シンバイオ製薬株式会社(4582 JASDAQ)
トレアキシン®を用いた療法が標準療法に採用

2018/08/21

フォローアップレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

トレアキシン®が標準療法に採用される
売上を牽引するトレアキシン®には、2018年2月以降、画期的な出来事があった。シンバイオ社が外部機関を用いて調査したところ、3月時点で未治療低悪性度非ホジキンリンパ腫の領域で、トレアキシン®とリツキシマブの併用療法(B-R療法)の市場浸透率が50%を超し、従来の標準療法であるR-CHOP療法を大きく上回るようになった。
そして、7月20日に発刊された造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版(編集:日本血液学会)において、トレアキシン®が、承認されているすべての適応症に於いて、標準的治療法の選択肢として新たに収載された。シンバイオ社によれば、標準療法の書き換えは、ほぼ20年ぶりとのことである。この収載により、名実ともにトレアキシン®が悪性リンパ腫の分野で標準療法として確立され、2020年末市場浸透度80%の目標に一歩近づいたと言える。

パイプラインは順調に開発が進行中
パイプラインの進展も順調である。トレアキシン®のパイプラインの中で最も注目されるのは、再発・難治性中高悪性度非ホジキンリンパ腫(r/rDLBCL)を対象とした第Ⅲ相臨床試験(Ph3)である。目標症例数60症例に対し、2018年7月末までに20症例の患者登録が完了、2018年末までに48症例の患者登録を予定している。概ね、2020年上期の申請、2021年の承認に向けて開発は順調に進行していると思われる。また、製品ライフサイクルマネジメントの面では、RTD製剤に関して6月に承認申請の書類の作成を開始しており、2021年の承認を見込んでいる。RI製剤は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の助言を受け、5月に治験計画書の作成を開始した。2019年から治験(36例)に入り、2022年の承認を目指している。
リゴセルチブの開発も順調に進行しているようだ。注射剤のPh3は10月までに日本国内で患者登録完了の予定である。経口剤の第Ⅰ相臨床試験(Ph1)も患者登録が4例まで進行し、来年以降、オンコノバ社が計画している国際共同Ph3に参加する予定である。

マルチイヤーでの新株予約権行使による希薄化を考慮しても割安
トレアキシン®が、悪性リンパ腫療法のバックボーンとしての地位を確立しつつあることから、200億円以上の市場規模になるという前回レポートの試算の確度が高まった。一方、パイプラインは順調に開発が進展しているが、前回のレポート作成時からPh3以降へのステージアップはないため、パイプラインの価値試算値も変更しない。従って、自社販売体制の構築を前提とし、経常的な新薬探索コスト等を考慮した後の企業価値は、2018年6月末の現預金も加味して、304億円(割引率10%の場合:税前)と試算される。
販売体制の拡充と臨床試験の本格化で向こう3年(2018-2020年)は30億円超の赤字が継続するが、2018年4月に、マルチイヤーで行使される新株予約権(最大調達金額100億円)を発行、開発資金の枯渇に陥る懸念は低下している。上期末までに行使された分を除いて、さらに最大85億円程度のファイナンスが予想されるが、現在の時価総額とそのファイナンス額の合計は157億円に過ぎず、企業価値(税前で304億円、税引後210億円)と乖離がある。シンバイオ社は、希薄化を考慮しても株式市場から過小評価されている可能性がある。

 

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