事業所等の移転を除いても、数年間約14万社)。

 

  設立登記数の推移(万件)

 

  本店支店の移転登記数(万件)

 

(同社資料より)

 

例えば、回線の取次ぎであれば、サービスが解約されない限りキャリアから手数料を受け取る事ができ、複写機等であれば継続的に保守料を得る事ができる。そして、カスタマー・ロイヤリティ・チームが継続的にフォローしていく事で、顧客の成長と共に増加する回線・機器需要の取り込みを行い、更には成長ステージに応じて最適なサービスを提供(アップセルやクロスセルによる生産性の高い追加販売)する事で収益が積み上がっていくストック型ビジネスモデルを確立している。ターゲット層を、成長予備軍から、成長過程の企業へとシフトさせつつ、ストック型ビジネスモデルを進化せていく考え。

 

ストック型ビジネスモデル

 

(同社資料より)

 

5-3 サステナブルな成長と企業価値向上 - ESGへの取り組み -

環境面では、地球温暖化対策、eco・リサイクルの推進、更には被災地支援活動に取り組んでおり、社会面では、採用・雇用(多様な採用チャンネル、採用優位性への取り組み)と働き方改革(時代環境に即した人事制度、独自の福利厚生)を通しての貢献を目指している。また、コーポレート・ガバナンスの面では、ガバナンス強化、リスクマネジメント推進、及びコンプライアンスの徹底を推進している。

 

環境

WEBサイトをカーボンオフセットする「グリーンサイトライセンス」取得

特定非営利活動法人「震災リゲイン」の活動に賛同

ペーパーレスの取り組み(2018年:コピー代・用紙代を前年比9.6%削減)

LED照明格安レンタル

社会

 

 

 

 

 

多様な採用チャネルの活用

公正採用、リファラル採用、積極的な女性採用、多国籍社員採用、障害者雇用

時代環境に即した人事制度、独自の福利厚生制度導入

時短勤務、シフト制、フレックスタイム制、半休、時間休適用(有給休暇)、配偶者誕生日休暇(特別休暇)、水分補給手当て(夏季、インフルエンザ予防接種補助金)

平均年収継続増加

AIチャットボット・RPA等による業務効率改善 ⇒ 生産性向上、付加価値の高い業務へシフト、歩合・達成金・業績連動賞与支給、平均年収増加

企業主導型保育事業「ビジョンキッズ園」開園

コーポレート・ガバナンス

 

情報セキュリティ強化

ISMS国際標準規格「ISO/IEC 27001」取得、情報セキュリティ委員会設置・運営

コンプライアンス、リスクマネジメント、内部統制活動

定期的に研修を実施

 

 

6.今後の注目点

情報通信サービス事業が安定成長を続ける中、グローバルWiFi事業の高い成長が続いている。19/12期は6連続の増収・増益が見込まれ、売上高は257億円と連続増収・増益に転じた5年前(14/12期)の2.5倍、営業利益は32億円と同11.4倍に拡大する見込み。ただ、WiFiレンタルサービス利用浸透率(利用率)は、未だアウトバウンドで17.9%、インバウンドで2.9%にとどまり、依然として利用率の向上余地は大きい。実際、「グローバルWiFi for Biz」や「無制限プランの提供」、テンスマによる利便性向上、更には価格競争力の源泉となる業務効率化とコストダウン等、攻守両面からの継続的な取り組みの成果が現れ、第2四半期(累計)の利用率はアウトバウンドを中心に従来のトレンドを上回るペースで上昇した。
競合を気にする向きがあるかもしれないが、価格競争力に加え、利用可能な国・エリアの多さ、それも、ただつながるだけでなく、快適なスピードでつながる、といった非価格面でも圧倒しているようだ。特に海外では「何よりも“つながる”事が重要」(佐野社長)と言う。海外でもキャリアの関心事は、自国内の競争に勝つ事。このため、海外のキャリアにとって、ローミングではなく、自らの回線をリセールしてくれる同社は良きパートナーである。中長期的には、海外キャリアとの良好な関係が、ポテンシャルの大きい海外事業(海外→海外)拡大の一助になる可能性もある。

 

 

参考:コーポレート・ガバナンスについて

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態 監査役会設置会社
取締役 6名、うち社外3名
監査役 4名、うち社外4名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書 (更新日: 2019年03月26日)
基本的な考え方
当社グループは、お客様の期待を感動に変えるため、常に自らを磨き、理想を実現させるため、ためらうことなく変革への挑戦を続け、常に多くの人々(ステークホルダー)に支えられていることに感謝し、謙虚な気持ちで事業活動を行っております。この行動規範に従って、法令、社内規則、方針を遵守し誠実に取り組み、最適なコーポレート・ガバナンスの構築に努めております。

 

<実施しない主な原則とその理由>
【原則4-1-3 取締役会の役割・責務(1)(最高経営責任者等の後継者の計画の監督)】
 当社では、最高経営責任者等の選定においては、都度変化する経営環境の中、経営理念や経営戦略に沿った形で、候補者の人格、知識、実績等を勘案して相応と認められる者の中から取締役会で選定する等、十分に議論してまいります。後継者の計画の監督については今後の検討課題といたします。

 

【補充原則4-10-1 任意の指紋委員会の設置による指名・報酬等に関する独立社外取締役の関与・助言】
 当社では、取締役・監査役候補の指名・選任については、知識、経験、能力等を総合的に勘案し、取締役会で審議の上決定していること、また、報酬の決定については、株主総会で決議された報酬総額の枠内において、社外取締役を含む取締役会で定めた取締役会規則に則して報酬が決定されていることから、任意の諮問委員会等は必要なく、現行の仕組みで適切に機能していると考えております。

 

<開示している主な原則>
【原則1-4 いわゆる政策保有株式】
 当社では、中長期的な企業価値向上に資すると認められる場合を除き、原則として政策保有株式を保有しないことを基本方針といたします。政策保有株式として上場株式を保有する場合には、四半期毎、全株式を取締役会で個別に検証し、中長期的な視点で企業価値向上の効果等が期待できないと判断した企業の株式については、株価や市場動向等を勘案し売却いたします。議決権行使につきましては、案件ごとに賛否を判断する方針であり、当社の中長期的な企業価値向上に資するかどうかなどを勘案し判断いたします。なお、政策保有株式の保有目的の検証結果の開示については、事業戦略に関わることでもあり、開示を行うことで当社および株主の利益が毀損されることもあることから、開示は行っておりません。

 

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】
 当社は、株主等からの対話の申込みに対しては、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、合理的な範囲で前向きに対応することとしております。現在のところ、社長またはIR担当役員が出席する説明会を年に2回以上開催しているほか、随時機関投資家とのミーティングや、年に複数回の個人投資家向け説明会等も実施しております。それらの結果については、適宜、取締役会等で、得られた情報等の共有を図っております。なお、インサイダー情報の漏洩防止を徹底しております。

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